【特別企画】『踊る大捜査線2』本広監督インタビュー──今後はフレーム単位で指示がだせるようになる
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2004年4月21日
空前の大ヒットとなった『踊る大捜査線2』。監督の本広克行氏は、インテル Pentium 4 Extreme Edition-3.2GHzを搭載したデル(株)のDimension XPSシリーズをはじめ、自作マシンなどモバイル端末を含めると計4台を常用している。本広監督のPC好きは一部では有名だが、これまでエディターと呼ばれる映像編集者に任せていた作業に自分が関わる環境ができつつあり、作品の完成度が格段にアップするだろうと話す。今回編集部では、『踊る大捜査線2』の6月DVD発売決定をうけて本広克行監督にインタビューを行なった。
──今監督が使っているマシンについて教えてください
インテル Pentium 4 Extreme Edition-3.2GHz搭載のデル(株)のDimension XPSシリーズのマシンと“インテル Centrino(セントリーノ)モバイル・テクノロジ”搭載のバイオノート Z、あとは映像サーバー用の自作マシンがあります。今から自宅で映画の編集をすることができる環境を作っておこうと思いまして…。実は、マシンにはAvid Technologyの編集ソフト『Avid Xpress DV』が入ってます。今は、テレビドラマなどの編集もAvitの製品が使われていて、その家庭版みたいなものです。同等の機能が入っています。
──自作マシンもあると?
自分でマシンを作って、秋葉原の裏手のショップに行ってみようみたいな時期があったんです。なんでこんなビルの奥に入っていかなければいけないんだ、みたいなところがあって面白いですよね。そこでいかに安くパソコンを作るかってのをやってたんです。今はHDDばんばん積んで映像サーバーにしようと考えてます。一度、年末にマシンの中を作り変えたんですけどね
──ちなみにHDDはどれくらい積んでるんですか?
全部あわせると1TBくらいありますね。もう、いつでもこい!って感じですね。なにをどーするんだーっ!て感じですけど(笑)。
──外付けは
2〜3台あったハズ。
──それにしても、監督さん自身が映像編集を全部やるということはないんですよね
そうなんです。編集マンというエディターの方がちゃんといるので…。たけしさんとかは自分で編集されるんですけど、僕は客観視してくれる編集マンが必要なんです。編集する場合は、撮影したものを新宿にある編集室まで転送します。ハイビジョンで撮るんですけど、編集室でダウンコン(ダウンコンバート)して編集マンがAvidの映像編集をしていくわけです。今度は、それを僕の家の映像サーバーまでとばしてもらう。ですから家に帰ってきたら、その日撮影・編集したものをチェックできる状態になっています。
──実際に監督が作業するのはどの部分なんですか?
映像編集したものを家で確認して、もうちょっとここ伸ばした方がいいなと思ったら、そのシーケンスのデータを調整し、それを編集マンに転送します。それは元映像ではなくサムネイルのようなものなので、メールでも送ることができてしまう。ちょっと圧縮されたデータですね
──監督とパソコンとのかかわりは?
はじめはパソコンをゲームマシンとして使ってました。1994年くらいですかね。まだインターネットやってる人がまわりにあまりいなくて…。メールだって一体誰に送ったらいいのか迷うくらいでした。その時持ってたのは、アップルのマシン。
──今はWindowsベースじゃないですか
いつからWindowsに変わったのかなぁ?そもそもマックはファッションから入りましたからね、「このマシンはカッコいいなぁ」とかいう具合に。それに、まわりにいたテレビ局の人にマックを使っている人が多かった。最初のマックはMacintosh Color Classicですね。これも改造してましたよ。遅いマシンでしたけど(笑)。
──実際にデルのDimension XPSを使われてみてどうですか
ものすごい速いですね。知り合いが遊びにきたらマシンを必ず触ってくんですけど、ビックリしますね。「いいなコレ」って。
──特にこの部分が快適と体感できるのは?
月並みですけどレンダリングスピードが速いですね。大した作業ではないんですが、映像にオーバーラップをやってみたりした時に感じます。
──『踊る大捜査線2』のなかにはCGは入ってるんですか
あぁ〜、もういっぱい入ってますね(笑)!レインボーブリッジを封鎖しろっていう話なんですけど、レイボーブリッジは実際に使わせてくれないのでCGですね。パースをとって模型を作って、そこからCGをおこして…。織田裕二さんの背景は地面だけ残してあとは全部CGだったりとか、ヘリコプターなんかもCGですね。ほとんどわからないでしょ。
──全然分からないですね
実写使ってても「なんだよCG使って」とか言われる(笑)。「逆だよ逆」って言うこともありますよ(笑)。走る織田君とかにもCG使ってますね。「あのシーン、いつ撮ったっけ?」て織田君に言われて「いやCG」って(笑)。さりげない雨の質感も作れるし、たくさんのお客さんがサッカー場にいるところも簡単にできちゃう。
──映像の仕事にパソコンをこういう風に使っていきたいという考えは?
自分で編集に加わっていくとか…。今までは、ニュアンスとしての表現で抽象的な指示しか出せなかったんですけど、今作ろうとしているものはもっとデジタルな作品なので、この数字を動かしてくれ、とか具体的に指示ができるようになる。
──今作ろうとしてるものはどこまで完成しているんですか?
まだ完璧にはできてないんですよ。やりたいなっていう理想があって同業の方に話をしている状態。演出には、引いて観る時間が必要だといわれてるんですね。たとえば、フィルムを眺めている間に考えられる時間がいいって…。でも、僕はテレビ出身なんで、スピードに鍛えられてるんですよ。どんどん作業を速めていこうと思ってます。
──設定とかジャンルは?
基本は娯楽映画ですけど、まぁ笑って泣けて、最後ホッとするっていう3原則の映画です。いろんな人の意見が入った方が娯楽作品はどんどん面白くなるっているのがあるんで、台本作りをしている段階です。
──まだ構想中なんですね
実は今ね、いろんなことをしてるんですよ。“踊る2バブル”って言われていてて、なんでも企画が通っちゃうんです。もう、大丈夫かな日本映画っていうぐらい(笑)。スゴいですよ。口にしたもの全部映画になっちゃう勢いです。だから逆に大人しくしてようと(笑)。
──“踊る3”はないんですか?
“踊る3”は多分ないですね。でも、今考えているのは“踊るシリーズ”っていうもの。実は、“踊る”を作るってことはテレビの主役をみんな持ってきちゃうようなものなんですね。で、同じ時間帯にやってる他の局の番組の視聴率がガーンと落ちるんですよ。何といっても登場してる方々がみんな主役をはれるんで…。だったら一人ひとりをフィーチャーしていくことができるかなと。織田君だけの話とか柳葉君だけの話とか。
“踊る大捜査線”って視聴者が世界観を作っちゃったので、話が勝手に育ってるんですよ。インターネットのホームページにも力を入れて、皆のバックボーンを作ったので…。例えば、室井さんは本庁に帰ってくる前に、北海道の美幌署ってところにとばされたという設定。雪国のなかの美幌署の署長・室井みたいな…。それだけで高倉健さんチックなシチュエーションができて「面白そうですね」みたいな話があったり。青島君は潜水艦の事件があるらしいんですよね。“踊る2”のなかで「潜水艦事件以来ですね」っていう台詞があるだけど…。映画のラストカットに柳葉君と織田君が潜水艦で握手しているスチールが入ってる。こんな話を一個一個作っていくっていうのはアリかなと。
──それにしても“踊る3”を期待しますね
織田君と柳葉君が一緒に捜査をするシーンっていうのは、長らくファンだった人は涙して観るわけですよ(笑)。確かに撮ってる時も自分で「カッコいいな〜」とか思ってましたけど。これをやっちゃうと次がないんですね。青島君(織田君)に部下がつくとか、そういう話になって…。そうすると織田君は主役じゃないし、青島の中間管理職の話とかってのは観たくないしなぁとか(笑)。
──話を戻しますけど、手を入れる部分というのは具体的に、どんな部分になってくるんでしょうか?
ちょと細かい話になってくるんですけど。フレーム単位で数秒ちょっとを伸ばししたい、前のイン点を削りたいという微妙なさじ加減があるんです。もう数フレームのばせばもっといいのにとかね。この泣いてる顔の時間が長いほうがいい、いや長ければ長いだけ観てる人は冷めるとか。今までは、「そういうことならいいや」と思って作業を任せたりしてた。でも後で「やっぱり伸ばしとけばよかったぁ〜」とか後悔したり…、いつでもそういうやりとりの繰り返しだったんですよ。“踊る”でも深津さんが撃たれるシーンがあるんですけど、そこの編集は何回やったか分からないくらいですね。今度、デジタルのフレームに口出しできるようになると、自分がフレームを切る感覚があるので悔いが残らないですよ。ただそれだけのことだと思いますけど、完成度はかなり上がってきますよ。
──深津さんのシーンはどういう風にやり直してるんですか?
白昼のお台場に銃を持った人たちが現れるんですけど、お台場にいる観光客たちは「なんかの催しもの?」ってのんびしてる。兵隊が集まってきて街が混乱していくと、そのなかで深津さんがなんとか皆を助けようとする。その様子は編集で表していくしかないんですよ。現場では実際に表現できないわけで。「じゃあエキストラのみなさん逃げてくださ〜い、わーっ」なんて、怪獣ものと同じなんですけど、そういう絵の積み重ねでニュアンスのシーケンスを膨らませていくじゃないですか?さらに、その時に深津さんが撃たれる映像をゆっくりみせた方がいいのか、撃たれる前にドキドキさせた方がいいのか…、これがその時の気分や体調によってものすごい違う。また、この時の織田君の顔がいいのか、つまり主人公の顔を視聴者は観たいのか、撃たれて倒れていく深津さんの顔がいいのか、これは難しい。正解がないんです。
──深津さんの話がでましたが、深津さんの魅力ってのは?
彼女の底力というか気品が、恩田すみれって役を成長させていったと思うんです。最初、“踊る”をはじめる時に「(役者さんと)もめるよ」って人に言われてたんですよ。それで、相当理論武装して現場に行ったんですけど、僕は深津を侮ってたんですね。でも、一番最初にぶつかったのは深津さんですね。「わからないです」「この意味がわかりません!」って言われて(笑)。で、一回すごくじっくり話し合った時期があって、それ以来お互いに信頼おけるようになったんですね。ものすごい一生懸命な方ですね。すみれっていう女性は普通の人よりも2歩3歩先に歩いている人っていうのを決めて、全部台詞も自分のなかで消化して出していく。脚本と台詞が一字一句変わってないですからね。それでいて、ニュアンスで伝えていく。大したもんだなと思います。
──そういう編集に今はどれくらいかかるんでしょうか?
撮影中から同時進行で約10日間ですね。10日ってのは、前だと考えられないですね。昔だと3ヵ月くらいかかってましたからね。僕たちはテレビの作業に馴れてるんで、2日でやってしまうことができるかもしれない。
──最近ではブロードバンドで上映するショートフィルムがさかんなんですが
僕もやりたいんですけどね。DVカムで撮影して、このDELLのマシンで編集しようと思うんです。
──ホームシアターは作らないんですか?
イヤねぇ、一回奥さんに相談したんですよ。地下に部屋作れないかなって。それで調べてもらったら、1メートル掘るのに100万円かかるって言われて…(笑)。最初から掘ってないとすごいかかるんですよね。それであきらめて、今はソニーのヘッドフォンで我慢してます。
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3階建ての自宅の最上階に本広監督の作業部屋がある。壁には仕事関係、あるいは趣味の書籍やDVDなどがズラリと並べられている。 |
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──6月に“踊る2”のDVDが出ますね
今、その作業をやってます。赤と白のパッッケージがあります。『踊る大捜査線2』と海外版の『踊る大捜査線 BAYSIDE SHAKEDOWN2』の2つを同時に観比べられる。なにしろ中途半端なコンテンツを作ると、ものすごくファンに怒られるので(笑)。自分のホームページでも問いかけているんですよ、「どんなの欲しいですか?」と。コアなファンとマスの両方を大事にしなきゃならないんで(笑)。
──じゃあ、映像特典も凝ってる?
そうですね。でも、懲りすぎると「こんなの観ねえよ」と言われて高級感が損なわれる。まあ、コメンタリーは4本くらいあると思います。で、1本隠れてたりするんですけど。あと公開コメンタリーをするみたいですね。
──イベントを収録すると
はい、声だけ。あとはこれまで流出してないメイキングですね。結構いいシーンがいっぱいです。そして多分、もっと膨大な話も動いていて、“踊る”がはじまったころの話から今回のDVD発売までの歴史の何かを作ろうと。
──映像でですか?
映像と写真とか。携帯用も考えられます。
●プロフィール
本広克行氏。1965年7月13日生まれ。
『踊る大捜査線』テレビシリーズの演出を手がけ、『踊る大捜査線 THE MOVIE』『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』では監督。『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』は2003年の日本アカデミー賞監督賞、作品賞、編集賞などを総ナメ。他監督作品としては『サトラレ』『スペーストラベラーズ』などの話題作がある。
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