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ドライアイス冷却でマイナス70℃の世界へ!FSB設定クロック200MHzでの起動をマーク!!


2001年8月19日

実験風景
ドライアイスを使ってマイナス75.5の低温を実現する

 既に立秋を過ぎているにもかかわらず毎日暑い日々が続き、オーバークロックマシンにとっても過酷な動作条件となっている。そこで今回のミッションは、こちらこちらで紹介されているアイテムを使って、零下70℃の環境を作り出し夏バテ気味?のPCを一気にリフレッシュさせてみよう!という作戦内容で実験にトライした。



●クリぬいてマス!Proとクリぬいてマス!MAXX

実験風景
“クリぬいてマス!Pro”と“クリぬいてマス!MAXX”をマザーボードに配置してみる。

 CPUの冷却装置については、通常ヒートシンクに電動ファンを組み合わせたCPUクーラーが一般的であるが、写真の製品は使用用途を極低温冷却の実験、あるいはベンチマークマシン専用に限って設計されており、オーバークロック愛好家には気になる存在だ。詳しくは上記のリンク先レポートを読んでいただくとして、本文冒頭ではこれらの製品を用いて極低温冷却実験を実施する上での準備に関する内容と、後半で実際に寒剤を投入し極低温環境におけるオーバークロックの実験レポートをお届けしよう。
 なお、実験で動作させる機器として、こちらの記事で使用したEPoX製EP-8K7AにAthlon1.2GHz(こちらの記事でテストしたCPU)の組み合わせで臨んだ。



実験風景
今回、予約して購入したドライアイスは、5kg。聞くところによると業者は零下30℃の冷凍庫で保管しているそうだがそれでも時間とともに気化して目減りするという。どうりで両側の塊まりはそれらに挟まれた3個に比較して明らかに小さい。でも、5kg分の料金を支払うのはこの業界において暗黙の了解かもしれない

 まず今回の極低温実験では、寒剤にドライアイスを使用する。入手方法は、電話帳やインターネットで「ドライアイス」をキーワードにして探してみるといいだろう。購入する時に注意することは、あらかじめ予約が必要な場合や最低購入量を決めている業者もあることだ(最悪、購入先が近所に見つからない場合は洋菓子店でもドライアイスを使用するので入手先の情報や余分に手配してもらえないか相談してみる手もある)。また、価格も500円/kg〜1000円/kgと結構バラついているので、あらかじめ聞いておくといい。ドライアイスは新聞紙などで簡易的に包装されているだけなので、業者から受け取る時点で軍手とクーラーBOXが必須だ(可能な限り保温性の良いクーラーBOXが好ましく必要に応じてBOX内に断熱材を追加するとよい。それでも日持ちはしないので実験の直前に入手するのが理想的)。ちなみに今回の実験では、5kgのドライアイスを用意した。それと薬局で「メタノール」を購入しておいた。これは、ドライアイスの温度をさらに低下させる目的と冷却装置を効率よく冷やすために使用するのだ(エタノールより安価で温度を下げる目的にはメタノールが向いている)。



メタノール
薬局でメタノールを調達する。500mlもあれば十分だ
メタノール
断熱処理を施した“クリぬいてマス!Pro”と“クリぬいてマス!MAXX”。配置の関係から断熱材同士が干渉する部分をカットした

 次に冷却装置についてだが、角柱タイプの“クリぬいてマス!MAXX”は、結構な容積が確保されており今回の実験で寒剤に使用するドライアイスであっても十分な量を詰め込める仕様になっている。また、CPUソケットに装着する際の設計も行き届いており、“鳥居くん”と呼ばれるアタッチメント金具を併用することで“クリぬいてマス!MAXX”とCPUをしっかり密着できる製品に仕上がっている。
 一方、円柱タイプの“クリぬいてマス!Pro”だが、CPUの冷却目的に設計されているのは言うまでもない。だが、ドライアイスを寒剤とするならば内容積から言って詰め込める量も限られ、低温を維持できる時間が短いと想像できた(どちらかというと寒剤に液体窒素を使う仕様で設計されたのではないだろうか)。
 そこで“クリぬいてマス!Pro”には、チップセット(NorthBridge)の冷却を担当してもらうことを思いついた。おそらくCPUより発熱しないNorthBridgeなら、ドライアイス寒剤であっても十分な実験時間を確保してくれるだろう。なお、冷却効率を増すために双方とも断熱処理を施すことにした。用意したのは、15mm厚の発泡スチロールパネルと5mm厚の発泡ウレタンシートで、どちらもホームセンターから調達してきた。発泡スチロールパネルは、角柱タイプの“クリぬいてマス!MAXX”の周囲を取り囲むように裁断して両面テープで固定。円柱タイプの“クリぬいてマス!Pro”には、発泡ウレタンシートを2重にして同じく両面テープでとめてみた。ただし、双方の“クリぬいてマス!”をマザーボードの所定位置に配置すると断熱材同士が干渉するので予めその部分はカットしておいた。



●マザーボードの準備と保冷について(その1)

マザーボード上のケミコンをハンダ面に移設した。ところが新たな問題が発生

 冷却装置の準備は順調に進んだが、マザーボードに対していくつかの問題点が浮上してきた。一つは、マザーボード上にある電源回路のコイルやケミカルコンデンサ(以下、ケミコン)が前述の断熱材と干渉して双方の“クリぬいてマス!”を好位置に配置できないのだ。その対策として干渉する部分の断熱材をカットする方法が最も手軽なのだが、本来の冷却効率を損なうだけでなくケミコンの温度を極端に低下させる懸念もある。もしも、ケミコンの周囲温度をマイナス40℃より低い温度に下げてしまうと、本来の静電容量を保てない性質があり起動困難や動作不安定の要因となることは、過去に液化炭酸を使った冷却実験から経験済だ。ここは、手間取るがケミコンをマザーボードのハンダ面に移設することに…。だが、そうすると新たな問題を抱え込む結果となる。移設したケミコンのおかげでマザーボードを支持するシャーシが必要になってきたのだ。どうやら、我がオーバークロック研究室もユニークなPCを開発している「PCなんでも改造総研」の足元にも及ばないが、森本琢司氏を見習って電動ドリルやカナ鋸を駆使しなくてはならないようだ。



マザーボードを支持するシャーシを製作。1.6mm厚のアルミパネルに14本の50mmスペーサーをマザーボードの取付穴に合わせて配置した

 シャーシの設計は、次の通りに考えた。まず、加工が容易なアルミパネルをマザーボードとほぼ同じサイズに切り出す。そしてマザーボードの取付穴に準じたビス穴をあけ、そこにスペーサーを立てる。パネルの厚みは1.6mmもあれば上等だろう。スペーサーの長さは、ケミコンの高さが約30mmであったが余裕をみて50mmとした(必要に応じてケミコンの断熱処理も想定)。それと“クリぬいてマス!MAXX”の重量を考えると単にマザーボードの取付穴に対応するスペーサーだけで支持するとマザーボードが反り返ってしまう。そこでCPUソケットの周りに加工されたCPUクーラーの取付穴を利用し、ここにもスペーサーを立てて支持しようと考えたのである。



近所の食料品店で調達した「リンゴ箱」(近頃は木箱でなくて発泡スチロール製)にEP-8K7Aを置いてみる。なお、壁面の厚みは約25mmほどで強度は十だが少し大きいかもしれない。配線の都合を考えて箱の壁面に穴を開けたりして本番に備える。さらに空冷で起動させてBIOSセットアップから必ず起動できるデフォルトのパラメータでセッティング項目を埋めておく

 そしてもう一つ問題があった。冷却装置の断熱処理はいいとしても、マザーボード全体の周囲温度を下げる必要性がある。冷却装置によってその周辺は極低温となるが、離れる(あるいは、温度的に遠ざかる)にしたがって結露温度がどこかに分布するわけでそこに発生する水滴が動作不安定の原因となることも予想できる。よって室温から何らかの断熱処理を施し、周囲温度を零下に下げた環境下でシステムを動作させるのが望ましい。
 この問題の解決策としては、ホームセンターで見かける発泡スチロール製の簡易クーラーBOXや段ボールの空き箱と十分な厚みのある発泡スチロールパネルを組み合わせて作成した小箱などを利用する。つまり、この箱(以下、保冷BOX)の中にマザーボードを配置して本来のCPU冷却を実施するとともに、保冷BOXの空きスペースに適量のドライアイスを置けば上述の問題を回避できるだろう。ちなみに筆者は、発泡スチロール製で外寸410(D)×480(W)×250(H)mmの箱を近所の食料品店で分けてもらった。これは、「リンゴ」を搬送する際のケースで空箱は使い道がなければ処分するとのこと。「簡易クーラーBOXにしたいので分けて欲しい」とご主人に相談すると、使っていない空箱があるとのことで一箱をゲットできた。費用は無料とのことだったが、今後のことも考えて今晩のデザートに「梨」の一盛りを購入した。





●マザーボードの準備と保冷について(その2)

 次に「問題」というわけではないのだが、CPU温度を極低温にするからには、AVIAと刻まれたAthlon-1.2GHz(当時、AXIAと刻まれたCPUが欲しかったが購入したAthlon-1.2GHzはAVIAだった)がどれだけ高クロックで動作するのか調査するのもこのミッションのターゲットである。ならば、マザーボード側にもそれ相応の準備が必要だ(ちなみに購入当時、空冷での動作限界は1368MHz)。そのクロックを操作する手段はCPU倍率とFSB設定クロックの変更だが、CPU倍率はボード上のDIPスイッチから操作可能なので心配はない。一方、FSB設定に関しては、前回の実験結果からこのマザーボードにおいて当時のBIOSリビジョンだと設定可能な最高クロック166MHzに到達しており、これ以上のクロックを設定できなかった。ところがEPoX社のWebサイトから最新のBIOS(Filename:8k7a1711.exe)を入手してアップデートしてみたところ、最高250MHzまで1MHzステップの設定が可能になっている(これは、もしかしてEP-8K7Aの記事中で切望しておいたリクエストがメーカーの耳に届いたのだろうか?そうだとしたら筆者の気持ちの中でEPoX社の株価は上昇するのだが…いずれにせよ気の利いたメーカーである)。最悪、クロックジェネレータ回路の改造を施す覚悟だったがこれなら一般にリスキーな改造をしなくてもさらに高いクロックでのテストが可能だ。ただ、FSB設定クロックをより高くする場合に、もしかするとメモリが追いついていけないかもしれない。これには、オリジナルのEP-8K7Aで設定可能なDDR電圧よりも高圧なDDR電圧をセットすることで改善できる可能性が考えられる(ある意味、EP-8K7Aの記事中で紹介したDDR電圧設定の裏技がフルに駆使できる状態にすればよいのだ)。

EP-8K7AのI/O電源回路に半固定抵抗を追加してさらに高いDDR電圧が設定できる改造を施した

 DDR電圧に関してはEP-8K7Aの記事中でごく簡単に触れているが、具体的な方法は次の通りだ。まず、オリジナルのDDR電圧をより高く設定するためにはI/O電源回路の出力電圧を現状より高くしなければならない。その電源回路の制御素子は、U22と印された“US3034”であり3ピンに印加する帰還電圧を操作すれば、出力電圧が変化する。回路解析の結果、現状でセットされているパラメータは、R363とR353の抵抗値で、特に片側がGNDに接続されているR363の抵抗値を操作すれば目的を達成できる。そこでR363(実測抵抗値576オーム)を摘出し、その代わりに抵抗値を可変できる半固定抵抗を接続すればよい(半固定抵抗は、固定抵抗と異なり、3本のリードが【図1】のように接続されている)。その下の写真は、半固定抵抗の一例であるが、様々な形状とサイズ及び抵抗値の製品が販売されており、電子パーツショップで入手可能だ(価格は200円前後)。




【図1】通常、半固定抵抗の抵抗値は1ピンと3ピン間の最高抵抗値で呼ばれている。なお、その抵抗値は、本体に印刷されているが、コード化された数値である。ちなみに2Kオームだと“202”と表記され20×10の2乗オームの意味

本体中央の白いツマミを時計ドライバー等で回転させると【図1】で示した2ピンの接点がツマミの回転方向に応じて移動する仕組み。したがって1ピン2ピン間と2ピン3ピン間の抵抗値がそれぞれ変化する。ただし、本品の主な用途は微調整用であり抵抗値を頻繁に操作する可変抵抗器とは分別されている。なお、写真左リードから1ピン、2ピン、3ピン


●EP-8K7AのI/O電源回路を改造する(実践編)

改造前のI/O電源回路制御部

 さて、半固定抵抗の抵抗値は、筆者のパーツBOXに買い置きがあった都合で2Kオームとしたが、この場合(R363の実測抵抗値が576オームなので)1Kオームの方が理想的。そしてEP-8K7Aに取り付ける手順として詳しく述べると次の通りになる。

(1)半固定抵抗の2ピンと3ピンは、予め短絡接続しておく。
(2)テスターを使って1ピンと3ピン間の抵抗値を測定しながらツマミを回転させ580オーム付近に予めセットしておく。
(3)I/O電源回路の固定抵抗R363(チップ抵抗)を摘出する。
(4)“US3034”の3ピンとGND間に(2)で準備した半固定抵抗をハンダづけする。
(5)マザーボード単体で通電しI/O電源回路の出力電圧をテスターで測定。
(6)半固定抵抗のツマミを回転させ(5)の測定電圧が3.40V〜3.45Vになるよう調節する。
(7)JP3の3-8と5-10にジャンパキャップを装着してDDR電圧が、3.1Vに昇圧する事を確認
(8)同じくJP3の2-7にもジャンパキャップを追加装着して3.2VのDDR電圧となれば完了

 本来この手の電子パーツは、プリント基板を用意して実装・固定した後にマザーボードへ配線するのがセオリーだが、今回のように省力的(少々横着なだけ)な固定方法を採用する関係から目的の回路を実現するために(1)のような必要最小限度の空中配線を施す場合もある。なお、2ピンと3ピンを短絡接続する理由はいくつかあるが、2ピンのリードをマザーボード上の目的のパッドに接続しようしても届かないために、3ピンを経由してリード長を稼ぐ意味合いが強い(2ピンと3ピンを短絡接続しても1ピン、2ピン間の抵抗値は変化しない)。ちなみに本回路の場合、“US3034”の3ピンとGND間の抵抗値を低くすると、I/O電圧が高くなるので半固定抵抗の1ピンと2ピン間の可変抵抗部分を用いて回路に配線するとツマミを右に回せばI/O電圧は低下する。逆に右回しで高いI/O電圧となるようにするのであれば、半固定抵抗の2ピンと3ピン間の可変抵抗部分を用いるといい(頻繁に調整しない場合、筆者はあえて左回しで高い電圧となるようにしている。理由は出力調整時にうっかり右に回して、思いもよらない高い電圧が出力されるかもしれないからで、逆にしておけば電圧は低下するので安心。ある意味、回路を守るための策)。(2)の準備も通電時のことを考えると重要な要素のひとつ。怠ると出力電圧が全く不明な設定状態から通電することになる。したがってオリジナルの回路定数をまねておくのが最善だ。(3)でマザーボード上の固定抵抗(R363)を取り外してしまうのだが、2本のハンダごてを駆使してチップ抵抗の両電極を同時に加熱すると容易に摘出できる(初めてハンダごてを握るなら、差し支えのないボードを別途用意して練習しておくといいだろう)。(4)でいよいよ半固定抵抗を接続する。“US3034”の3ピンラインを追うとC174のR384(パーツは実装されていない空きパッド)側電極まで接続されていた。一方、GNDポイントを探してみるとR384の片側パッド(R389側)がつながっている。そこで半固定抵抗の1ピンは、このR384の片側パッドにハンダづけし半固定抵抗の3ピン(上述の通り半固定抵抗の2ピンがこの3ピンに短絡接続されているので実質的に2ピンと同意)は、先のC174の片側電極へ接続すれば回路的にR363の代わりに半固定抵抗が接続されたのと同じ理屈になる。



増設した半固定抵抗を調整してI/O電圧を3.40V〜3.45Vの範囲内に調整する。写真は、電圧調整後にデバイスを装着し正常に動作するかテストしながらI/O出力電圧を確かめている

 ここまで正しく作業を施せば、ほぼ、オリジナルのI/O電圧(3.3V)で出力されるハズ(もしも、異常な電圧なら、即、電源を切断して間違いを探す)。なお、(5)の通電時、CPUやメモリーなと一切のデバイスは装着しないで単にATX電源と起動スイッチを接続してテストを開始する。I/O電圧の測定ポイントは、DDR電圧の設定を施すJP3の横に位置するQ54と印された素子(ダイオード)のリードで(マザーボードにハンダづけされている2本のうちどちらでも良いがその2本のリード間に素子から少しだけ飛び出している中央のリードとは異なる)対GND間電圧を測定する。(6)は、(5)の測定結果から3.3V付近であれば電圧計を監視しながら半固定抵抗のツマミを左にゆっくり回転させて3.40V〜3.45Vの範囲内に収まるよう調整する。なお、I/O電圧を3.5V以上に設定すると起動困難に陥るので注意が必要。最後に(7)と(8)のDDR電圧を測定するポイントだが、最もわかりやすい場所はDIMMソケットの7ピンであり、こことGND間の電圧を測定するといいだろう。





●実用新案?EP-8K7A専用電圧設定スイッチ・ケーブル

ATマザーボードで使用するCOMポート用接続ケーブルを流用して作成したDDR電圧とコア電圧を設定できる延長ケーブル(写真のケーブルは、DDR電圧設定用で他にコア電圧設定用も作成した)で保冷BOXを開口せずに各電圧を設定可能にする。

 これでDDR電圧設定の拡張改造が完了した。改めて極低温環境における動作実験過程を想定してみると、もしもDDR電圧を変更設定するとなった場合に保冷箱を開口する必要性がある。冷却効率を考慮すると可能な限り開口時間は短い方が良いのだが、相手がジャンパーポストなので意外と手間取るかもしれない。これは、EP-8K7AのJP2でCPUコア電圧を設定する場合にも同様の条件なのでひと工夫が必要だ。



【図2】DDR電圧とコア電圧をDIPスイッチで設定するための回路図

 そこで考えたのが、延長ケーブルと設定スイッチである。EP-8K7AのJP2(CPUコア電圧設定)とJP3(DDR電圧設定)を眺めていると数年前に扱っていたATマザーボードのCOMポートを思い出した。「確か、資材箱(ジャンクBOXとも言うが)の中に…」。近頃のATXマザーボードでは使うこともなくなったので無用の長物となっていたCOMポート用のケーブルであるが、それを何とか流用できないだろうか?と探していると、年代モンだが数本のCOMポート用接続ケーブルが確保できた。試しにケーブルの一端に圧着された10PのコネクターをEP-8K7AのJP2とJP3へ装着してみると、JP2にはすんなり収まるもののJP3にはJCLK1と干渉して収まりが悪い。ここは、JCLK1の1〜3ピンをJP3と反対側へ少し曲げてチョット無理やり押し込んで対処した。
 次にCOMポート用接続ケーブルは、信号線が9本に対してJP2とJP3は10ピンであるが、ここでJP2とJP3のピンアサインを解析してみる。ともに1-6ピンは、どこにも接続されていない「N.C」ピンだ。そしてJP2の2、3、4、5ピンとJP3の7、8、9、10ピンは、全てGNDに接続されており、残りのピンを個別に延長して制御すれば何とかなりそうに思えた。しかし、一つだけ問題がある。9本の信号線しかないCOMポート用接続ケーブルのコネクターをJP2に1ピン番号をあわせて装着すると、10ピンに対応する信号線がないのである。まぁ、にわかづくりのこの際だからコネクターの1ピン番号にこだわらず、JP2の10ピンにコネクターの1ピンを接続する方向に装着する特別ルールでスイッチ回路を構成することにした。とりあえずは、こうすることでJP2の10ピンに信号線が割り当てられるからだ。
 実体配線図を【図2】に書いておいたが、COMポート用接続ケーブルの一端に接続されたD-Sub9ピンのジャンクションコネクタは、DIPスイッチに置き換えるので切断する。そしてユニバーサル基板(2.54mmピッチでパーツ実装用の穴が予め加工された試作用基板)を適当なサイズに切り出して固定穴を加工し4極のDIPスイッチをハンダづけする。
 最後に回路図の通の配線を施し元々ジャンクションコネクタに被せてあったキャップカバーを利用して体裁をまとめた。なお、それぞれのDIPスイッチは【表1】に示した設定パターンでDDR電圧とコア電圧を操作できることになる。




【表1】延長ケーブルの端に組み付けたDIPスイッチの設定表


●温度監視について

 これまでに説明した準備の内容で極低温環境における動作実験が何とか開始できるところまできたように思われる。しかし、主だった場所の温度監視ができないことには、安定した実験データーを取り損なう可能性だけでなく「極低温のつもりが実は、さほど低い温度に下がっていなかった」などのトラブルを関知できない。せめてCPUとメモリの温度だけでも監視できるようにいくつかの温度計を用意した。

パソコンショップで見つけた薄いセンサーを持つデジタル温度計。しかしマイナス49.9℃が測定限界だ。価格は、1,980円

 まず、写真のデジタル温度計は、センサーのサイズと形状に着目して購入した。小さなフイルム状のセンサーは、4mm幅で厚みは1mm弱となっておりCPUパッケージに直接、張り付けられるので好都合だ。ただし測定限界がマイナス49.9℃(スペックとしてはマイナス40℃で計測は3秒毎)なので今回の冷却実験だとCPU温度を正確に測定する能力としては不足するだろう。しかし同様のセンサー形状でマイナス70℃付近の温度を正確に測定できる温度計が簡単に入手できなかったこともあり、とりあえずこの温度計でCPUの温度を監視することにした。




CPUパッケージの表面に直接センサーを置いてその上からスポンジ付き両面テープを使って固定した。本来であれば、CPU温度はコア裏で計測するのがベストだ
メモリーの温度を監視する目的でセンサーを張り付けてみた

 次にデジタル温度計は、過去に室温のモニター用として購入。オリジナルの状態だとセンサーが本体内部に組み込まれている関係で特定部位の温度測定には不向きだ。今回は、本体を分解してセンサーを取り出し配線を継ぎ足してメモリーの温度測定用に改造した。ちなみに測定限界はマイナス50℃で10秒毎計測。



マイナス99.9℃まで測定可能だが、柔軟性のないセンサーのためにCPUの温度が測定できない

 上述の2製品に比較して最も信頼性が高く写真のセンサーと組み合わせた場合の限界測定温度は、マイナス99.9℃(1秒毎計測)である。本来であれば、この温度計をCPUの温度監視に用いたいところだが、センサー形状の関係でCPUパッケージに接触させるよい方法が浮かばなかった。今回は、センサーをできる限りCPUに近づけてみたのだが、CPUソケットに阻まれて効果的な温度監視とは言えそうにない。このあたりは、今後の課題として何とか解決策を考えておきたいところだ。





●手軽に零下70℃の世界へ

(株)田川アルミが販売する“たかちん印サーマルコンパウンド(TSC-1)”どちらかというと「とろり」とした感じで対象物になじみよい

 温度監視に完璧と言えない部分も残っているのだが、とにかく冷却実験を開始しよう。それでは、“クリぬいてマス!MAXX”をEP-8K7Aに装着する(この作業は、卓上で作業する方が良い)。この時に注意することは、“クリぬいてマス!MAXX”には装着方向がありCPUコア位置に準じてオフセットされたバッファー部分を確認し向きを間違えないことだ。それと言うまでもないがCPUコアとバッファー部にサーマルコンパウンドを塗布し、常温環境時よりも増して空気を介在させてはならない(熱伝導効率の低下だけでなくミクロの水分が氷結膨張して最悪コアの破壊につながる可能性も考えられる)。ちなみに筆者は、他の製品に比較して粘度が柔らかく塗布切れのない(パサパサしていない)(株)田川アルミが販売する“たかちん印サーマルコンパウンド(TSC-1)”を使用した。そしてアタッチメント金具“鳥居くん”のステーをCPUソケットのラグに引っかけて“クリぬいてマス!MAXX”に圧力をかける蝶ねじを適度に締め込む。ただし必要以上に締め込むとCPUソケットのラグが破壊するので注意が必要である。加えて固定後に“クリぬいてマス!MAXX”を持ち上げる行為は厳禁だ。装着後の移動は、必ずマザーボードを支持し“クリぬいてマス!MAXX”が傾くことのないように配慮しながら保冷BOXの定位置に配置する。この時点で動作に必要な配線やメモリーなどのデバイスをセットした。



いよいよドライアイスを“クリぬいてマス!”に投入した。“鳥居くん”は、既に真っ白に凍っている

 一方、“クリぬいてマス!Pro”は、NorthBridgeにも十分サーマルコンパウンドを塗布した上で押さえつけ、空気の介在を排除する(こちらは固定方法を特に考えなくても冷却課程で凍り付いてしまうので心配はない)。これで冷却装置の準備が整ったわけだが、念のために電源を投入しPOSTするかチェックしておく。“FF”以外のコードが表示されて逐次変化するならBIOS画面を確認し、異常がなければ速やかに電源を切断(この時点でドライアイスは投入していない)。ただし、CPU温度を監視しながら実行する(異常に高い温度に到達する以前に電源を遮断することが重要)。また、異常なCPU温度を関知したり起動困難などのトラブルが起きた場合は、この時点で原因を追求し解決しなければならない。特に問題がなければ、双方の“クリぬいてマス!”に寒剤を投入する。手順は、予めメタノールを少量注いでおくのだが、量が多いとドライアイスを投入した途端にメタノールがわきあがって溢れてしまう恐れがあり、あまり好ましくない。もしも、溢れ出た場合は、実験を中断してメタノールを排除した方がよいだろう。なお、ドライアイスは、素手で触らない方が無難。軍手などをはめて持つようにする(手元に割り箸を用意しておくと重宝する)。砕く際には、金槌で叩いて適当なサイズ(ウイスキーを飲むときに使うロックアイス程度)に必要な量だけを基本にして一度にたくさん砕かない。また、あまり細かくしないことが肝要だ。

 筆者は、必要ならメタノールを後で追加する予定で双方の“クリぬいてマス!”に1/4ほどのメタノールを注いでからドライアイスを投入した。すると盛んに発泡して冷気が溢れてくる。続いてメタノールが溢れ出ないように注意しながらドライアイスを徐々に追加した。ドライアイス投入後、数分でCPU温度は温度計の測定限界を超える勢いで下降。その時の“クリぬいてマス!MAXX”内に投入した寒剤温度はマイナス70℃より下回っていた。すぐさま保冷BOXの空いたスペースにドライアイスの塊を配置する(次々に手際よく作業しなければならないので結構忙しい)。特にメモリが冷えるように考慮した配置が好ましいのだが、筆者の場合は自作のシャーシを組み込んだ関係でドライアイスがシャーシに触れた途端に「ジィージィー」と音をたてて暴れ出した。こういったケースでは、ドライアイスを新聞紙などで包んで配置すると金属に触れてもたいして暴れない。



CPU温度は、デジタル温度計の測定限界を超えたまま。デフォルトのクロックで動作させる程度なら、温度測定範囲まで上昇してこない。一方、保冷BOXを密閉した状態だとメモリーの周囲温度は、マイナス18℃に低下しているので結露水による動作障害の心配はないだろう。ちなみにCPUソケット付近の周囲温度は、マイナス37℃だが、温度監視としてあまり意味を持たない気がした(やはりこの温度計でCPU温度を測定すべきだった)

 さて“クリぬいてマス!MAXX”内のドライアイス量に注意を払いながら電源を投入してみると、順調にPOSTが進み無難にWindows Meが起動した。ただ、今のところは、デフォルトの設定なので起動を確認しただけである。はたしてどこまでCPUが反応するのだろうか?これからが本番だ。動作確認はそこそこにしてCPUの動作限界を探るために、一旦、Windowsをシャットダウンする。そして倍率を10倍に変更。CPUコア電圧も+0.2VのスイッチをONにして昇圧しておいた。やはり保冷BOXを解放状態でCPUを動作させるとデフォルトの1.2GHzであってもそれなりにドライアイスが消耗する(CPU温度がマイナス50より上昇するほどではないが…)。すかさず双方の“クリぬいてマス!”にドライアイスを最大限追加して保冷BOXを密閉した。





●極低温環境におけるAthlon-1.2GHzの実力を試す

十分にドライアイスを詰め込み冷却効率を高めるために保冷BOXを密閉して最高動作クロックを見定めるテストを実施した

 保冷BOXを密閉した状態でしばらく放置し、各部の温度が安定した頃合いを見計らってシステムを再度起動させ、BIOSセットアップからFSB設定クロックを一気に150MHzとした。SAVE EXITからの再起動も順調でスルスルとWindowsがスタンバイ完了。1.5GHz動作の安定性を見定めるためにSuperπを起動して計算をスタートさせると結果は87秒後に「πの計算が終わりました」とメッセージボックスが表示された。計算中の各温度は、ほとんど変化せず安定している。最終的に10倍設定でOSが起動できたFSB設定クロックは、180MHzであったが、途中でドライアイスの補給とCPUコア電圧を+0.4Vとした。ちなみにDDR電圧は、+0.1Vアップの設定DIPスイッチをONにセットしたのみである。このテスト結果から実験に使用したAthlon1.2GHzのオーバークロック耐性は1.8GHzまでに最高動作クロックを迎える予測がついた。



ほぼ1.8GHzでWCPUID(H.Oda!氏作)がチェックできた

 次にCPUの動作倍率を9倍に戻してスピード重視の設定で動作限界を探ってみる。最初は、FSB設定クロック185MHzで様子を伺ってみたが、あっさり77秒の計算時間でSuperπの104万桁をクリアーした。調子に乗ってFSB設定クロックを5MHzステップで高くセットし結果的に195MHz(コアクロック1755MHz)で73秒をマーク。196MHzでは、計算ループ中盤でエラーとなった。が、このテスト中においてもCPU温度は、監視している温度計の計測範囲内に上昇してくる気配が感じられない(ドライアイスの補充を怠らなければの話だが)。なお、これまでに消費したドライアイスは、保冷BOXに配置した塊を含めて3Kgほど。クーラーBOXには、まだ2つの塊が残っている。ドライアイスの残量を確認しつつ、あと+5MHzでFSB設定クロックが200MHzに到達するのだと考えていた。やはり試しておきたい節目の周波数である。しかもコアクロックは、ちょうど1.8GHzでメモリーさえ耐えられたらOSの起動は先ほどの調べから大丈夫だろう。「WCPUIDならチェックできるかも」とすぐに試してみた。ところがメモリーの動作が怪しいのかすんなりとOSがスタンバイしてくれない。結局、DDR電圧を+0.6Vまでセットして計算上3.1Vでどうにか動き出した。その結果、Superπはスタート直後にエラーとなるもののWCPUIDの計測結果をビットマップファイルに納められた。



3D系のベンチマークを終了した直後のCPU温度。これまで測定限界温度を超越していたために一度も数値を表示しなかった温度計だがここにきて初めて変化した。CPUは、連続動作だと数分間でも猛烈に発熱する

 「じゃぁ、グラフィックについてどうなんだ?」と、今度は3D系のベンチマークを走らせてみることにした。これまでの空冷実験結果から推定するとSuperπがクリアーできるクロックより下回る可能性が高い。そこでFSB設定クロックを190MHzにセットしてテストを開始した。ところがベンチマークをスタートさせた直後、最初のステージが終了するまでにシステムがフリーズ。キーボード操作にも全く反応しない。仕方なく電源を再投入し更にクロックを下げ、185MHzで再度スタートしてみると今度は安定して走り出した。だが、中盤のステージ最中にCPU温度が変化した。これまで測定限界を超えた温度のために全く変化がなかった温度計の表示が徐々に上昇していく数値を示しているではないか。どうやら凄まじい勢いでCPUが発熱しているらしい。何とかベンチマークテストはクリアーできたが、CPU温度はマイナス46.7℃まで上昇した。ひょっとして…と気になって保冷BOXを開口してみると、ベンチマークテストを開始する直前に双方の“クリぬいてマス!”へ山盛りに補充したドライアイスは、先のCPU温度上昇を裏付けるようにこれまでの消耗ペースよりもスピードを増していた。意外だったのは、NorthBridgeに装着した“クリぬいてマス!Pro”のドライアイスが極端に消耗していることだ。おそらくはCPUだけでなくNorthBridgeも強烈に発熱していたものと推察できる。もしも、この次の極低温実験があるのなら、ここも温度監視の対象に加える必要性を感じた。なお、ベンチマークテストの結果は、次のページに掲載しているが、3DMark2000 Ver.1.1と3DMark2001については前回の記事で報告したデーターと比較している。また、N-Benchのテストにおいては、FSB設定クロック193MHzでデーターの取得に至ったことを報告しておこう。



3D系のベンチマークを開始する前に山盛りに補充したはずのドライアイスは、一度のテストを終えるとご覧の通りだ。CPUの発熱も激しいがNorth bridgeも強烈に発熱している疑いが濃い。次に機会があるならこちらの温度監視も必要だ

 最後に、本文冒頭で説明した準備内容は、多少面倒な部分もあった。しかし常温環境と異なり用意周到でなければ極低温環境での動作実験はそれなりに敷居が高い。場合によっては実験中断に追い込まれる落とし穴もあり、デバイスの破壊や折角用意したドライアイス等の寒剤が無駄になるケースも考えられる。ところがCPUの冷却に関しては、完成度の高い“クリぬいてマス!MAXX”や“クリぬいてマス!Pro”を用いることで一段敷居が下がった印象が強い。これなら安心して手軽にCPUを極低温環境へ誘えるだろう。





●ベンチマーク結果

【Superπ104万桁

【3DMark2000 Ver.1.1】

【3DMark2001】

【N-Bench】

※極低温冷却におけるオーバークロックテスト設定内容

【協力】

◎注意

メーカーが定めた周波数以上の動作は、CPUやメモリを含めてその他の関連機器を破損したり、寿命を縮める可能性があります。また、各電圧を高く設定する場合においても同様のリスクがあり、それらの結果によるいかなる損害についても、筆者およびデジタルバイヤー編集部、製造メーカー、販売店はその責を負いません。オーバークロック設定・改造・BIOSの書き替え等は自己の責任において行って下さい。なお、この記事中の内容は筆者の環境でテストした結果であり、記事中の結果を筆者およびデジタルバイヤー編集部が保証するものではありません。この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできませんので、あらかじめご了承ください。

【筆者プロフィール】鈴池 和久氏。ASCII DOS/V ISSUEではレスキュー日記でマザーボードの修復記事などを執筆。他PC改造に関する著書もある。マザーボードの回路解析やハンダごてを使ってオーバークロック改造を施すのが得意。オーバークロック歴は1995年登場のTritonチップセットの頃から。ハンドル名は「KAZ’」。大阪府在住1957年生まれ。




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