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【オーバークロック研究室】PowerLeap製PL-iP3/Tを使ってTualatinコア版CPUを動作させてみる(前編)


2002年1月15日

●はじめに

PowerLeap製「PL-iP3/T」(写真はCPUを装着した状態)

 昨年末にNorthwoodコアを採用したPentium 4-2.2GHzがお目見えしたかと思えば、新年を迎えてAthlon XP 2000+の単品販売インテルの新製品が発売ラッシュとなっている。トレンドを追うユーザーにしてみれば入手先の在庫状況や販売価格が気かかりで、情報収集にしばらくは忙しい日々が続くことだろう。

 ところがこちらのレポートを読んでみるとBXマザーボードも「まだまだ健在」という印象が強い。正直なところ筆者が所有するパソコンの中にも歴代のBXマザーボードはいくつか残っており、CoppermineコアのPentiumIIIプロセッサを組み合わせたシステムが稼働中である。

 だが新製品が続々と登場するレポートを何気なく読んでいると「Northwoodコアとまでは言わないまでも、せめてTualatinコアへステップアップしたいものだ」と物欲がどこからともなく沸々と湧いてくる(家人に言わせるとこれは一種の病気らしいが…)。ただ、TualatinコアのCPUはBXマザーボードでは非サポートとなっているために対応するチップセットが搭載されたマザーボードも必要。ついでに突如として暴騰しだしたメモリも「今の内にPC133スペックをおさえておこうか…」と野望は果てしなく膨らんでいく。その一方でそれなりの予算折衝も覚悟しなければならず、もしもの時の妥協案も用意しておいた方がベターだろうと仮称Tualatin計画が進んでいく。予算が無難に確保できるなら何の心配も無く最新のCPU、マザーボード、メモリ等の購入に走ればよいのだが、もしも予算が厳しい時やとりあえずTualatinと言う向きにはこちらのPowerLeap製「PL-iP3/T」を活用する手もある。そこで今回はPL-iP3/Tを使いTualatinコアのPentiumIIIとBXマザーボードを組み合わせて動作させてみる。ただし、ただ単に動作させるだけではもの足りないのでオーバークロック研究室の課題らしくオーバークロック動作にどの程度ついてこられるのかをもテストしてみた。





●意外なパフォーマンスとPL-iP3/Tの実体

Abit製「BH6 Rev.1.2」

 今回のテストに用意したマザーボードは、往年のAbit製「BH6 Rev.1.2」。これは当時のハイエンドオーバークロックマニアがこぞってテストしたBXマザーボードで、オーバークロックを語る上で「抜き」にできないボードの一つ。その高耐性はHyundaiのメモリチップ(HY57V168010D TC-10SやCバージョンのLTC-10P)とともにオーバークロック史の語りぐさとなっているのでご存じの読者も多いかと思われる。そのほかに準備したパーツは表の通りだが、PL-iP3/Tの取扱説明書によるとマザーボードのBIOSリビジョンを最新バージョンへアップデートする必要性が記載されていれる関係から、アップデート作業用にそのマザーボードが本来サポートするCPUが条件次第で必要となる。

 ちなみにPL-iP3/Tの組み込みは簡単で2カ所のジャンパを確認、あるいはCPUに応じてセッティングを施しソケットにセットしてヒートシンクを装着(当然だがCPUとヒートシンクの接合面にシリコングリス等のサーマルコンパウンドを塗布すること)。あとは専用の電源プラグを接続してマザーボードのスロットへ押し込むと準備完了だ。実際の作業で気になった点として、BH6と共に久々の登板となったCPUクーラー(PEP66)はそもそもFC-PGA用のヒートシンクであり、今回のようにFC-PGA2パッケージのCPUと組み合わせた場合はアタッチメント金具が結構きつくなる。したがってCPUソケットのラグ(ツメ)を破壊しないよう注意が必要だ。



【表1】PL-iP3/T動作テストに用いたパーツリスト

CPU PentiumIII-S-1.13GHz
ヒートシンク アルファ製 PEP66
メモリ Crucial Technology製 PC133 CL=2 128MB Micronチップ
ビデオ ELSA GLADIAC ULTRA(GeForce2Ultra DDR64MB)
ドライバー Ver.4.13.01.2311
IDEカード Promise製 Ultra100
HDD Seagate Barracuda ATA IV 60GB
OS Windows Me
DirectX Ver.8.1


Abit「BH6」+「PL-iP3/T」でPentiumIII-S-1.13GHzをドライブするとPentiumIII-1100MHzと認識した。だがセカンドキャッシュは確かに512KBと表示されている

 ハードの準備が整ったところで電源を投入。BIOS SETUPにてFSB設定クロックを133MHzにセットして再起動すると、BIOS Configuration画面ではPentiumIII-1100MHzと表示されセカンドキャッシュは512KBを認識している。OSのインストール作業においてもスムーズでこれと言ったトラブルもなく順調に完了した(試しにWindows XPをもインストールしてみたがこちらも難なく導入できた)。次にドライバーやモニタツールそしてベンチマークテストのインストールも整えてWCPUIDを動作させてみると、PentiumIII-Sが1.13GHzで動作している旨の情報が得られた。もしかすると異なるタイプのCPUが表示されるのではないか?と言うような心配は無用ですこぶる順調だ。



WCPUID(H.Oda!氏作)では確実にPentiumIII-S 1.13GHzを捉えている

 気になるベンチマークテストだがパソコンの計算速度の指標とも言うべきテストとして代表的なSuperπ(104万桁を計算させた)とグラフィックの描画速度としては3D Mark 2001をそれぞれ実行させてみた。結果的にSuperπでは107秒で計算を完了し3D Mark 2001のスコアーは4429ポイントを叩き出した。これを過去のテスト(Tualatin対応マザーボードを使った同じCPUで同一クロック)で得たベンチマーク結果と比較してみると、驚いたことに明かな速度差を示している。テスト環境が少々異なるものの3D Mark 2001のスコアーは1.33GHz動作(157MHz×8.5)のTualatin対応マザーボードを使ったシステムを凌ぐ勢いだ。



133MHz×8.5 1.13GHzベンチマークテスト比較


Superπ

3D mark 2001

 これだけのパフォーマンスが得られるのであれば、あえてマザーボードを新調しなくても十分使えるのではないだろうか?この調子でPentiumIII-Sをオーバークロックすればさらにパフォーマンスアップが望めるとばかりにFSB設定クロックを142MHzへセットし1.2GHz動作を試みた。ところが世の中そんなに甘くはない。ログイン直後からどうも動作が不安定でSuperπの計算途中でエラーとなってしまう。これまでの実動実績から考えると、このFSB設定クロックについてこられないCPUやメモリではないハズだ。無論、BH6においても久々の登板とは言えこのクロックで腰が砕けるほど鈍っているとも思えないがこの足かせとなっている原因を調査するとやはりPL-iP3/Tにあった。

 説明するまでもなくPL-iP3/TにはTualatinコアに対応した電圧を供給する電源回路が搭載されているのだが、実装したPentiumIII-Sの要求電圧1.450Vに対してその電源回路が出力している電圧は1.312Vとかなり低い。これではオーバークロック動作を望むとなるとさすがに厳しい条件である。ただ、PL-iP3/Tで標準動作をさせるのであれば、前述の通り安定した動きを見せるだけでなくTualatin対応マザーボードと互角いやそれ以上のスピードを誇るシステムが構築できるアイテムであった。加えてコストの面においてもマザーボードを新調する予算より負担が軽いことから、同じ予算ならワンクラス上のCPUを狙える可能性さえでてくるだろう。



●PL-iP3/Tを改造

PL-iP3/Tのコア電圧電源回路はST製L6911Eを中心に構成されている

 さて、PL-iP3/Tは買ってきたままだとCPUに供給するコア電圧は、CPUが要求するコア電圧より低い。前ページでテストした通りオーバークロック動作を目論む上でこのネックを何とかしなくてはならない。早速、PL-iP3/Tのケースを取り外して搭載されているコア電圧電源回路を解析した。可能であれば改造を施してコア電圧を操作しようと言う目論見だ。その電源回路は、PL-iP3/TのCPUソケットが実装されている面の裏面に位置するST製L6911Eというチップを中心に、電力制御素子を含めて複数のデバイスで構成されている。L6911EはPL-iP3/Tに装着されたCPUのVIDパラメータに応じて出力電圧を決定している仕組みは、従来の電源回路と全く同じと考えて良さそうだ。一時はこのVIDパラメータ回路を分断してDIPスイッチを取り付け、高い電圧を出力するパラメーターをセットしてみようかと考えたが、配線が煩雑になる上にDIPスイッチを取り付ける場所的な問題も浮上してきた。もう少し簡単な方法はないかとL6911Eのスペックシートを眺めていると、フィードバック回路が目についた。具体的にはL6911Eの10ピンがFBピンでここの電圧を操作すれば出力電圧が変化する理屈となる。PL-iP3/Tの電源回路を追うとR56、R57でL6911EのFBピンに対する帰還電圧を決定しており、対GND側に接続されたR57の抵抗値を低くすれば出力電圧が高くなる回路であることが読み取れた。R57の抵抗値を低くするためには、常とう手段となるが半固定抵抗を並列に接続する。その半固定抵抗の抵抗値は予備実験の結果50Kオームとした(半固定抵抗についてはこちらのコラム記事も参考にしてほしい)。




コア電圧を操作するために改造を施す。ターゲットはR57だ

R57と並列接続となるように50Kオームの半固定抵抗を配置配線する

PL-iP3/Tにコア電圧を測定するポイントを立てておくと出力電圧調整時に便利

取り付けた半固定抵抗のツマミを回転させてコア電圧を1.450Vに調整する。これでPentiumIII-S-1.13GHzの規定コア電圧となった

半固定抵抗をPL-iP3/Tに取り付ける手順を述べると次の通りになる。
(1)半固定抵抗の2ピンと3ピンは、予め短絡接続しておく。
(2)ツマミを右回転させ1ピンと2ピン間の抵抗値が最高となるようにセット。
(3)半固定抵抗は、PL-iP3/Tの電源プラグを差し込むヘッダーの横(写真参照)に固定する予定とし適切なサイズにカットした両面テープを基板に貼る。
(4)半固定抵抗の2ピンは、C30のGND側パッド(ヘッダーと反対側パッド)にハンダづけできる長さのところで直角に曲げ先端を少し残すようにして余分はカット。
(5)半固定抵抗を両面テープで固定すると共に2ピンと(4)のC30片側パッドをハンダづけする。
(6)半固定抵抗の1ピンとR57のFB側パッド(ヘッダーと反対側パッド)を細い耐熱電線で空中配線する。
(7)電源回路の出力電圧をチェックするポイントとしてPL-iP3/TのJP2横に位置するC34の[+]リードに短くて硬い銅線などをハンダづけしておく。

(1)を施す理由は上述のコラム記事を参照していただくとして、(2)は重要なポイントなので必ずチェックして欲しい。もしも逆に低い抵抗値としたなら、理屈上高いコア電圧を出力することになりCPUに悪影響を及ぼす危険性があるからだ。(3)は動作時における電圧調整のしやすさや配線の都合上ここが最適と考えたが、特に「ここでなければ」ということはない。またPL-iP3/Tのケースカバーを元に戻す時のことを考慮して、半固定抵抗が干渉しない位置に決めるとよいだろう。(4)(5)は、半固定抵抗の片側ピンをGNDに接続する回路を実現すればよいので作業性の悪いR57のGND側パッドを避け等価的にC30の片側パッド(ヘッダーと反対側パッド)を利用する。(6)で残りの1ピンを耐熱電線で延長しR57と接続すれば改造作業は完了する。ただ、電源回路の出力電圧を簡単にチェックするポイントがPL-iP3/Tになく(7)でそのチェックポイントをたてておくと、後の出力電圧調整に重宝するだろう。なお、コア電圧は、電源プラグのGND端子にテスター棒(-)を挿入しておきテスター棒(+)を(7)で立てたチェックポイントにあてがって測定すればよい。ちなみに通電後の電圧調整では半固定抵抗のツマミを若干左に回すことで目的の1.450Vが得られた。当然だがさらにツマミを回せば次第に高いコア電圧となるがCPUの性能を維持する上であまり好ましいとは言えない。ただ、この改造方法で得られる最高コア電圧は約1.55Vほどでそれ以上はVIDコードの操作が必要だ(「CPUを破壊しないように」と言う意味では頃合いの調整範囲だろう)。



●BXマザーボードもまだまだ使える

 さて、前述の改造作業で本来のコア電圧を供給できるようになった。これでTualatin対応マザーボードを追走できるはずだが果たしてオーバークロック動作に効果があるだろうか。
 まずはコア電圧1.450Vに調整し前ページで試したFSB設定クロック142MHz(Superπの計算途中でエラーを表示した)で再度Superπを走らせてみる。すると今度は無難に計算を完了し、3D Mark 2001も快調で前回とは比較にならないほど安定している。結果的にメモリのセッティングを詰めた状態では最高155MHzのFSB設定クロックで動作し十分満足できるスピードを示した。この結果からやはりコア電圧の低さが原因でオーバークロック動作についてこられなかったものと断定できた。さらにTualatin対応マザーボードでテストした環境に合わせてFSB設定クロックを157MHzとしベンチマークテストを実行した結果、標準クロックで動作させた比較テストと同様にTualatin対応マザーボードより速い数値をマークしている。

【表3】BH6+PL-iP3/Tにセットしたパラメータ

FSB設定クロック 155MHz 157MHz
CAS Latency 2 3
RAS to CAS Delay 2 2
RAS Precharge Time 2 2

 これらのテスト結果から、買ってきたままのPL-iP3/Tだと標準クロック動作に問題はないもののオーバークロック動作をさせるとなるとPL-iP3/Tの電源回路に改造が必要となる。その点さえクリアすればTualatin対応マザーボードに負けず劣らず、場合によってはそれ以上のパフォーマンスを得られる可能性があると言える。また、本文冒頭で妥協案としてのアイテムと位置づけたが、ここに来て全く違うアイテムのように思えてきた。わざわざBXマザーボードとPL-iP3/Tを新調するのは本末転倒だが、手元にBXマザーボードのシステムがあるのならあえてPL-iP3/Tを導入しTualatinコアのプロセッサを駆るのも決して悪くはないだろう。さらにこちらのレポートではSocket370搭載マザーボードでTualatinコアのCPUを使える新製品(PL-370/T)も登場するとのことでマスマスおもしろくなってきた。レポートを見る限りだがおそらくコア電圧はマザーボードの電源回路に依存すると思われる。従ってPL-iP3/Tのようにコア電圧がネックになる心配がなく非改造でオーバークロック動作が望める可能性が高いからだ(あくまでも推察だが)。なお、次回はPL-iP3/TでCPUをPentiumIII-S 1.13GHzからCeleron-1AGHzに替えて廉価なCeleron-1AGHzがどこまで遊ばせてもらえるCPUなのか、そしてそのパフォーマンスを調べてみる予定である。

ベンチマーク結果


Superπ(104万桁)

3D mark2001

◎注意
メーカーが定めた周波数以上の動作は、CPUやメモリを含めてその他の関連機器を破損したり、寿命を縮める可能性があります。また、各電圧を高く設定する場合においても同様のリスクがあり、それらの結果によるいかなる損害についても、筆者およびAkiba2GO!編集部、製造メーカー、販売店はその責を負いません。オーバークロック設定・改造・BIOSの書き替え等は自己の責任において行って下さい。なお、この記事中の内容は筆者の環境でテストした結果であり、記事中の結果を筆者およびAkiba2GO!編集部が保証するものではありません。この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできませんので、あらかじめご了承ください。

【筆者プロフィール】鈴池 和久氏。オーバークロック歴は1995年登場のTritonチップセットの頃から。マザーボードの回路解析やハンダごてを使ってオーバークロック改造を施すのが得意。1998年出版の「パソコン改造スーパーテクニック」を初めPC改造に関する著書を複数執筆。現在は当ページのオーバークロック研究室コラム記事を執筆中。ハンドル名は「KAZ’」。1957年生まれ大阪府在住。




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