【ゲーム情報局】国産オンラインゲームの先行者「PHANTASY STAR ONLINE」成功を支えたバックエンド(後編)
|
2002年3月2日
コンシューマゲームコンソール用としては世界初のネットワークRPGであるドリームキャスト(以下“DC”)版「PHANTASY STAR ONLINE」(以下“PSO”)。その成功の要因を探り、国産ネットワークRPGの可能性を探るインタビューの後編をお届けしよう。今回もお相手は、PSOのサーバを運営を担当する、ソニックチームの節政暁生氏と外木和洋氏。運営費やチートの問題など、永続的な課題を中心に話を伺った。
利用料金400円は高い?! 運営費問題
――“ケチケチ路線”の効果か、DC版の利用料金は、海外発のオンラインRPGと比較すると圧倒的に安い、ユーザーにうれしい金額になっています。
節政暁生氏(以下“節”):でも、当時は400円でも「こんなに取って、プレイしてくれるのか?」って感じでしたね。
外木和洋氏(以下“外”):ちょっと高いかな、くらいに思っていたくらいです。最初「500円」っていう話があって「いやそれは高すぎる」と(笑) 「あつまれ!ぐるぐる温泉」(以下“ぐるぐる温泉”)(※1)で“セガとしては300円”になったので「横並びで」なんていう話も出てきていました。
※1 「あつまれ!ぐるぐる温泉」 セガの開発子会社であるオーバーワークス製のオンラインテーブルゲーム集。麻雀や将棋、複数のトランプゲームを、オンラインで楽しむことができた。当時のサーバ利用料は月々300円。続編として、ブロードバンド回線に対応した「あつまれ!ぐるぐる温泉BB」が登場の後、コミュニケーション機能の拡張などネットワークの強化とゲームコンテンツの充実をはかった「ぐるぐる温泉2」が販売中。3月14日には最新作「ぐるぐる温泉3」も発売予定となっている。
節:成功したから当たり前のように感じるかもしれませんが、この課金モデルも失敗する可能性があったわけです。だから、失敗してもいい、くらいのケチケチ路線があったと。
――それでも運営費はかかります。特に回線費はバカにならないのでは?
節:そうですね。現状、かなりパケット流れてますからね。ISAOがプロバイダとして、太い線と繋がっているからできたと言えますね。どこかのレンタルサーバ業者と組んで簡単に作っていたら、すぐ業者さんに怒られたと思います(笑) BBAの普及もデータ転送量の増加には寄与しています。なんで利用料金なんて取るんだ、という人がいるかとも思うんですが、この、回線の使用料というのが大きいんですよ。
――各クライアントごとのパケット量はかなりのものなんじゃないですか?
節:なんとかそれを抑えるようにしてます。実際、ただ立ってるだけだといっさいパケットは流れないようにしてますので。歩くとちょこちょこ流れるように。
――データの転送時に圧縮したり、といった処理は行っているんですか? ニュースサイトなどではhtmlの圧縮などを行ったりしますが。
節:特にはないですね。あくまで、サーバ側で処理するのか、Peer to Peerにするのかを分ける程度です。
――DC版はとにかくGD-ROMのロードが多いですが、そのあたりとパケット量は関係しているんですか?
節&外 ギクッ(笑)
節:データ転送とはほとんど関係ないですね。PSOって、キャラクターの容姿がみんな違うじゃないですか。あれって、実はスゴく大変なことで、キャラが違うってことは、それだけモデルやテクスチャ、体型のデータが違うということですよね。それを、新しいキャラが描画されるたびにGDから読みにいってるんです。メインメモリに入りきらないんですよ、キャラクターのデータが。だから、別の人が画面内に入ってくると、その人のモデリングデータをすべてGDから読んで描画しているので…。PC版はHDDがあるのでその点は快適です。
PC版とDC版がいっしょにプレイできない理由はズバリ“言語”?!
――そのPC版ですが、さきほどお話されたDC版に比べると、プレイ料金は高い(30日1000円、90日2000円)ですよね。でも一方で、円相場もありますが、海外製品と比べると安い。
節:月額1000円というのは限界値だと思います。あれ以上はおそらく無理じゃないかと。PC版の方が高いのは、サポートの費用や互換性チェックなどといった、サーバ以外の部分のコストのためです。
――PC版は、ネットワークゲームの要求スペックとしては比較的低くなっています。海外製のMMORPGでは平気で推奨CPUがPentiumIII-1GHz以上、といったものもありますが。
節:これでも「動かない人は多いんじゃないか。スペック高すぎるよなぁ」と思ってるんですが(笑) 実は、ノートPCのユーザーが相当数いるんですよ。いま店頭で売れているPCの半分はノート型らしいという話を聞くと、現在の要求スペックもかなり厳しいのかなと。ノートでもある程度動いていますけど、専用機とPCではやはり総合のパワーが違うんですよね。性能がOSに吸われちゃうので(笑)
――ノートPCの問題も含め、PC版はクライアント側のスペックがバラバラ、というのも苦労されたと思うのですが。
節:PC版に関しては、私はあくまでサーバ側の担当なので。実際に苦労したのはクライアント側のスタッフですね(笑) グラフィック面が1番大変だったようです。Akiba2GO!の読者さんならよくご存じかもしれませんが、ビデオカードのドライバがバグっていたりするわけですよ(笑) だから、ドライバさえしっかりすればちゃんと動くかもしれません。担当者が社内でカードを次から次へと差し替えて試してたのを覚えています。
外:見ていてせつなかったですよ(笑) ただPCの前に立って、午前中は1枚、午後2枚と、3時間おきにカードを差し替えてる(笑)
節:ユーザーからしてみると、なんで移植にそんな時間かかってるんだ、と思うかもしれませんが、わりとソフトとは関係ない部分に時間がかかってるんですよ。
外:あとはローカライズですね。PC版は言語が増えたので。自動翻訳は翻訳会社に出してるんですが、それにも時間がかかっています。
――PC版の発売前、DC版のユーザーといっしょに遊べる可能性が指摘されながら、最終的にはサポートされませんでした。
節&外(苦笑)
節:現状、コミュニティの問題から、異なるハード間では繋がないという方針になっています。また仮に繋がったとしても、文字コードの問題があります。PC版は中国や韓国を含む全世界対応版ということでunicodeを採用しているんですが、DC版はS-JISとヨーロッパ言語を交ぜたような独自仕様なので…。文字コードはかなり面倒です(笑)
――ゲームキューブ版やXbox版はDC版のユーザーといっしょに遊べるんじゃないかと言われていますが。
節:もちろん技術的には可能ですし、可能性としてはありますね。PC版は明確にアジア市場をターゲットにしている分、難しいかもしれません。地域によって家庭用ゲーム機を売っているところと売ってないところがあって、アジアは日本を除くとあまり家庭用ゲーム機って売ってないんですよ。韓国はその傾向が顕著で、みんなPCでゲームやっている。なので、PC版はちょっとターゲットが違うんですよ。
解析マニアとの戦いは果てしなく〜その気になれば空も飛べる?!
――DC版でビジュアルメモリにセーブしたように、ほぼ同じ仕組みのPC版もユーザーデータはクライアント側のHDDに保存されます。そうすると、チートなどの行為が行われる危険が増すわけですが、このあたりPC版で変更しようという話は?
節:当然ありました。でもPSOはオフラインでも遊べるということを重視してるんですよ。意外とまだ、オンラインというだけで抵抗を感じる人も多くて、繋がってないとゲームできないというとちょっと辛い。だからPC版もDC版と同じセーブシステムを採用しました。チートという危険ももちろんあるんですが、それよりも入りやすさの方を重視した結果ですね。だから、もう少しインターネット環境が一般化して、どの家庭にも必ず回線が引かれているという状況になればまた変わってくると思いますけど。
――チータはまだ来ますか?
節:来ますねぇ。ゲームよりも、解析してる方が楽しいみたいなんですよ(笑) スゴい人は毎日なんかやってますからね。よほど楽しいんだろうなと。アカウント停止処理もしているんですが、へこたれないというか。よくそこまで解析したなぁと感心することもありますよ。
外:へぇ、こんなこともできるんだ、とか(笑) アカウント止めたのに入ってきたり(笑) あの手この手でやってきますね。その気になれば空だって飛べる勢いです。
節:こちらが何かしらの対処すると、それを抜けるためのプログラムがどこかにアップロードされたりするんですよ(笑)
――DC版では、発表されていないアイテムが“発掘”されることもありました。
節:あれは、ひと月に1度くらい提供するイベント用のアイテムであることがほとんどですね。GD-ROMに焼いてしまっているものなので、変えようがないから予め入れておいたものです。HDDが付いてたらうれしかったんですけどね…。
――たしかに、HDDがあればそういう事件は起こらなかった。
節:あと、HDDがないからパッチを当てられないのも辛かったです。もちろん、発売前は「完璧だ」と思ってるんですが、10万人もの人に1カ月くらいバグチェックをやっていただくと、どうしてもいろいろと出てくるわけですよ。10万人がプレイしないと出てこない問題というのもあるので…。
ネットワークが当たり前の時代へ DC版のサービスは続けます!
――今後の課題というと?
節:まずはゲームキューブ版ですね。
――ゲームキューブ版の発売に当たり、サーバ担当のスタッフが増えたりということは?(笑)
節:基本的には2人です(笑) 最近になって1人増えましたが。
――次々と対応ハードが増えるほど気になるのは既存のDCユーザーだと思うんですが、パッチを当てられないDC用に、“Service Pack 2”といいますか、PC版やゲームキューブ版などの追加要素を踏まえた「Ver.3」が発売される予定は?
節:…正直厳しいですね。いまDC買えないですからね。毎日のように「Ver.3作ってください」っていうメールはいただくんですが。
――DC版のユーザー数は若干減ったりしてますか?
節:一時期よりは、アクティブユーザー数は減ってますね。ただし、サービスを終える予定は今のところありません。ハードの販売が終わったことで不安になっている人も結構いるみたいなんですが、安心してください。ユーザーさんがいる限りは続けていきますので。
――となると、しばらくはPSOから離れられそうにない?
節:そうですね。PSOで何が辛いって、終わりがないんですよ。普通のゲームは完成すると「打ち上げだーっ!」っていって終わるんですが、これまでのゲームとはまったく違いますね。
――……家には帰れてるんでしょうか?(笑)
外:いい質問ですね(笑) DC版のトライアル版からVer.2までの間はもう(笑) いまは当時ほどではないですが、実際、いまでも何が起こるか分からないので、常に構えておかないといけない、というのはあります。
――DC版や移植版とは別に、「PSO2」を待つ声も多くなってきていますが。
節:PSO2はまだまだ企画段階です。こちらはサーバうんぬんもまだこれからですね。ただ、PSOが出たらほかにもネットゲームがたくさん出てくるかと思ったんですが、案外出てこなかった。ようやく最近、ちらほらと国産タイトルが出てきましたが、まだまだアドバンテージはあるんじゃないかなと思いますね。だからなるべく早く2を作りたいなと(笑) まだやってみたいことはいろいろありますので。
――まだやっていないことというのは?
節:ゲーム的にもサーバ的にも、まだおもしろいことはできそうなんですよ。まだ詳しくは話せませんが、PSOのロビーにはもともとある程度の人数が入れるじゃないですか。その部分をもうちょっとMMOにできるんじゃないか(※2)、とか。PSOにはPSOの良さが当然あるので、即MMOに流れていくとは思わないんですが、もうちょっと「みんなでできる」要素があればいいですよね。
※2 MO/MMO 最近よく聞かれるようになった“MMORPG”は“Massively Multiplayer Online Role-Playing Game”の略。つまり“多人数型オンラインRPG”で、1つのサーバに何百人、何千人が接続し、同時にプレイするRPG。「Ultima Online」や「EverQuest」などがこれに当たる。一方、言葉としてはあまり一般的でないが“MORPG”は“Multiplayer Online Role-Playing Game”。数名程度のパーティ単位でプレイするオンラインRPGで、つまりPSOはMORPGである。ただし一方でPSOには“ロビー”システムがあり、ここでは複数のプレーヤーがMMORPGのように一定数同時に存在できる。
――そうやってPSOが先に進もうかというところで、国内他社はようやく動き始めたような状態です。
節:みなさん、どこから手を付けていいかわからないんじゃないかと思います。ただ「バーチャファイター」が出たときも、しばらくは誰も真似できなかったのに、今では他社さんからも出ているのを考えると、しばらくすればコンシューマ向けオンラインゲームというのも当たり前になると思います。そのうち、いちいち“ネットワークゲーム”なんて説明しなくてもいい時代が来るんじゃないでしょうか。
ネットワークゲームは、ちゃんとした計画をもって運営すれば利益のあがるものなので、ぜひ他社さんにもどんどんやっていただきたいですね。ネットワークゲームには、一度ハマるともうほかのゲームができなくなってしまうほどの魅力がありますから、ぜひ盛り上げていけたらなと思っています。
「PHANTASY STAR ONLINE」
(C)SONICTEAM / SEGA, 2000, 2001
「ぐるぐる温泉3」
(C)OVERWORKS/SEGA,2001,2002
(インタビュー:加賀(ウェブ技術部)/小磯、構成:小磯)
|