Akiba2GO!

【静音生活のススメ】“Efficeon”搭載Be Silent Mt6600を試す


2005年1月18日

●国内初!トランスメタ製CPU“Efficeon”TM8600搭載のデスクトップPCとは

 今回は、11月1日(月)にイーレッツから発売となった「Be Silent Mt6600」(以下、Mt6600)を実際に組み立てて動作させてみたレポートをお届けしよう。まずは主にハードウェアを観察して、構造や設計意図から我々の欲求を満たしてくれる製品なのかどうかを検証する。その後、使用時の感触から本機にふさわしい用途を提案したいと思う。

 そもそも、Be Silent Mシリーズは表に示す通り、スペック違いで数機種がラインナップされている。今回、筆者の手元に届けられたモデルは新しく発売になった「Mt6600」である。同社の通販サイト“イーレッツダイレクト”での価格は9万2400円となっている。
 この「Mt6600」の概要についてはこちらのページをあわせてご覧いただくとして、アウトラインだけを述べると、「Mt6600」の心臓部とも言うべきCPUは、一時期“Crusoe”の名でモバイルPCを席巻したTransmeta社が送り出す“Efficeon”。TM8600-1GHzを搭載し、ALi製South Bridge“M1563M”とのコンビネーションで構成されている。これらはMini-ITXフォームファクタのマザーボードに搭載されているわけだが、CPUは基板に直に実装されているので交換はできない。ちなみにGPUはATI製“MOBILITY RADEON M9”がオンボードとなっており、AGP接続されている(“Mobility RADEON M9”は“RADEON 7500”とVRAM16MBがパッケージングされたもの)。
 なお、このマザーボードはiBASE社が販売している「MB860」なのだが、こちらのページにその詳細を紹介しているので合わせて参考にしていただきたい。

BeSilent シリーズスペック比較 M7000 Mt6600 MS6100 MS6000 M6000
CPU Pentium M
Celeron M(※)
TM8600 1GHz Eden-600MHz
チップセット i855GME ALI M1563M VIA CLE266/VT8235
VGA チップセット内蔵 ATI MOBILITY RADEON 7500 チップセット内蔵
メモリ PC2700/1GB MAX PC2700/1GB MAX PC2100/1GB MAX
スロット 184pin DIMM×1 200pin SO-DIMM×1 184pin DIMM×1
内蔵HDDベイ 2.5インチHDD×2 2.5インチHDD×1 2.5インチHDD×1 2.5インチHDD×2
エマージェンシーIDEポート あり あり あり なし
Ethernet 10/100/1000Mbps×1 10/100/1000Mbps×1 10/100Mbps x 2 10/100Mbps x 1
USBポート USB2.0×2 USB2.0×2 USB2.0×4
拡張スロット PCカード
(Type I/II、CardBus対応)
なし なし
電源 ACアダプタ ACアダプタ ACアダプタ
外形寸法(W)×(D)×(H)単位:mm 204×197×63 204×197×73 204×197×73
※対応CPU:Pentium M755/745/735/725/715(Dothan)1.7GHz/1.6GHz/1.5GHz/1.4GHz/1.3GHz(Banias)Celeron M340/330/320/310

 まず最初に申し上げておくが、手元に届けられた「Mt6600」は評価用のサンプル機であり、実際に読者が購入する製品とは少々異なる部分もあることも考えられる。また、パッケージには「上級者向けの製品」とメーカーにより明記されているほどのPCであることを念頭において、以下のレポートをお読みいただきたい。

 ではさっそく、内部を観察してみよう。「Mt6600」は底面のネジ4本をゆるめると外装パネルが外れる構造になっている。内部は、スチール製のシャーシにマザーボード「MB860」が組み込まれ、底板を挟んでドライブベイが設けられている。ユーザー側でメモリとHDDを用意する仕様で、メモリはノートPC用のSO-DIMMが1枚あれば良い(PC2100または2700)。当然容量は多ければ多いほど好ましいと考えられるが(スペック表によれば1GBまで使えるらしい)コストのかねあいもあるので悩ましいところだ(せめて256MB、できれば512MB超は欲しいところ)。


「Mt6600」のケースを外して内部にアクセスする。MB860(マザーボード)の中央にCPUが配置されている。スイッチング回路を持つ電源基板はマザーボードに並ぶ形で固定されているのがわかる(メモリは付属しない)。※ここで使用しているIDEケーブルはオプションの3.5インチHDD接続ユニット「PC-MS/HDX2」に付属しているもの。

 HDDについてはノート用の2.5インチHDDが1台接続可能になっている。HDDベイは、スペース的に2.5インチHDDなら楽に2台は並べられそうだ。もしも2ドライブ構成を必要とするなら、ケースの加工などの工夫次第で実現できるかも知れない。問題はケーブルの接続方法と電源容量と言ったところだろう(ある意味で上級者向け)。
 もうひと言つけ加えるとするならば、「Mt6600」は外部からACアダプタによるDC12Vの電源供給を受けるだけなので、マザーボードやストレージデバイス等が必要とする複数の電圧を生成しなければならない。それは、マザーボードの横に配置された電源基板で作り出しており、そこから電源の配線が各部に接続されているのが写真でもわかる。

 こうして内部を観察してみると「Mt6600」は、マザーボード「MB860」を中心にコンパクトにうまくまとめたPCだというのが見えてきた。


「Mt6600」の底面に位置するHDDベイと“エマージェンシーIDEポート”のようす


●オプション機器について

 一連の小型パソコンに対して共通する悩みと言うかボトルネックと言うか、筆者がいつも気になる点がある。それは、たいていのモデルはHDDが2.5インチのみ対応となっている点だ。おそらくスペース的な問題と考えられ、設計やコンセプトとしてそれは妥当な選択であるし、否定はしない。だが最近の2.5インチHDDの性能は格段に向上したとは言え、3.5インチHDDと比較すると動作速度やコストについては歴然とした差を感じてしまう。
 その点に関してBe Silent Mシリーズでは3.5インチHDDを接続できるユニット「PC-MS/HDX2」がオプションで用意されており、とても興味深い。HDDはUltra ATAインターフェイスを持つドライブをユーザーが用意することになる。
 電源は付属のACアダプターを「PC-MS/HDX2」に接続すればよい。後は、内部の電源基板からHDDに供給してくれる仕組みだ。


「Mt6600」に3.5インチHDDを接続する場合に使用する、ケースと電源アダプターなどがセットになった「PC-MS/HDX2」(内蔵HDDは付属しない)。

 その他にも、主に5インチ光学ドライブを利用する目的で用意されたオプションユニット「PC-MS/OB5」も用意されていて、「Mt6600」と光学ドライブなどをIDE接続できる仕様になっている。これは、前出した2.5インチHDD限定対応とならぶ小型PCの定番仕様、「光学ドライブはスリムタイプ」というお約束を打破するのに十分な要素を持つオプションといっていいだろう。
 ちなみに5インチ光学ドライブといってもモデルによって奥行きの長さは様々なのだが、「PC-MS/OB5」は背面パネルがくり抜かれているのでドライブの長さに制限はない。なおIDEケーブルと電源は「Mt6600」の背面に備わっている“エマージェンシーIDEポート”を介して接続する仕様になっている。と、言うことは光学ドライブに限らず汎用のモバイルラックを組み合わせるという変則的な使用法も、悪くはなさそうだ。


こちらは「Mt6600」と5インチ光学ドライブを常時接続するためのオプションキット「PC-MS/OB5」(光学ドライブは付属しない)。

 こうしてみると「Mt6600」は、本体だけなら内蔵HDDは2.5インチであるし、光学ドライブは外付けで……というスタイルということになる。つまり、小型パソコンの基本コンセプトはしっかりつかんでいる訳だ。
 ところが筆者のような悩み(欲求)を持つユーザーに対して「Mt6600」は、オプションをつけ加える事でユーザーのニーズに対応できる独特の拡張性を持っている製品であることもわかった。


「Mt6600」本体に3.5インチHDD増設ユニット「PC-MS/HDX2」と5インチ光学ドライブベイ「PC-MS/OB5」を組み付けて、配線をしてみた。


●実際に動作させてみる

 では、いよいよ「Mt6600」を動作させてみる。注目すべきポイントはいくつかあるが、BIOSセットアップの内容やWindows XPでの操作具合、それと静音性などについてレポートしよう。
 なお、今回のサンプルにはIDEケーブルは用意されているものの、3.5インチ用で2.5インチHDDには接続できなかった。もちろん実際の製品では2.5インチHDDが使用できるようになっているが、今回は前述したオプション機器を併用し、3.5インチHDDを接続した状態でテストしている。

 本体フロントパネルの電源ボタンを押すと数秒でAward BIOSの見慣れた起動画面がディスプレイに表示された。Deleteキーでセットアップ画面に移行するのもPC自作経験者なら違和感はないだろう。セットアップ内容に特別変わった項目があるわけではないが、全体的にシンプルにな内容にまとめられており、せいぜいチップセット間のデータ転送スピードや帯域幅を設定する項目が用意されている程度だ。ただし、“PC Health Status”での項目はデスクトップ用のマザーボードと同様にCPU温度やファンの回転数に加え、主要電源電圧のモニターが可能である。そしてCPUの死活に関わる「冷却」については、CPUファンの動作監視機能やCPU温度が設定温度に到達するとシステムをシャットダウンさせる機能がしっかりと備わっている。

 次にWindows XPを起動してみた。体感的に極端なストレスは感じない。むしろスムーズに動作する感じで、日頃のメールのやり取りやネットを楽しむと言った軽い使い方なら十分な性能だと思われる。試しにMP3エンコード処理を実施してみたところ54.8MBのWAVファイルを15秒26で変換した。ちなみに「54.8MBのWAVファイル」とは5分26秒の楽曲に相当する。実感として全く不満はないが、例えばアルバム1枚15曲を一度に変換するとなると多少の待ち時間は覚悟しなければならないだろう。
 なお、先のBIOSセットアップのところで述べた“PC Health Status”の内容がWindows上でもモニターできるソフトウェアが付属している。


演奏時間5分26秒のWAVファイルをMP3にエンコードした結果は15秒26で、思ったほど遅くもない。

製品に付属するシステムモニターソフト「ObServrer 4」は、各電圧や温度などのモニターが可能になっている。

 さて、本機の静音性については、もともと「MB860」(マザーボード)がファンレス仕様なので騒音源そのものがなく、唯一「Mt6600」のケース天板に60mm角のファンが1基取り付けられているに過ぎない。しかもこのケースファンは12Vの4,500rpm仕様であるにもかかわらず、あえて5Vで動作させており、本来の回転数より格段に低い回転数(約2000rpm)となっているところがポイントだ。ケースファンとその配線状況を撮影した写真を見ればそのカラクリが理解できるかと思うが、ファンの電源(5V)は、電源基板から出力されるドライブ用電源ケーブルから分岐して供給されている。ファンの回転数を伝える信号線とアース線だけがマザーボードに接続されているのだ。
 実際のところ「Mt6600」は無音ではないが、いたって静かである。しかもその静かさは安定していて、例えばCPU温度が高温になると急にファンの回転数が変化するというような変動は全くない。体感的には深夜の使用にも支障のないレベルの騒音で、むしろチョイスするHDDによってはHDDの動作音がまさることも十分考えられる。


12V定格の60mmケースファンを5Vで動作させつつ、ファンの回転数をモニターさせる配線テクニックの全貌。信号線とアース線だけがマザーボードに接続されている

●気になる要素とは…

 では、良い面ばかりかというと少しは妥協しなければならない要素もなきにしもあらずだ。9万2400円という価格は、例えばAOpen製「XC Cube EZ855」(4万5000円〜4万6000円台)同じくAOpen製「A8855-M」(3万1000円〜3万3000円台)など、Pentium Mに対応する廉価なベアボーンPCが台頭してきた現時点では、価格的には不利であることを認めざるを得ない。
 その差を静音性能やサイズなどの「Mt6600」が持つ他の要素で相殺して逆転できるなら、「Mt6600」は「最高のランクに位置する静音コンパクトPC」と言っても過言ではないだろう。

(鈴池和久)




[通常ページに戻る]
ASCII24 http://ascii24.com/
Copyright (C)2000-2008 ASCII Corporation. All rights reserved.