【オーバークロック研究室】Pentium 4をガス冷でオーバークロック(その2)
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2002年12月29日
前回の「Pentium 4をガス冷でオーバークロック(その1)」では、積極的なCPU冷却を実践すべくガス冷システム“Vapochill”(バポチル)を導入した。当然、Pentium 4システムをどこまでオーバークロックできるのかが最重要課題である。(その1)では、マシンを動作させる準備段階として、まずはCPUに密着させるエバポレータの固定用アタッチメントの作成やVapochillの仕様を確認する意味でガス冷却装置のみを動作させてみた。今回は、その続編として、最初にテストマシンのシステム構成を紹介してから(その1)で宿題にした冷却装置の性能追求や結露対策についてお伝えし、最後にガス冷におけるPentium 4-2.8GHzのオーバークロック動作結果を発表しよう。
●マザーボード等のシステム構成パーツの紹介
今回のテストでは、Pentium 4対応の最新チップセット“i845PE”を搭載するASUSTeK製マザーボード「P4PE」を採用した。決め手は、PC2700スペック(DDR333)のメモリを正式にサポートした点や豊富なオーバークロック機能を搭載しているからだ(その一例としてDDR355というメモリクロックが用意されている)。また、今回は試せていないが、オンボードでSerial ATAインターフェースを搭載しているなど将来性の面でもポイントは高い(今回は従来のU-ATA方式でHDDを接続した)。そしてプロセッサは前々回の水冷テストで用いたPentium 4-2.8GHzをこのP4PEに実装した。なお、メモリは水冷テスト時のPC3200(DDR400)CL=2.5/512MBに加えて、同じスペックの256MBも用意。ただし、256MBのメモリはいわゆるバルク扱いのノンブランド品でメモリチップは写真でも確認できるとおり、Winbond製W942508BH-5(256Mビット)を基板の片面だけに8枚実装した仕様のDIMMである。なお、ビデオカードは、ベンチマーク結果を単純に比較するために、これまで通りAbit製Siluro GF4 Ti 4400(GeForce4 Ti4400)を組み込んだ。ちなみにインストールしたドライバーは、nVDIAのウェブサイトで11月に公開されたVer.6.13.10.4072である。
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最新チップセットi845PEを搭載するASUSTeK製マザーボード“P4PE”を使ってガス冷システムを構築することにした。 |
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マザーボードの規定動作スペックはDDR333までだが、DDR355というオーバークロックポジションが用意されている。もちろん、動作保証は無いもののスピードを追求する側にとっては嬉しい仕様だ。 |
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ノンブランドだがWinbond製メモリチップを実装したPC3200(DDR400)CL=2.5/256MBメモリを用意した。 |
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| CPU |
Pentium 4 2.80GHz |
| CPU冷却 |
Vapochill 7th generation |
| マザーボード |
ASUSTeK P4PE |
| メモリ |
DDR 256MB PC3200 CL2.5(メモリチップ:Winbond ) |
| ビデオ |
ABIT Siluro GF4 Ti 4400(GeForce4 Ti4400) |
| ドライバー |
Ver.6.13.10.4072 |
| 解像度 |
1024×768ドット/32bitカラー |
| HDD |
Seagate Barracuda ATA IV 60GB |
| OS |
Windows XP Professional |
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●ガス冷却装置の性能と結露対策
前回の(その1)で報告した通り、最初の冷却テストではCPUを動作させていない条件だとエバポレータ温度はマイナス16℃まで下がった。できることなら、もう少し下がらないものかと冷却能力の余力を探るつもりでVapochill本体の上部を占領している冷却装置を中心に調査してみた。
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コンプレッサー本体に固定されている制御ユニットの端子(C)(T)間にはモーターの回転数をセッティングする抵抗が接続されている。 |
まず、このVapochillの冷却装置は、Danfoss製「BD35F」がベースになっており、エバポレータを中心にAsetek社のアレンジを受けた仕様で組み込まれているようだ。さっそくDanfoss社のWebサイトからBD35Fのデータシートを入手してみたところ、電源やファンなど各装置の接続図や性能に関する数値表などが記載されていた。その中で主にコンプレッサーを制御しているユニットに注目してみる。実機では、プラスチック製のパッケージ(3.5インチFDドライブを少し縮めたほどのサイズ)がコンプレッサー本体の横に固定されている。この制御ユニットは、データシートに記載されている通り電源の入出力やLEDモニター端子に加えて、コンプレッサー内部のモーターの制御に関する端子を備えている。このうちモーターの制御に関する(C)(P)(T)という端子のセッティング方法を調べてみると(C)(T)間の外付け抵抗の抵抗値に応じてモーターの回転数が変化する仕様になっている事が判明した。ちなみに抵抗値が高いほど回転数が上がり、約1.5Kオームほどの抵抗値で最高回転数(3500rpm)に達する(逆に0オームだと2000rpmにセットされる)。すぐに実機のセッティングパラメータを調べてみたところ最高回転数を指定する1.5Kオームの抵抗が接続されていた。つまり、すでにコンプレッサーは、最高の性能を発揮するようにセッティングされているということになる(考えてみれば当然だが、ある意味残念)。
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元のクーリングファンより厚みのあるファンに交換してみたが |
次に着目した点は、コンデンサに取り付けられたオリジナルの120mm角25mm厚ファン(12V160mA)である。これを同じ120mm角で厚みが40mm(12V540mA)のファンに取り替えてみた。通電すると予測通りにファンの騒音が大きくなり、コンデンサのエレメントを通過する風量も勢いも格段に増加したハズなのだが、その割にはエバポレータの温度をさらに下げるほどの効果は導き出せていないようだ。結局、Vapochillの周りをウロウロしただけで「さらに温度を下げる」という目的は達成できなかった。
さて、もう一つの宿題は、「結露対策」である。そもそも、結露対策としての要素は、次の点を考慮すれば良い訳だが…
(1)低温部分に空気を近づけない。
(2)低温部分と常温域の間は断熱して温度的な距離を設ける。
この2点のうち、(1)は空気に含まれた湿気が結露水の正体なので、可能な限り低温部周辺に空気を介在させない方法を考える。また、冷却効率を高める上でも(2)の「断熱」は不可欠で、断熱材自体の熱伝導率が良くない素材を用いて施工するのが好ましい。このニーズにマッチした素材として(冷却マニアには周知のアイテムかも知れないが)以前からアテにしていた部材がある。それは、エアコン配管などでよく使用されているのでご存じかと思うが、壁に通した配管とその穴の隙間を充填する粘土状のパテである。このパテは、紙粘土と油粘土の中間的かやや油粘土に近い“柔らかさ”でありながら、長期間硬化しない特性を持っている。したがって施工しやすくて、しかも失敗した場合でもやり直しが効くと言うアイテムだ。では、どう使うのか実際の施工例を写真で示しながら行程順に説明しよう。
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壁にエアコン配管を貫通させた場合に隙間を充填するパテ。入手困難かと思ったが運良く一件目のホームセンターで入手できた。 |
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CPUソケットの裏面にパテを盛りつける。マザーボードを固定した時にシャーシとの隙間が埋まるようスペーサーの高さより少し厚く調節する。 |
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CPUソケット中央部の凹んだ空間をパテで埋めておく。そしてピン・ソケット部のピン穴に非導電性で柔らかいサーマルコンパウンドをソケット内部へ押し込むように塗布してからCPUを装着する。これは、CPUピンの酸化・腐食防止対策だ(結露する可能性が無い場合は無意味)。 |
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いよいよパテでCPUを埋めてしまう。このとき、パテを2回に分けて盛りつけている。最初は、マザーボードとリテンション機構の隙間を埋める高さで(リテンション機構を一時的に取り外して)パテを敷いた。次にリテンション機構を元に戻してパテを追加するのだが、同時に温度センサーをCPUのヒートスプレッダーに密着させてパテで固定している。写真は、ヒートスプレッダーの高さまでパテを盛りつけたところだ。 |
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CPUを完全に覆い被すようにパテを噴火山の形に盛りつける。噴火口に相当する所にエバポレータを押しつける予定だ。 |
ここまでの施工段階でCPUにエバポレータを装着し、試験的にマシンを動作させてみた。動作クロックは様子見でもあり、規定値をセットした。すると運転時間の経過とともにエバポレータを囲うプラスチックハウジングの一部に結露現象が発生。コンプレッサー本体の一部にも霜と水滴が付着する事が判明。そこで一旦、運転を打ち切って次の対策を施した。
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当初の予定では、パテをここまで盛りつけるつもりはなかった。しかし運転時間の経過と共にエバポレータを囲うプラスチックハウジングの一部に結露現状が発生。そのための対策としてハウジング全体をパテで覆った。 |
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コンプレッサーに霜と水滴が… |
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コンプレッサーにもパテで結露対策を施した。結果は意外と効果的で、60分経過でも先ほどのような霜と水滴の発生を抑えられているようだ。 |
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Pentium 4-2.8GHzを3.36GHzにオーバークロックしてエバポレータ温度マイナス16℃、ヒートスプレッダー温度マイナス8℃にまで下げてVapochillの冷却性能をテストした。 |
CPU周辺とコンプレッサーに少々大げさとも思える結露対策を施して、どうにか常用可能と思える所まで到達した(フイルム状のヒーターや断熱材などが揃った純正のSocket478用追加キットを使うことなく)。なお、結露対策を終えてこのVapochillの冷却性能を数値的に調べた結果をグラフにあらわしてみた。これは、規定クロックとオーバークロック設定のそれぞれにおいてSuperπを走らせながら30秒おきにエバポレータ温度とヒートスプレッダー温度を記録したものだ。双方のグラフを比較すると一目瞭然だが、エバポレータの温度はスタート直後から30秒ほどでおおむね落ち着いてしまう。その一方で、ヒートスプレッダー温度は時間の経過とともにジリジリと上昇している点に違いがみられる。これは、現状のリテンション方法ではエバポレータとヒートスプレッダーの密着度に限界があることを意味しているように思われた。仮に両者をロウ付け等の方法で固定する(そのままだと確実にコアは焼けてしまうのでペケ)、あるいはヒートスプレッダーを省いてコアを直接冷却できるものなら、グラフはもう少し違ったカーブを描くのではないだろうか。つまり、理想的にはPentiumIIIのFC-PGAパッケージのようにコアがムキだし状態のPentium 4があれば更に冷やし込めると考えられる。しかし、現状のPentium 4を改造して実践するには、CPUを壊してしまうリスクが大きい。
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VapochillのChillcontrolが表示するエバポレータ温度の変化状況。 |
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ヒートスプレッダーに接触させておいたセンサーで温度変化を調べてみた。 |
●ガス冷でPentium 4-2.8GHzのオーバークロック耐性を調査
今回のテストで使用しているPentium 4-2.8GHzは、先にも述べたとおり水冷マシンを組んだ時に使用したCPUで、動作限界は3.36GHzだった。果たしてガス冷時における動作限界はどの程度向上するのだろうか。それでは、ガス冷におけるオーバークロック耐性テストをPentium 4-2.8GHzの規定コア電圧における動作限界から測定を開始する。測定方法は、従来に準じてベンチマークテスト代わりにSuperπの104万桁を計算させて無難に完了するならFSB設定クロックを徐々に高くセットして再度同じ計算を繰り返した。なお、メモリのアクセスタイミングは緩和させておき、FSB設定クロックの影響を受けないようにセットしている。そして、その計算過程でSuperπがエラーを報告したり、システムがハングアップした場合は、その直前に正常動作したクロックを動作限界として記録した。
また、コア電圧の昇圧によって動作限界の向上が望める場合は、P4PEのコア電圧操作機能を利用し、0.025Vステップで高くセットしている。その結果は、最終的にコア電圧1.825Vにて最高3.465GHzの動作が確認できた。ただし、この条件で常用できるほどの安定度が得られているか?というと、そう甘くはないようだ。Superπの計算だけでなく他のベンチマークテストを試してみると、思った通りプログラムの途中でシステムがハングアップした。そこで今度は、逆にFSB設定クロックとコア電圧を下げてセットして行き、いつもと同じようにFuturemark(旧MadOnion)の3D Mark 2001SEとPC Mark 2002およびSuperπの104万桁をすべて完了できる最高動作クロックを探った。ちなみにコア電圧を微妙にコントロールする事でCPU温度の上昇を抑えられるわけだが、低すぎるとオーバークロック動作ゆえの不安定動作を招き、逆に高すぎると無駄にCPU温度が上昇するだけである。したがって高圧安定指向ではあるものの、やたらとコア電圧を高くしてもCPU温度の上昇を招くだけで、場合によってはベンチマークテスト実行中にハングアップすることもあった。結果的にコア電圧1.750Vで3.40GHzの動作が実現し、各ベンチマークテストのベストスコアーをたたき出せた。その時のメモリセッティングなどは、表に示した通り。また、各ベンチマークスコアは、それぞれのグラフを参照してほしい(参考までに前々回の水冷マシンで得たベストスコアーを比較対照として書き加えている)。なお、この時に使用したメモリは、Winbond製メモリチップを実装した256MBのDIMMである。残念ながら、Corsair製512MBのDIMMだとこのメモリセッティングは厳しいようで、Windows XPのデスクトップ画面まで表示することはできなかった。
●まとめ
最後に今回の「ガス冷マシン」については、やはり冷却装置の能力をもう少し引き出す工夫が必要だったかも知れない。また、エバポレータ温度に比較してジリジリと上昇するヒートスプレッダー温度を感じながら、改めてPentium 4の発熱の猛烈さを再認識するとともに「エバポレータとCPUコアの密着方法を何とかしたい」と痛烈に思った。しかしながら、これほど簡単に室温以下のCPU温度を長時間提供してくれる“Vapochill”は、オーバークロックを志す者にとって一度は扱ってみたい憧れの冷却アイテムに違いないだろう。
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ガス冷におけるPentium4-2.8GHzのオーバークロック耐性表 |
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Superπ |
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3D Mark 2001SE |
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PC Mark 2002 |
| ガス冷テストのセッティング表 |
| FSB設定クロック |
162MHz |
| コアクロック |
3.40GHz |
| メモリクロック |
405MHZ |
| Vcore |
1.750V |
| V-DDR |
Auto |
| V-AGP |
Auto |
| CAS Latency |
2 |
| RAS to CAS Delay |
2 |
| RAS Precharge |
2 |
| Active Precharge |
6 |
| Idle Timer |
8T |
| System Performace Mode |
Turbo |
| Memory Turbo Mode |
Enabled |
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◎注意
メーカーが定めた周波数以上の動作は、CPUやメモリを含めてその他の関連機器を破損したり、寿命を縮める可能性があります。また、各電圧を高く設定する場合においても同様のリスクがあり、それらの結果によるいかなる損害についても、筆者およびAkiba2GO!編集部、製造メーカー、販売店はその責を負いません。オーバークロック設定・改造・BIOSの書き替え等は自己の責任において行って下さい。なお、この記事中の内容は筆者の環境でテストした結果であり、記事中の結果を筆者およびAkiba2GO!編集部が保証するものではありません。この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできませんので、あらかじめご了承ください。
【筆者プロフィール】鈴池 和久氏。オーバークロック歴は1995年登場のTritonチップセットの頃から。マザーボードの回路解析やハンダごてを使ってオーバークロック改造を施すのが得意。1998年出版の「パソコン改造スーパーテクニック」を初めPC改造に関する著書を複数執筆。現在は当ページのオーバークロック研究室コラム記事を執筆中。ハンドル名は「KAZ’」。1957年生まれ大阪府在住。
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