TualatinコアのPentiumIII-Sでオーバークロックだ(その1)
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2001年7月12日
かねてからその登場が期待されていた“Tualatin”がPentium III-Sと命名され発売された。0.13μmのプロセスルールで製造されたコアにどれだけの実力が秘められているのか非常に興味深いところだが、こちらのレビュー記事を読んでみると従来のPentium IIIに比較して圧倒的にパフォーマンスが高い。我がオーバークロック研究室では、早速、このCPUをオーバークロックで動作させてテストを開始した。
●Pentium III-Sについて
既にこのCPUについては、いろいろなところで言いつくされているが、Intelのホームページから入手した従来のPentiumIIIとPentiumIII-Sのデーターシートを読むと(実際に販売されているかどうか不明だが)従来のPentiumIIIに1.13GHzの製品データーが記載されていたので一部のデーターを【表1】に抜粋して比較してみた。両者は、同じクロックで動作するCPUであるにもかかわらずPentiumIII-Sの方が明らかに低い電圧で動作する(プロセスルールが異なるので当たり前なのだが)。したがって、消費電力も少ないし発熱温度も下がっている。さらに、セカンドキャッシュの容量が256KBから倍の512KBに増加している点は、スピードを追求する側として大歓迎だ。
【表1】
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PentiumIII-1.13GHz |
PentiumIII-S-1.13GHz |
| パッケージタイプ |
FC-PGA2 |
FC-PGA2 |
| プロセスルール |
0.18μm |
0.13μm |
| CPUID |
068A |
06B1 |
| コア電圧 |
1.75V |
1.45V |
| Thermal Design Power |
37.5W |
27.9W |
| Thermal Spec |
72℃ |
69℃ |
| セカンドキャッシュ |
256KB |
512KB |
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「歓迎」できる点と言えば(PentiumIII-Sに限ったことではないのだが)パッケージがFC-PGA2となってコアにIHS(Integrated Heat Spreader)というヒートシンクスプレッダが装着されたことだ。コア欠け防止だけでなくヒートシンクとコアの密着性が安定しCPUを破壊してしまう事故も減少するだろう。それと冷却の仕掛けにも選択肢が増して冷やしやすい。例えば、ペルチェ冷却を実施するとしても、コアに密着したヒートシンクスプレッダがあるのとないのでは、大きな違いである。
ところが良いことばかりとは限らない。言うまでもなくこのPentiumIII-Sを動作させるには、対応するマザーボードが必要になってくる。それゆえCPUだけの予算にとどまらず、マザーボードをも新調する覚悟が必要でコストの面においては、財布を圧迫するかも知れないのだ。単純にCPUだけの価格をみてもこちらのレポートから実売5万円前後のPentiumIII-S-1.13GHzは、128MB RDRAM同梱のPentium 4-1.7GHz、あるいは256MB RDRAM同梱のPentium 4-1.5GHz+オツリと互角の価格帯に属してしまうのだから大変悩ましいところだ。
●ASUSTeK TUSL2-C
今後のオーバークロック研究室の予定としては、各社の“Tualatin”対応マザーボードでPentium III-Sを動作させてみるつもりだが、最初にテストするマザーボードは、ASUSTeK製「TUSL2-C」だ。今回入手したTUSL2-Cは、サウンド機能を搭載していないモデルで基本的なスペックはこちらのレポートを参照してほしい。気になるオーバークロック機能だがFSB設定クロックは、BIOSセットアップからアプローチが可能だ。選択肢は、133MHzベースのCPUとメモリーなら135MHzから160MHzまで1MHzステップとなっており、160MHzの次は166MHzの最高周波数がセットできる。なお、100MHzベースでセットするなら102MHzから132MHzまで1MHzステップのセットが可能だ。また、Celeronをもサポートする関係上、66MHzベースの設定も存在している。変則的な設定も可能で133MHzベースのCPUとPC100メモリーの組み合わせにも対応しており、この場合の最高周波数は、CPU:216MHz、 メモリ:162MHzにまで及ぶ。つぎにコア電圧だがマザーボードに同梱されたマニュアルによると“Tualatin”を実装した場合は電圧の操作はできない旨の記述があり、実際にBIOSセットアップ画面にその項目が見あたらない(従来のPentiumIIIなら、操作可能なようだ)。一方、メモリー電圧に直接影響するVIO設定は、3.3V、3.4V、3.6Vのいずれかがジャンパーでセット可能である(デフォルトは、3.4V)。その他には、謎のシルク印刷があったのだが、筆者が探した限りでは、ボード上に該当するジャンパポストを発見できなかった。
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謎のシルク印刷(その1) |
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謎のシルク印刷(その2) |
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BIOS画面(FSB設定クロック216MHz) |
●テスト環境
今回のテストから、過去のテストで活用していたパーツの一部を変更し新たなテスト環境を構築したので紹介しておこう。まず、OSをこれまでのWindows98 Second EditionからWindows Meに変更した。当初、Windows2000に変える予定だったが、【表2】のパーツとTUSL2-Cで組んだPC(当然CPUはPentiumIII-S-1.13GHz)にWindows 2000をインストールした後、予定したベンチマークテストの内でSYSmark 2000がどうもうまく実行できないトラブルに見まわれた。加えて3D mark 2000 Ver1.1と3D mark 2001もビデオドライバに左右されて不安定な一面を見せるのだ。ところがWindows Meだと安定しており、一連のテストが無難にこなせたことからWindows 2000をあきらめてWindows Meに決定した経緯がある。次ぎにビデオカードをこれまでのGeForce2 MX 32MBからGeForce2 Ultra DDR-64MBを搭載するELSA GLADIACに変更してアップグレードしている。今のところ、このビデオカードに改造は施しておらず、コアやメモリークロックに変更はない。その他のパーツに変更はないが、次の機会にでもHDDを新調したいと考えている。余談ではあるが筆者はこちらのレポートが気になって虎視眈々と狙っているのだが…。なお、メモリは、手持ちのSDRAMの中からマッチングの良かった1枚を選出して装着した。それは、Apacer製PC100 CL2スペックで容量は128MBである。
【表2】
| OS |
Windows Me |
| DirectX |
Ver.8.0 |
| ビデオ |
ELSA GLADIAC ULTRA(GeForce2Ultra DDR64MB) |
| ドライバー |
Ver4.13.01.1240 |
| 解像度 |
1024×768ドット/32bitカラー |
| HDD |
IBM DTLA-307020 |
| ヒートシンク |
KANIE Hedgehog-238M |
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一方、比較対照として従来のPentium IIIを用意するのでは、もう結果が見え見えなので、あえてAthlonを準備した(ただし、先頃に発売されたAthlon MPではない普通のAthlon-1.33GHzである)。このCPUであれば、Pentium III-Sと同じ8.5倍速に操作可能なので条件が揃うのだが、メモリはSDRAMとDDR SDRAMで異なってしまう。このあたりは、セカンドキャッシュの容量差もあってどういう結果が出るか興味深いところだ。なお、ベンチマークテストのオーダーは、これまでと同様に【表3】の通りとして順次計測した。また、システムに設定したパラメータ内容は【表4】を参照してほしい。ベンチマーク結果は、次のページに示しているが、前出のレビュー記事に掲載されたベンチマーク結果のうち、Pentium 4-1.8GHzと比較すると多少の条件違いがあるものの、おもしろい結果となっている。特にSuperπの計算速度において1.33GHzにオーバークロックしたPentium III-Sは、Pentium 4-1.8GHzの98秒を凌いでしまうのだから素質は良いだろう。ところが、同一クロックで動作するAthlonとなるとなかなか手強いようで、Superπはほぼ互角か、厳しく言えば若干下回っている。3Dベンチも同じ傾向を示しているが唯一、SYSmark 2000のスコアーで高得点をマークしているあたりは、PentiumIII-Sの肩書き(サーバー用途向けCPU)通りなのかも知れない。
この他に今回のテストで気づいた点としては、FSB設定クロックを順次高くして計測する中で158MHzの時点においてSuperπが最初にエラーを吐いた。これまでのAthlonマシンだと先にビデオ系ベンチマークがアゴを出す格好だったが、このPentium III-Sマシンにおいては、勝手が違って少しだけ(FSB設定クロックで2MHzほどだが)余裕があるようだ(念のためにビデオカードをGeForce2 MXに取りかえてテストしてみたがその傾向は変わらなかった)。
最後にこのPentium III-Sが動作する最高クロックを調べてみたのだが、FSB設定クロック161MHz(CPU内部クロック1.36GHz)より高い周波数設定だとWindowsのスタンバイまでたどりつけなかった。これは、メモリークロックを下げても同じ結果だったのでほぼCPUの限界と考えてよいだろう。ただ、コア電圧を操作させてもらえないところに少々の不満を感じたのだが、標準電圧で20%ほどのオーバークロック耐性を示すなら悪くはないだろう。もしも、コア電圧が操作可能なマザーボードを今後テストする機会があれば試してみよう。
【表3】
| Superπ |
104万桁 |
| 3D mark 2000 Ver1.1 |
3D marks、CPU 3D marks |
| 3D mark 2001 |
3D marks |
| SYSmark 2000 |
Internet Content Creation、Office Productivity |
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【表4】
| マザーボード名 |
TUSL2-C |
EP-8K7A |
| コア電圧 |
1.45V |
1.75V |
| IO電圧・DDR電圧 |
3.40V |
2.8V |
| FSB設定クロック |
133.3MHz |
156MHz |
156MHz |
| CPU倍率 |
8.5倍(固定) |
8.5倍 |
| CPUクロック |
1.13GHz |
1.33GHz |
1.33GHz |
| BIOSリビジョン |
1007 |
1060 |
| メモリクロック |
133.3MHz |
157MHz |
157MHz |
| メモリ |
Apacer製PC100 CL2 128MB×1 |
PC2100 CL=2.5 128MB(Crucial Technology) |
| CAS Latency |
2 |
3 |
2.5 |
| RAS to CAS Delay |
2 |
2 |
2 |
| RAS Precharge Time |
2 |
2 |
2 |
| Cycle Time(Tras、Trc) |
5T、7T |
7T、9T |
7T、9T |
| Super Bypass Mode |
− |
− |
Enabled |
| 室温 |
25℃ |
|
26℃ |
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●ベンチマーク結果
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Superπ(104万桁) |
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3D mark 2000 |
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3D mark 2001 |
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SYSmark 2000 |
◎注意
メーカーが定めた周波数以上の動作は、CPUやメモリを含めてその他の関連機器を破損したり、寿命を縮める可能性があります。また、各電圧を高く設定する場合においても同様のリスクがあり、それらの結果によるいかなる損害についても、筆者およびデジタルバイヤー編集部、製造メーカー、販売店はその責を負いません。オーバークロック設定・改造・BIOSの書き替え等は自己の責任において行って下さい。なお、この記事中の内容は筆者の環境でテストした結果であり、記事中の結果を筆者およびデジタルバイヤー編集部が保証するものではありません。この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできませんので、あらかじめご了承ください。
【筆者プロフィール】鈴池 和久氏。ASCII DOS/V ISSUEではレスキュー日記でマザーボードの修復記事などを執筆。他PC改造に関する著書もある。マザーボードの回路解析やハンダごてを使ってオーバークロック改造を施すのが得意。オーバークロック歴は1995年登場のTritonチップセットの頃から。ハンドル名は「KAZ’」。大阪府在住1957年生まれ。
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