【オーバークロック研究室】Pentium 4-2.0AGHzのオーバークロック耐性を探る(前編)
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2002年2月13日
●Pentium 4(Socket478)との再会
筆者が初めてSocket478タイプのPentium 4を目撃したのは、昨年の6月に台湾で開催された「COMPUTEX TAIPEI 2001」の会場だった。当時のPentium 4(Socket423)に比べて圧倒的にコンパクトなサイズが印象的で、あたかもモバイル版CPUかと思ったほどである。あれから半年の間にPentium 4(Socket478)は0.13μmプロセスの新しいNorthwoodコアを載せ2次キャッシュ容量は512KBに増量された。
これまで我がオーバークロック研究室ではPentium 4を課題にした記事はない。これは、従来のPentium 4の評判からして投資の割に具体的なパフォーマンスを得られそうにないからで、それよりもAthlonを使ってオーバークロック動作させた方が圧倒的に遊ばせてもらえると考えていたからだ。しかし、ここに来てPentium 4(Socket478)のスペックは上述の通り、注目に値する内容となったと言っていいだろう。しかもDDR SDRAMをサポートするマザーボードが各社から出そろったとなれば、手持ちのメモリを活用できる。加えてオーバークロック機能が充実したマザーボードもあるとなればリスキーな改造も無用なわけで、これはもう試さないわけにはいかない。そこで今回は、Pentium 4-2.0AGHzをチョイスしてその実力を探ってみた。果たしてどの程度Athlonに迫れるプロセッサなのだろうか。
●マザーボードや構成パーツについて
今回のテストマシンに選んだマザーボードは、i845Dを搭載するGigabyte製「GA-8IRXP」で、思いつく装備はほぼ全てと言っていいほどの内容がオンボードで搭載済だ。しかも、FSB設定クロック操作のみならずコア、メモリ、AGPの各電圧をも操作できるオーバークロック機能が充実している。マザーボード以外の構成パーツに関しては表を参照していただくとして、これまでのテスト環境との違いを述べておくと、OSにWindowsXPを導入した。加えて、ビデオカードをGeForce3 Ti500(Inno VISION Tornado)に格上げしている。早速、これらのパーツを組み上げてオーバークロック研究室では初めてのPentium 4マシンを完成させた。
【表1】テストマシンのパーツ構成表
協力:フェイス
| CPU |
Intel Pentium 4-2.0AGHz |
| CPU冷却 |
リテールクーラー(山洋) |
| マザーボード |
Gigabyte GA-8IRXP(REV2.0) |
| BIOSリビジョン |
F4 |
| メモリ |
PC2100 CL=2.5 128MB×1 |
| ビデオ |
InnoVISION Tornado GeForce3 Ti500(DDR64MB) |
| ドライバー |
Ver.4.13.01.2311 |
| 解像度 |
1024×768ドット/32bitカラー |
| HDD |
IBM Deskstar 60GXP ICL35L060AVER07(U-ATA100 60GB 7200rpm) |
| OS |
WindowsXP Professional |
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組立に関して印象的だったのはリテールBOXに付属のCPUクーラーで、従来の「おまけ」的な存在とは違っている。まず、ヒートシンクを押さえつけるリテンション機構が意外と良くできている。一旦、ロックするとCPUにガッチリ固されてガタつきがほとんどない。ただ、一方でその強さはマザーボードが反り返るほどで、ちょっと不安を感じてしまうのも事実だ。ヒートシンクの素材は単なるアルミである。オーバークロックを前提に考えると同じ形状の銅製ヒートシンクが欲しいところだが規定クロック動作なら十分なのだろう。ともあれこのリテールクーラーを使用してテストに臨むことにした。
さて、組立後の通電テストでは何事もなくBIOS画面が表示され順調そのものである。すぐさまBIOS SETUPを呼び出してPC Health StatusからCPU温度やコア電圧などをチェックしてみると、各項目とも正常値で無難に動作しているようだ。ひと通り他のページにも目を通して必要なパラメータをセットしSAVE EXIT。OSのインストール作業とドライバー、ベンチマークプログラムも整えてセットアップを完了させた。ひとまずこの状態でベンチマークテストを走らせてみる。言ってみれば「素」のPentium 4-2.0AGHzパソコンのパフォーマンス測定だ。ベンチマークテストはこれまでのテストと同じメニューのSuperπと3D mark 2000 Rev1.1及び3D mark 2001を用いた。結果は、Superπの104万桁だと95秒で計算完了となるが、このタイムはハッキリ言って「遅い」。つまりAthlon XP 1500+の標準クロック動作時における計算時間より10秒の開きがあるのだ。この程度のタイムならこちらでテストした結果といい勝負である(ちなみに3D関連は、ビデオカードのグレードが異なるために単純比較できないので割愛する)。不得意な整数演算とは言え、OSをWindowsXPとしたことでこれまでのテスト環境より成果は上がって然るべきである。しかも単純に2次キャッシュ容量が倍増したことで好結果が得られるハズだと期待を抱いてのテストであったが…。
●BIOSの設定が反映されない
先の結果をふまえて「もう少し何とかならないモノか?」とスピードアップについて考えてみると、FSB設定クロックの操作以外で効果的な手段としてはメモリの動作タイミングを詰めることぐらいしか頭に浮かばなかった。そもそも組立後の通電テストでBIOSにセットした内容は、実装したメモリ(PC2100 CL=2.5)のSPDに書き込まれたデータをそのままBIOSへ鵜呑みにさせてしまう設定であり、これを詰めれば少しは速くなる可能性が残されている。
再度、BIOS SETUPからAdvanced Chipset Featuresを開いてConfigure DRAM TimingをManualに設定。BIOSで用意されているCAS Latency Timeのパラメータは写真の通り、1.5、2、2.5の3通りとなっている。ここで驚いたのは、CL=1.5という選択肢があることで、本当にこのタイミングが通用するのか少々疑問に思ったが、何れにせよメモリスピードを追求する側にとっては歓迎できるパラメータだ。このCL=1.5は後で試すとして、先ずはCL=2をセット。残りの項目もSPD設定より速くなるパラメータをセットした(ちなみにActivate to Precharge delay=5、DRAM RAS to CAS Delay=2、DRAM RAS Precharge=2を選択した)。
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WPCREDIT(H.Oda!氏作)でチップセットのレジスター内容を確かめてみる。メモリの動作タイミングに関係する番地は78h、79h、7Ahである。※注意:WPCREDITを使用する上で如何なる損害を被っても作者や筆者及びASCII関係者は一切の責任を負わない点を十分に認識した上で活用していただきたい。 |
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【表2】i845Dのデータシートから抜粋したレジスターセッティング表 |
ところが再起動後にSuperπで104万桁を計算させてみたが、所用時間は先と同じ95秒で全く変化がみられない。「確かにSAVE EXITしたはずなのに」と再度Advanced Chipset Featuresを開いて確かめてみたが、先ほどの設定通りのパラメータが並んでいる。「もしかしてここでの設定が反映されないワケ?」と再びWindowsXPを起動してチップセットのレジスター内容を調べてみたところ、i845Dのデータシートのリファレンス内容から判断すると思った通りBIOS SETUPでの操作が反映されていなかった。メモリスピードに関する項目を表に抜粋してみたが、BIOS SETUPで何れのパラメータをセットしても(先のCAS Latency Time=1.5も含めて)チップセットにレジストされるパラメータは78h=00h、79h=02h、7Ah=00hで、具体的に言うとCAS Latency=2.5、Activate to Precharge delay=6、DRAM RAS to CAS Delay=3、DRAM RAS Precharge=3、DRAM Idle Timer=infinite(無限)に固定されている。
そこでWPCREDIT(H.Oda!氏作)の機能を活用してWindowsXP上から直接、チップセットのレジスターに表で示したSpecial dataを書き込んでみた(ただし、この行為は、柔なメモリだとレジスター内容を書き換えた途端にハングアップしてしまうこともある。場合によっては思いもよらぬ被害を被る可能性があるので応用される時にはリスクを承知で実行して欲しい)。Special dataと言ってもCAS Latency=2、Activate to Precharge delay=5、DRAM RAS to CAS Delay=2、DRAM RAS Precharge=2、DRAM Idle Timer=0に該当するパラメータであり、BIOS SETUPで設定しようとした行為に準ずる数値である。結果的にチップセットのレジスター内容を書き換えた直後に実施したSuperπの計算時間は、元の状態から4秒の短縮に成功し90秒切りにあと2秒と迫った。
なお、このチップセットレジスター78h番地のパラメータに関してもしかすると隠しパラメータがあるかも知れない。それは、BIOS SETUPで用意されていたCAS Latency Time=1.5の存在が根拠である。i845DのデータシートではCAS Latencyの選択肢は「2」と「2.5」の2つだけがサポートされているが、パラメータとしてはあと2通りセット可能なのだ。ただし、この2つは「Reserved」となっていて正式にサポートされていない。「危険」を承知で試した結果、78h番地だけを30hとセットした場合は、即ハングアップに見舞われたものの20hではどうにか動作しそうな気配をみせた。そこでSpecial dataをもとに他の項目も高速設定となる78h=25h、79h=04h、7Ah=01hに書き換えてSuperπを走らせてみたところ、先のSpecial dataをセッティングした時より1秒短縮の90秒で計算を完了した。確かな裏付けはないのだが、非サポートのパラメータのうちの一つはCAS Latency=1.5の可能性が高いと思われる。そして、もしかするとハングアップしたパラメータはCAS Latency=1なのかも知れない。ただ、この推論が当たっていたとしてもメモリの性能に左右される条件を持つことから、FSB設定クロックを高くすると余程のメモリでなければたちまちついてこれなくなるだろう。したがって「幻のパラメータ」程度に考えておいた方が良さそうだ。
●規定電圧におけるベンチマークテスト
「おもしろくない」。バイクやカー・レースで例えるとエンジン回転数はライバルマシンよりも断然高い数値でブン回しているにも関わらず、ラップタイムがイマイチなのである。「ライディングが下手なんじゃないの?」という意見には耳をかさないで「この局面を打開するための手段としてはオーバークロックが残されているだけだ」とさり気なくPCの話に戻そう。
まずは、CPUコアやメモリなどの電圧は規定値としてFSB設定クロックのみ高くしてみる。セットした周波数は規定より10%増しの110MHz。つまりCPU:2.2GHz、DDR:292.6MHzでの動作をリクエストすることになる。ところがPentium 4マシンはWindowsXPの起動途中でエラー表示とともににシステムが停止してまう事態に。今回もまた「世の中そんなに甘いモンじゃありません」と出鼻をくじかれた気分である。色々と調べた結果、どうやらメモリがついて行けないためと判明した。計算上ではあるがメモリに対してはFSB換算で146.3MHz動作の、しかもCL=2.5でのリクエストなのだがメモリの応答がシステムの要求を満たせないらしい。OSにWindowsXPを選んだためかi845Dが厳しいのか、あるいはメモリのご機嫌がななめなのか理由はともかく、メモリのベースクロックを266MHzから200MHzに下げて再度チャレンジしてみた。すると今度は無難にWindowsXPが起動した。このメモリクロックならタイミングを詰めても大丈夫だろうとチップセットのレジスターを書き換えてCAS Latency=2、Activate to Precharge delay=5、DRAM RAS to CAS Delay=2、DRAM RAS Precharge=2、DRAM Idle Timer=0にセット。メモリ動作クロックを下げたおかげかハングアップすることもなくこのセッティングでのベンチマークテストを順次完了できた。「では、もう少し高く…」とFSB設定クロックを115MHzにセット。これで動作すれば現在市販されているPentium 4-2.2GHzの上を…と思ったと同時に先ほどと同様、WindowsXPの起動途中でエラー表示と共にシステムが停止。結局、FSB設定クロックを徐々に下げて動作限界を探ってみると全てのベンチマークテストが完了できるクロックは皮肉なことに110MHzであった。「まさかCPUの限界か?」。どうやらこの先は多難の連続となりそうな気配を感じつつ、この続きは後編でお伝えするとしてこれまでのテスト条件におけるベンチマークの結果をグラフで表示しておこう。なお、今回のテスト結果についてだが、マザーのロットによるばらつきも否定できないことを付け加えておく。
【表3】ベンチマークテストセッティング表
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テスト1 |
テスト2 |
テスト3 |
| FSB設定クロック |
100MHz |
100MHz |
110MHz |
| CPUクロック |
2.0GHz |
2.0GHz |
2.2GHz |
| メモリクロック |
266MHz |
266MHz |
220MHz |
| CAS Latency |
2.5 |
2 |
2 |
| Activate to Precharge delay |
6 |
5 |
5 |
| DRAM RAS to CAS Delay |
3 |
2 |
2 |
| DRAM RAS Precharge |
3 |
2 |
2 |
| DRAM Idle Timer |
infinite |
0 |
0 |
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■Superπ(104万桁)
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Superπ(104万桁) |
■3D mark 2000 Rev.1.1
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3D mark 2000 Rev.1.1 |
■3D mark 2001
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3D mark 2001 |
※3D mark 2001動作時はWindowsXPの言語設定と地域設定を「英語・米国」に変更している
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【協力】
◎注意
メーカーが定めた周波数以上の動作は、CPUやメモリを含めてその他の関連機器を破損したり、寿命を縮める可能性があります。また、各電圧を高く設定する場合においても同様のリスクがあり、それらの結果によるいかなる損害についても、筆者およびAkiba2GO!編集部、製造メーカー、販売店はその責を負いません。オーバークロック設定・改造・BIOSの書き替え等は自己の責任において行って下さい。なお、この記事中の内容は筆者の環境でテストした結果であり、記事中の結果を筆者およびAkiba2GO!編集部が保証するものではありません。この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできませんので、あらかじめご了承ください。
【筆者プロフィール】鈴池 和久氏。オーバークロック歴は1995年登場のTritonチップセットの頃から。マザーボードの回路解析やハンダごてを使ってオーバークロック改造を施すのが得意。1998年出版の「パソコン改造スーパーテクニック」を初めPC改造に関する著書を複数執筆。現在は当ページのオーバークロック研究室コラム記事を執筆中。ハンドル名は「KAZ’」。1957年生まれ大阪府在住。
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