TualatinコアのPentiumIII-Sでオーバークロックだ(その2)〜白いマザー「ABIT CASPER」を使って〜
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2001年7月27日
最新のマザーボードでPentiumIII-Sをドライブしてオーバークロックテストの結果を報告するこの企画。今回は、奇抜なボードカラーとアロマティックな香りで話題を呼ぶAbit製マザーボード「ST6E」を試してみた。加えてPC166スペックのSDRAMも同時にテストする機会を得られたので、あわせてレポートしておこう。
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Abit製「ST6E」。ニックネームは「ABIT CASPER」 |
●マザーボードのニックネームは「キャスパー」
キャスパーといえば…オバケの赤ちゃん?が脳裏に浮かぶのだが、インターネットで検索してみると愛機(My PC)のニックネームにしている方も見受けられた。ただ、そのネーミングは、SFアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」に登場するスーパーコンピュータ“MAGI SYSTEM-3”のうちの1台で“Casper”(カスパールと読むらしい)というコンピュータの名前から由来している場合もあるようだ。
さて、今回のテストに使用するマザーボードは、ニックネームが「ABIT CASPER」と名付けられたAbit製「ST6E」でこちらのレポートでも詳しく紹介されている通り、今までに見たこともない真っ白なマザーボードだ。見た目に鮮やかなボードというだけでなく、確かに他の製品にはない独特の「におい」がこのマザーボードから漂ってくるのだが、香りの方は好みの問題で良い悪いは微妙。まぁ、個人的な意見としては乗用車にも新車の香りがあるのだからマザーボードに新板の香りがあっても良いだろうと思う。また「香りの強さ」については、鼻がなれてしまえばたいして気にならない程度だ。
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GMCH(North bridge)“i815E B-Step” |
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ICH2(South bridge)“FW82801BA” |
一方、肝心のスペックとしては、“Tualatin”をサポートする新製品であるが、前回テストしたASUSTeK製「TUSL2-C」とはチップセットが異なっている。この「ST6E」は“i815E B-Step”を搭載しており(TUSL2-Cはi815EP B-Step)チップセットにビデオ回路が組み込まれている関係で、とりあえずモニターを接続すればAGPスロットにビデオカードを装着しなくても画像を映し出すことが可能だ。ある意味で、今回、発売されたPentiumIII-Sの用途指向がサーバー向けなので、理にかなったチップセット選択と言えるかもしれない。しかし、スタンドアローンで組むとなると好みのビデオカードを使用したい場合も出てくるだろう。そんな時にはBIOSセットアップにてチップセットに内蔵されたビデオ回路を切り離し、ボード上のAGPスロットに装着したビデオカードに主導権を渡せるので心配はない。
次にオーバークロックに関する機能としてCPUコア電圧の操作が可能となっている。前回のレポートでは、「TUSL2-C」に“Tualatin”を組み合わせた場合に限ってその操作がサポートされていなかった。そのため、標準電圧の最高動作クロック結果は得られたもののコア電圧の推移に対してCPUがどこまで反応するのか調べられなかった点に若干の課題が残ったのは事実だ。そこで予告した通り、今回はコア電圧が操作可能な機能を利用し、電圧を少し高くセットした場合、CPUがどれだけ高クロックで動作するのか試してみようと思う。なお、「ST6E」に標準電圧1.45Vで動作する“Tualatin”をセットアップした場合、1.050Vから1.575Vまで0.025Vステップで操作可能だ。ただ、少々気落ちする点として「TUSL2-C」には装備されていたI/O電圧(3.3Vライン)の操作機能が「ST6E」で装備されていないところにもどかしさを感じた。
【表1】クロック比率選択表
| FSB設定クロック |
CPUクロック:メモリークロック:PCIクロック |
| 50MHz〜96MHz |
2:3:1 or 3:3:1 |
| 97MHz〜140MHz |
3:3:1 or 4:3:1 or 4:4:1 |
| 141MHz〜250MHz |
4:3:1 or 4:4:1 |
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その一方でFSB設定クロック操作は、50MHzから250MHzまで1MHzステップのセットが可能でCPUとメモリのスペックに応じたクロックシフトが実質4タイプ用意されている。これは、「TUSL2-C」にも共通するのだが、「ST6E」では、【表1】の通りになっており、許容される選択肢の中からセットが可能だ。なお、クロックジェネレータ回路にはRealtek製“RTM560-25”が採用されており、最高250MHzまでをサポートしている。念のために同社のホームページにアクセスしてみたが原稿執筆時点で“RTM560-25”に関する詳細なデーターはアップされていなかった。ただ、製品紹介のページでWindows上からFSB設定クロックを操作できる「CPUBOOST.EXE」が使えそうな記述を発見したので試してみたが、Ver1.06の「CPUBOOST.EXE」だと“RTM560-25”を捉えられなかった。今後のバージョンアップに期待したい。
●テスト環境とPC166サポートをうたうキワモノSDRAM
今回のテスト環境とベンチマークテストは、前回のテストで使用したパーツ群とベンチマークテストプログラムから特に変更はないのだが、実は、こちらのレポートで紹介されたSDRAMがどこまで動作するのか気になっていたところに上述のマザーボードと共に編集部からこのメモリーが届いた。筆者が考えていた思惑は完全に見抜かれていたようでAkiba2GO!編集部もなかなか鋭く、手回しがすこぶる調子よい。その調子の良さにあやかってグングンとFSB設定クロックが高くできればおもしろいのであるが、そうは問屋が卸さないのがオーバークロックの世界である。
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基板裏 |
【表2】玄人志向PC166 128MB SDRAMのテストパラメータ表
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テスト1 |
テスト2 |
テスト3 |
| FSB設定クロック |
133.3MHz |
147MHz |
153MHz |
| CAS Latency |
2 |
3 |
3 |
| RAS to CAS Delay |
2 |
2 |
3 |
| RAS Precharge Time |
2 |
2 |
3 |
| Cycle Time(Tras、Trc) |
5/7 |
7/9 |
7/9 |
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実際のところ、現時点で「ST6E」とこのメモリーのマッチングは、あまり好ましいとは言えない。まず、【表2】に示した設定内容を順次試してみたのだが、最初にセットした「テスト1」のパラメータだとWindowsのスタンバイまで到達するもののSuperπをスタートさせると序盤でエラーを吐いてしまった。このメモリーのスペックを玄人志向のホームページで改めて確認すると、CL=2で使用するなら100MHzとなっているので、既に「キワモノ」の領域に突入したセッティングになっている。しかし、同じ条件で手持ちのApacer製128MB PC100 CL2スペックのSDRAMだとSuperπ104万桁は計算完了となるので、あまりさい先の良い出だしとは言えない。
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FSB設定クロック172MHzでSuperπの104万桁が計算完了 |
次に「テスト2」のパラメータだが、CAS LatencyとCycle Timeを緩和させてみたところ、Windowsのスタンバイまで到達できるFSB設定クロックは147MHz以下となっていてどうも調子が出ない。最後に「テスト3」の内容までメモリーアクセススピードを緩和させてみたところ、FSB設定クロック153MHzであれば全てのベンチマークが完了できたが、これ以上の周波数だと先と同じようにSuperπでエラーとなってしまう結果となった。ところが、試しに全く異なる環境でこのメモリーをテストしてみた結果、「テスト3」のセッティングであればFSB設定クロック172MHzでSuperπの104万桁がクリアできた。その環境とは、チップセットにIntel 440BXを搭載するAbit製「BH6 Rev1.2」にPentiumIII-533EBを組み合わせたセットなのだが、これはSDRAMメモリーの耐性チェック用にと筆者が以前から持ち合わせていた言わばテストマシンである。しかし今となっては構成パーツとスピードは旧世代となってしまった感が強い。だが、たかだかSuperπの104万桁が計算完了した程度だとしても、この玄人志向のPC166スペックに偽りはなさそうだ。なお、参考までにWCPUIDならFSB設定クロック190MHzをチェックしている。
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玄人志向のPC166で190MHzのWCPUID(H.Oda!氏作)をチェック |
それでは、「ST6E」とPentiumIII-Sの組み合わせで調べたテスト課題とベンチマーク結果を順に述べておこう。調査した課題は、気になった点も含めた次の3課題である。
(1)“i815E B-Step”に備わったVGA能力
(2)「TUSL2-C」と勝負
(3)コア電圧アップでPentiumIII-Sの最高動作クロックを探る
まず、(1)の課題として(冒頭でも少しふれたが)「ST6E」に備わっているオンボードVGAがどの程度の能力を有しているのか少し気になって調べてみた。比較としては、このオーバークロック研究室の資材箱にATI RagePro Turbo(AGP)を見つけたので「ま、良い勝負かな?」と思いこのカードに決定。動作条件は、FSB設定クロックなどごく標準的な設定で、ビデオドライバーはオンボードVGA:4.13.01.2732(Intel)に対してRagePro Turbo:4.12.2632(ATI)としている。得られたテスト結果のうち、3Dベンチマークをみると近頃の3Dビデオカード性能の足もとにも及ばないが、数世代前のビデオカードよりは「マシ」と言ったところだろう(だが、双方共に3Dベンチマーク実行画面は見ていられないほど遅い)。一方、2D描画中心のSYSmark 2000だと数値的には、双方共に遜色のない結果であるうえにGeForce2 Ultraと比較しても極端な差はない。実際、ベンチマークテスト実行画面をみていても体感できるほどの遅さは感じられなくて快く動いていたと思う。結果的にオンボードVGAで3D描画となると荷が重いのは事実だが、オフィスアプリケーション等の用途であれば十分使えると言っても良いだろう。
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3D mark 2000 |
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3D mark 2001 |
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SYSmark2000 |
次に(2)は、「TUSL2-C」との勝負で、前回のテストで記録した「TUSL2-C」のベンチマーク数値と比較してみた。処理速度に関する動作条件は、【表4】に示した通り、前回と同じパラメーターをセットしたのでマザーボードの特性(チップセットやBIOSのデキ具合)がまともにぶつかり合う格好となっている。なお、ベンチマーク結果は次のページに掲載したが、「ST6E」でFSB設定クロック157MHzを動作させるとなると標準のコア電圧(1.450V)ではSuperπがクリアーできなかった。どうにかして動作条件をそろえようとセッティングをあれこれ変更してみたが、メモリークロックだけをシフトしてもエラーとなりCPUの外部クロックが157MHzである限り、計算を完了するループまで到達しないのである。結果的に【表4】の「コア電圧」欄に記載した通りの電圧まで上げて、ようやく同一条件の計算がクリアーできたのだが、“i815E B-Step”は“i815EP B-Step”と少々性格が異なっているような印象を持った。それと3DMark2000Ver1.1に至っては1.13GHz動作時の結果をみると「TUSL2-C」の数値に対して3DMarksのポイントが及ばず、若干控えた数値に甘んじている。ところが、FSB設定クロックを157MHzまで高めた条件では、逆に「TUSL2-C」を押さえてしまう逆転現象がみられた(これについては、「ST6E」で何度テストを実行してもグラフに示した数値を下回らなかった)。しかし3DMark2001に舞台を移すと4200ポイントの壁を突破できない結果となっており、「TUSL2-C」とほぼ互角か厳しく言えば、若干控えたポイントにとどまっている。また、SYSMark2000においても決定的なポイント差は認められず好バトルを展開していた。
【表4】ST6Eにセットしたパラメータ表
| マザーボード製品名 |
ST6E |
| コア電圧 |
1.45V |
1.50V |
| IO電圧(実測値) |
3.30V(固定) |
| FSB設定クロック |
133.3MHz |
157MHz |
| CPU倍率 |
8.5倍(固定) |
| CPUクロック |
1.13GHz |
1.33GHz |
| BIOSリビジョン |
1st リリースバージョン |
| メモリークロック |
133.3MHz |
157MHz |
| メモリー |
Apacer製PC100 CL2 128MB×1 |
| CAS Latency |
2 |
3 |
| RAS to CAS Delay |
2 |
2 |
| RAS Precharge Time |
2 |
2 |
| Cycle Time(Tras、Trc) |
5T、7T |
7T、9T |
| 室温 |
26℃ |
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最後に(3)でPentiumIII-S 1.13GHzの最高動作クロックについても調べてみた。結果としては室温が26℃であるにも関わらず、コア電圧を操作できる最高値(1.575V)にセットした場合、FSB設定クロック170MHz(CPU内部クロック1445MHz)でPOSTを完了し、Windowsを起動させてWCPUIDがチェックできた。無論、このメモリーや温度条件ではベンチマークテストが実行できるほど余裕はないのだが、コア電圧の高さに比例して動作クロックがアップする当然の傾向が確かめられたのは事実(過去には、コア電圧を操作してもさほど耐性がアップしないCPUがいくらでもあった)。ただし、このテストは、たった1個のPentiumIII-Sを調べただけに過ぎない。なので必ずしも全てのPentiumIII-Sにあてはまる特性だとは限らないのでご了解いただきたい。それと、コア電圧を規定値より高くして動作させると必ずと言ってよいほどCPUのオーバークロック耐性は時間と共に劣化する事を理論上だけでなく経験則からも忠告しておきたい。したがってコア電圧を高くセットするならばそれ相当の覚悟の上で操作してほしい。
※ご多分に漏れずこの最高動作クロック測定テスト終了後、コア電圧1.500V、FSB設定クロック157MHzでSuperπが計算完了に至らない事態に陥った。どうやら1.575Vは、0.13μmのプロセスルールで製造された“Tualatin”に「酷」な電圧設定だったのかも知れない。
ベンチマーク結果
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Superπ(104万桁) |
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3D mark 2000 |
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3D mark 2001 |
◎注意
メーカーが定めた周波数以上の動作は、CPUやメモリを含めてその他の関連機器を破損したり、寿命を縮める可能性があります。また、各電圧を高く設定する場合においても同様のリスクがあり、それらの結果によるいかなる損害についても、筆者およびデジタルバイヤー編集部、製造メーカー、販売店はその責を負いません。オーバークロック設定・改造・BIOSの書き替え等は自己の責任において行って下さい。なお、この記事中の内容は筆者の環境でテストした結果であり、記事中の結果を筆者およびデジタルバイヤー編集部が保証するものではありません。この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできませんので、あらかじめご了承ください。
【筆者プロフィール】鈴池 和久氏。ASCII DOS/V ISSUEではレスキュー日記でマザーボードの修復記事などを執筆。他PC改造に関する著書もある。マザーボードの回路解析やハンダごてを使ってオーバークロック改造を施すのが得意。オーバークロック歴は1995年登場のTritonチップセットの頃から。ハンドル名は「KAZ’」。大阪府在住1957年生まれ。
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