2001年1月28日
知ってるようで知らないテイクアウトメニュー「万かつサンド」!
秋葉原エリアで集中的にメシを食べ続けてはや10週間。取材対象の店には最低5回は足を運んでから取材を申し込むのはマス・コミとしては正しいが、生物学胃袋的および財布的にはどうかというスタイルにより、絶好調肥満化進行中のライター・矢部でございます。皆さま、あけおめ〜(←いまさらですケド)。
さて、21世紀最初にご紹介いたしますのは、秋葉原最古(推定)の由緒正しきテイクアウト・メニュー【万かつサンド@肉の万世】。
「ノンノン、矢部っち。万世くらい名の知れたお店のメニューなら、断然オモテの名物に入るでしょ。セレクト間違ってるよ」
とチェックきびしいブラザーもなかにはいらっしゃるかと思いますが、ところがそうでもないんですよ。万世=ステーキ、しゃぶしゃぶ、ラーメンというイメージがあまりにもストロング過ぎて、秋葉原 万世本店1Fのデリカコーナーで(ア〜ンド、アキハバラデパート1Fでひそかに)販売中の「万かつサンド」は、とくにPC系のパーソンズにとって意外なほど知られていなかったりする。
現にAkiba2GO!の某編集者(アンタ、最低月イチは万世でごはんを食べてるでしょうが!)でさえ「え、そんなのあるの!?」って感じだし、ためしに業界関係者含むアキバ系の知人友人たちに質問してみたのだけど、結果は多くが「???」とはてなマーク連発だった。まさしく知る人ぞ知る隠れたストリートフードなのだ……っていうか、大変です! 聞いた人全員が全員、万世に対して違う回答を返してきました!!
いわく、
「私、アキバのこの店(某有名大型店)で8年働いてますが「万かつサンド」は初耳ですね。B1Fにある「ラーメン万世」はよく利用してるんだけどなあ〜」
いわく、
「万世橋という地名の由来は、じつは『「肉の万世」のド真ん前だから』らしい。そのせいか、「万かつサンド」は万世橋警察署も御用達らしいよ」
いわく、
「アソコをよく利用するヒトって、ファミリー層っていうか、平均年齢40歳くらいが多い感じがする。なんか理由があるのかな?」
いわく、
「万世ってステーキレストランの先駆けなんだって。東京人にとって、牛肉における心のふるさとはココなんだそうだ」
いわく、
「あたかもブルース・リー@死亡遊戯のごとく、上の階のレストランほど手ごわい(値段が高い)んだって……」
いわく、
「オレ、こないだ万世で携帯電話を買ったよ(!)。新鮮な生肉のすぐ真横で売ってた(!!)」
いわく、
「かつてマンガ化(!)されたことがあるというハナシ、どこかで耳にはさんだような気が」
知り合いにちょっと聞き込みしただけで、もう七不思議が大完成〜。
その真偽はともかくとして、誰もが知っている超有名な存在でありながら、誰もが同じではないイメージを抱いている。コレって、実はものすごいことなんじゃないか? 万世ってホントはどんなお店なのか、どしてまたそうなっちゃったのか…。情報が錯綜し、さまざまな思惑が入り乱れるその中心に「万かつサンド」がある。このメニューに秘められたエピソードを正しく紐解けば、きっとすべての謎は解けるはず!
私も飲食業界のフォックス・モルダーと呼ばれた男(モノホンのX-FILESと違って女性パートナーはいませんが〈泣〉)。あっという間に解明してみせるぜ! さっそく万世にコンタクトを開始し、担当者へレッツ☆インタビューの運びになったのであった。さあ、The Truth Is Out Thereだよ、今回もまた!
人呼んで“ミスター・万世(歩く社歴男)”大登場!
我々Akiba2GO!の取材に対して、肉の万世サイドが選び抜いた人材は、純白のシェフ帽子がキリリと似合う柴田調理課長。彼は調理のすべてを統括するエキスパートであるだけでなく、驚くべきタレントの持ち主なのであった。その才覚とは……
「人生のタイミングが社歴と同じ」
なのであった。せっかくなので、彼の口から万世の歴史を語っていただこう。
「肉の万世が創業したのは、昭和24年(1949年)9月9日のこと。私が生まれたのもじつは同年同月だったりします。最初は店名も職種も違って、鹿野(しかの)無線という電気店でしたが、ホラ、ウチのある場所って電気街の中心地からは少し離れてるでしょ。売り上げがよくなかったらしくてね。創業者の鹿野明が色々考え「これからはきっと食べ物がイケる時代がくる。今こそ転職すべきだ!」という天啓をもとに、万世はまずコロッケやメンチカツを売るお惣菜店としてスタートしたんだ。ちなみに建物はバラックの平屋だったそうだよ」
――もと電気店だったんスか! それが、いつから肉屋&レストランになったんしょう?
「レストランになったのはしばらく後のことだね。まずは精肉販売のほうを先に手がけたそうです。ウチはね、ビーフステーキにいちはやく目をつけた店なんですよ。当時牛肉は今以上に高級な素材で、まだまだ一般家庭の食卓にはなじみがなかった。そこをうまくプロデュースしたものだから、牛肉の旨さがだんだん知れ渡って売り上げもグーンと伸びてきた。そこで創業者の鹿野明が色々考え「肉を主体としたレストランは絶対にイケる。今こそ業務拡大すべきだ!」という天啓をもとに、昭和38年(1963年)建てたのが初代「にくびる」なワケです。ちなみにこの年、私は中学校に上がりました」
――にくびる? ソレなんですか???
「ああ、肉ビル。我々は自社の建物のことをいつも「肉ビル(矢部注:すげえ……すげえネーミングだ!)」って呼んでるんですわ。えーと、なんだっけ? あ、そうそう初代肉ビルの話か。4階建てでね、1階で精肉を販売し、上階がレストランというフロア構成でした。その後、隣の敷地を借りることができて増築したり、改装をしてたんだけど、ついに平成3年の8月。いまご覧になっている10階建ての肉ビルになったというわけです」
――いまの建物は肉ビルMkIIというわけですか。……「酒池肉林」という言葉がありますが、本当に「おにくのはやし(meat jangle)」だとは思いませんでした(あ然)。脱帽です。ところで「万かつサンド」が開発されたのはいつごろ?
「いまでは当時のことを知る人間が少なくてね、いつだっけなァ? ……たしか営業部で調べたんじゃなかったっけ」
営業部主任:荒井さん
「はい。『推定では昭和30年(1955年)ごろ』でございます」
――ええっ!?(汗) 推定ってあの、よければもう少しくわしく……
営業部主任:荒井さん
「とにかくウチのほうにも資料がほとんど残ってないうえ、昨年創業者が亡くなってしまったものでしてね。ただ、官庁で調べてみたところ「万かつサンド」は昭和31年に商標登録されているんです。そこから推測するに、この時点でもう人気メニューになっていたハズ。となると、問題はいつごろ商品化したかですが、社歴のチョ〜古い人曰く『昭和29年より前じゃなかった。これは間違いない』とのこと。ですから、昭和29年から昭和31年までの2年間に登場したというのが正確なところなんです。でも、それじゃあんまりないい方なんで、オフィシャルな見解として昭和30年ごろと申し上げているのです」
――初期の「万かつサンド」と今では、味や仕様が違うんですか?
「基本的に45年前から変わってないよ。年配のお客様に「ウン十年ぶりに食べたけど、味が同じですごく嬉しかった」っていわれるくらいにね。もちろん、肉やパン、ソースといった素材は当時とまったく同じではないけれど、現代のお客様に合わせて味付けをかえるってことはしない。……まあ、マイナーチェンジとしてソースの酸味をやや強く出すようにしたくらいだね。冷えた状態で食べるなら、そのほうが美味しいという理由で。秋葉原の街並みは変化したけど、ウチの味は変わらないよ」
イベント時には1日に1000個は売れる
――そういや、万世を利用するお客様って年齢層高いですよね。なんでですか?
「さあ……。あ、もしかしたらアレかな。ウチね、むかしは後楽園球場(現東京ドーム)や小田急のロマンスカー(特急の名称)内で「万かつサンド」を置いてもらってたんですよ。だから、今の若い方たちに比べると知名度が圧倒的に高いのかも。そうなんだよね。パソコンやゲームが好きな若い方たちにはホント知られてないんですよね、ザンネンながら。いや、Windows 98が発売されたとき、夜中に「万かつサンド」を売り出してみたんですわ。我々も23時ごろまで待機して、いつでも追加できるように万全の準備をしていたら……結果は惨敗。みなさんに聞いてみたら「万世でカツサンド売ってるなんて全然知らんかった」って(涙)」
――ということは、売れ行きはイマイチなんですか?
「いいえ! 平日だと400から500前後、日曜日になると700から800個は売れます。お祭りシーズンやゴールデンウィークなどイベント時期には、軽く1000個は出るくらいの大ヒット商品なんですよ。だからねえ、不思議でねえ……。ほら、ゲームとかソフトとかが発売されるとき、みなさん深夜から並ばれるでしょう。ウチは朝9時からオープンしてますから、もっと利用してもらえるとうれしいんですけどね。朝イチならアツアツの「万かつサンド」をお渡しできますし」
――出来たての「万かつ」をゲットできる時間帯ってあります?
「はい。毎日店頭に並べる時間はあるていど決まってますから。1Fのデリカコーナーが開店するのが朝9時なので、まずその時間でしょ。次が11時。そしてお昼時の12時30分ごろ。午後と夜は20個ぐらいつつ、売り切れそうになったら次々に作って並べるから何時とはいえないな。もし確実に作りたてのカツサンドを召し上がりたいのでしたら、3、4Fの洋食・鍋物「万世」にご来店下さい。フライドポテトとサラダ、コーヒーが付いたセット(850円)としてメニューに載ってますから。注文のたびにその場で作りますので、時間に余裕があるときはこちらがオススメですね」
――冷めてしまった、つまり、テイクアウトした「万かつサンド」をおいしく食べるコツは?
「うーん。冷えたとんかつの美味しさってあるでしょ。だから、そのままでもイケると思いますよ。でも、もし温めるとしたら、電子レンジではなくオーブントースターを使ってほしいな。パンの味がゼンゼン違いますからね」
――では、自宅で「万かつサンド」を使って何か料理をするとしたら?
「君もヘンな質問するねえ……。うーん、そうだなァ、卵とじにしてカツ丼風にするとか? あ、でも、パンにお米じゃヘンだよな。じゃあ、牛乳と卵をまぶしてフライパンで焼き、フレンチトースト風にするってのは? 意外に洒落た味になるかもよ」
――なるほど、メモしとこう。料理長オススメはフレンチトースト風、と。
「おいおい、ちょ、ちょっと待ってくれよ(汗) 君のムチャな質問に対して誠実に答えただけで、ぼくは試食さえしてないんだよ!? オススメなんて書かれたら誤解されちゃうよ! 「万かつサンド」は完成された料理なんだから、普通に食べるのが一番なんだからね、フツーが」
――そういや、さきほど「万世が牛肉の旨さを世に知らしめた」という話が出ましたが、テイクアウトにビーフサンドはないですよね。
「おっ、するどい質問だね。いまちょうど牛肉を使ったサンドウィッチを開発してるところなんです。ステーキサンドとかシンプルにやってみてもいいのだけれど、冷めてもおいしくないといけないから難しくてねえ。そうなるとローストビーフ系でやるしかないんだが、ホラ、ウチってすべて国産の牛だけしか使わないでしょ。コストが高くなるというネックがあるんですわ。キミ、なんかいいアイディアないかね?」
――牛肉をさっと湯がいて、たっぷりの野菜といっしょにはさんでサラダ風にするのはいかがですか。ヘルシーで女性ウケもよさそうですし。名称は「元気イキイキ しゃぶサンド」。
「……名称は却下ね。で、野菜の件なんですが、コレも難しいんです。入れるとボリューム感が出るし、味もよくなるけど、すぐに食べないと野菜の水気がパンに染み込むというマイナスがある。それに「肉の万世」としては、やはり肉をメインに打ち出したいんだよね。だから、「万かつサンド」にも千切りキャベツは入ってないでしょ。もう、とにかく、いろんなことを考えてますが、味と値段を両立させるのがホント難しくてね。万世のホームページ上にご意見を書くスペースがありますんで、もしいいアイディアがございましたら聞かせていただけると嬉しいです」
●柴田シェフ直伝 おうちで作ろう「万かつサンド」
材料:豚ロース肉、パン、ソース、ラード、マスタード、バター、愛情
(1)品質のいい豚のロース肉ブロックを手に入れておく。脂の多い部分などを切り落とし、できるだけ四角い形になるように肉をカット。なお万世では機械(スライサー)を使わず、熟練の職人の手で一枚一枚ていねいに切っている。
(2)小麦の香ばしい味がする白パンを用意。サンドウィッチ用にスライスする。切り落としたパンの耳はミキサーにかけて生パン粉化。かつの衣にしてしまう。万世の場合、パン屋さんに依託して、万かつサンド専用のものを焼いてもらっている。
(3)揚げ油の準備をする。万世では「肉は肉の脂で揚げる(焼く)のが一番旨い」という法則に従い、豚のラードを使用。165度前後まで熱したら、衣をまぶした豚肉を入れ、さっと揚げる(約3分)。糖質が多く含まれた(つまり、いちばん味がいい)パンの耳を衣に使っているため、カツが焦げやすいので油の温度には細心の注意をはかること。
(4)マスタードとバターを混ぜたものを、耳を切り落としたパンに塗っておく。次にカツサンド用のソースを準備。万世の場合、ケチャップやウスターソースのほか、数々の香辛料をブレンドした「万かつサンド」専用のものを使っている。普通のソースよりも酸味を強くするのが美味しさの秘訣。
(5)からりと揚がったカツにたっぷりソースをかけ、マスタードバターを塗ったパンでサンド。包丁で6等分にすれば、ハイ、「万かつサンド」の出来上がり!
ということで「万かつサンド」の真実が判明したことにより、冒頭の七不思議も半分くらいは解明された。でも、まだいくつか謎が残っている。ここはやはり肉ビルMkII(正式名称:秋葉原 万世本店)へ単身潜入し、知られざるシークレットを解明せねばなるまい。……ジッチャンの名にかけて!((C)金田一少年)
私は前転飛びこみで突入→壁に貼りついて左右確認→中腰で通路を走破というアクション映画の三段活用でビル内にご入場。「万かつサンド」を販売しているおばちゃんの不審な視線を気にもせず、フロア内をサーチしていると……な、なんだこのメカは! ビーフステーキが、「ハンバーグサンド」が、ぐるぐる回ってる! そのとき、背後から「うふふ、どうされました?」という春のそよ風にも似たやわらかい女性の声が!! <以下次回に続く>
<店舗紹介>
店名 :秋葉原 万世本店
住所 :東京都千代田区神田須田町2-21
電話 :03-3251-0291(オニクイチバン=お肉一番と覚えよう!)
営業時間:11:00-21:30(1Fは9:00から営業)
【関連URL】
メニューの紹介や全国各地の支店ガイドのほか、
新鮮なお肉のネット通販もやっているぞ。
また、お誕生日には5000円分のお食事券が
もれなく貰えるアルバイト募集も見逃せない。
君も肉の万世で働いてみないか?
現在鋭意開発中の「ビーフサンド」について、
ナイスなアイディアがひらめいたら即アクセス!
もしかしたら採用されるかも。
そのほか「万かつサンド」や万世へのご意見・
ご要望もココへ。約束だ!
矢部直治のアキバB級グルメ探検隊インデックス
●矢部直治氏プロフィール
某小料理屋4代目若旦那 兼 バカ系体力派ライター。文章力はともかく、料理に関する知識だけは豊富(本人談)。
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