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マザーボードのオーバークロック機能を徹底調査する(その2)


2001年5月23日

 オーバークロック研究室の第4回は、前回に引き続いて、選抜したSocketAマザーボード3枚(「A7A266」「AD11」「K7T266 Pro」)の中から「オーバークロックに適したマザーボードは、どれか?」の答えを求め、3番目の選択要素となる「オーバークロック耐性」について調べてみた。また、第1回の文中でお約束したメモリのオーバークロック耐性についても興味深いデーターが得られたので報告しておこう。

5枚のDDR SDRAMをチェックする!!

 さて、前回のお話では、それぞれのマザーボードに対してオーバークロック機能の充実度や標準的な処理速度を調べた。そして、ある程度の絞りを示した訳だが、今回はどのマザーボードでどこまでオーバークロックが可能なのか調査している。ただ、前回の冒頭でも少し触れたが、オーバークロック動作におけるこの種のテストでは、単一のメモリだけを使ってテストすると往々にして判断を誤ってしまいがちだ。しかし、だからと言って膨大な数量のメモリを使ったテストを行うのも不可能であり、今回は5枚のDDRメモリを使ってテストに臨んだ。まずは、そのテスト状況と結果から報告し、その後でマザーボードの最終選考結果をみていただくとしよう。

 それでは、第1回の文中で簡単に紹介した5枚のDDRメモリについて、特徴などをもう少し詳しく説明しておこう。

VIA製PC2100(CL=2)

 この製品は、こちらのリポートでも紹介されているようにマザーボードにバンドルされていた経歴を持ち、(編集部の情報から)秋葉原のショップだけでなく筆者が日本橋の各ショップを見て回った限りにおいても、複数のショップで確認することができたモジュールだ(最近でもその姿は消滅していないようだ)。特徴は、なんと言ってもシールに“PC2100 CL=2”と記載されている点。その性能の高さが期待された。ただ、一時期、“PC2100 CL=2.5”だとするバリデーション情報もあって混迷を極めたのだが、先ほどメーカーのホームページで調べてみるとDDR Module Part#“NT128D64S88A0G-7K”は、“PC2100 CL=2”となっている。なお、基板サイドA(1ピン〜92ピン)に8枚のメモリチップが実装されており、基板サイドB(93ピン〜184ピン側)にメモリチップを実装できる空きランドは用意されていない。一方、メモリチップに注目してみるとNanya製NT5DS16M8AT-7Kとなっており、データーシートでは、CAS Latenc:2 Maximum Operating Frequency:133MHzと記載されていた。これは、今回用意できたDDRメモリの中で(スペックとしては)唯一の最速チップである。

Apacer製PC2100(CL=2.5)

 1枚の写真では、「メモリチップが片面に4枚だけの実装か?」と思われるかも知れないが、実は、その裏面にも4枚のチップが実装されており、他のモジュールとそのスタイルが異なっている。なお、SPDチップも基板サイドBに配置されているので心配は無用だが、空きランドのようすからしても基板は、256MB用を転用しているのだろう。さて、メモリチップをみるとSamsung製K4H280838B-TCB0が実装されており、こちらは、CL=2.5/133MHzのスペックである。ただ、筆者が購入したショップに現在の流通状況と実装されているチップの品番を確かめたところ、「順調に流通はしているが、必ず同じ銘柄のチップが実装されているとは限らない」とのことであった。

Transcend製PC2100(CL=2.5)

 今回用意したメモリの中で唯一の箱物、つまり、販売形態がバルクではなくてパッケージで販売されている製品だ。したがって通常は、箱を開けるまで、その中身を確かめることはほぼ不可能だろう(ショップによっては、サンプルとしてモジュールを展示していることもあるがスペックは同じでも在庫品とチップの銘柄が同じとは限らない)。だが、興味深い点として、基板はメモリベンダーの威信をかけてオリジナルの設計や、リファレンスデザインからアレンジしている場合があり、このモジュールもそう言う意味では他の製品と一線を引いている。写真では、片面に8枚のメモリが実装されているが、裏面に空きランドが存在しており、こちらも256MB用にデザインされた基板だと思われる。また、メモリチップは、先のApacer製PC2100同様、Samsung製K4H280838B-TCB0が実装されており、両者の性能に違いがあれば、面白いと思った。

Crucial Technology製PC2100(CL=2.5)

 大手メモリメーカー“Micron”がバックに控えるCrucial Technology製DDRモジュールで、こちらはPC2100(CL=2.5)をサポートした製品である。基板のデザインは、VIA製PC2100と比較して外観から大きな違いを発見できなかった。当然、メモリチップはMicron製のMT46V16M8-75Aを片面に8枚実装しており、Samsung製K4H280838B-TCB0と同等のCL=2.5/133MHzスペックとなっている。入手する方法は、ショップを訪ね歩いても良いが、インターネットの通信販売でも取り扱っているショップがあるようだ(Crucial Technology製と表記しているならほぼ確実だろう)。あるいは、Crucial Technologyに直接オーダーして米国から個人輸入という手もある。

Crucial Technology製PC1600(CL=2)

 こちらも、上記のモジュール同様にCrucial Technology製であるが、PC1600 CL=2をサポートする製品で、実装されているメモリチップが異なっている。データーシートを見ると、スペックとしてはCL=2/100MHzであり、CL=2.5にすれば125MHzまでとなっている。ただ、噂によればこのモジュールでもそこそこのオーバークロック耐性があり、モノによっては驚異的なクロックで動作するそうでオーバークロッカーが重宝しているらしい。また、本来は一般に入手困難なES品(エンジニアサンプル)で64MBの赤いモジュールも存在するようで、高クロック動作のベンチマークテストに好結果をもたらしていると言う。



●DDR SDRAMのオーバークロックテスト

 さっそく、どのメモリがどこまでオーバークロックに耐えられるのかテストしてみた。このテストにおいては、1枚のマザーボードだけを使用するのではなく、現在テスト中のマザーボード3枚で調査している。

 まずは、テストに用いた環境とベンチマークテストだが、マザーボードとメモリを除いたリストを【表1】に書き出した。この中でCPUをAthlon-1.33GHzとしているが、これまでのテスト通りにCPU倍率を9倍で試す上でFSB設定クロックがたとえ153MHzを超えても許容できるようにしている(手持ちのAthlon-1.2GHzは、152MHzが9倍で使用できる最高のFSB設定クロック)。そして先ほど紹介したメモリのリストを【表2】に記載した(メモリに番号をつけてあるので注意してほしい)。
 次にメモリテストを実施するうえで各マザーボードからセットしたパラメータは【表3】に示したが、前回の「マザーボードの処理速度を調べてみる」の項で設定した過酷な条件から、若干ではあるが緩和して実際のオーバークロック・セッティングを想定してみた。結果は、3種のベンチマークテストが全て終了できたFSB設定クロックのうちで最も高い周波数を記録して【表4】に集計した。

【表1】テスト環境とベンチマークリスト

■テスト環境
CPU Athlon-1.33GHz(266)
ビデオカード GeForce2 MX 32MB
HDD IBM DTLA-307020
OS Windows 98 SE
DirectX Ver.8.0
解像度 1024×768ドット/16bitカラー
■ベンチマークプログラム
Superπ 104万桁
3D mark 2000 Ver1.1 3D marks、CPU 3D marks
3D mark 2001 3D marks

【表2】テストしたメモリの一覧表

メモリー番号 ブランド スペック 容量
DDR1 VIA PC2100 CL=2 128MB
DDR2 Apacer PC2100 CL=2.5 128MB
DDR3 Transcend PC2100 CL=2.5 128MB
DDR4 Crucial Technology PC2100 CL=2.5 128MB
DDR5 Crucial Technology PC1600 CL=2 128MB

【表3】メモリセッテングリスト

■各マザーボードに設定したパラメータ内容
マザーボード製品名 A7A266 AD11 K7T266 Pro
コア電圧 1.80V
DDR電圧 2.60V 2.65V 2.7V
CPU倍率 9.0倍
BIOSリビジョン 1005B3 ABA42 V1.0B12
CAS Latency 2
RAS to CAS Delay 2
RAS Precharge Time 2
Cycle Time(Tras、Trc) 7
Super Bypass Mode Enabled
SDRAM 1T Command Enabled
System Performance Ultra
SDRAM MA/CMD Lead off timing Fast


【表4】メモリ耐性のテスト結果

表中の★印は動作した最高クロックを示す

 さて、テスト結果を見ると「これほどバラつきがあるのか?」と言った具合で、使用するマザーボードによってメモリの耐性はコロコロ変化している。つまりテスト中の感想も含めて「このメモリが一番よかった」なんてとても特定できない有様である。

 それでも分析してみるとそれぞれのメモリに気性というか性格があっておもしろい。例えば、Nanyaチップを実装したVIA製PC2100は、AD11で出せる最高周波数であっても動作するが、A7A266にもってくると全く冴えないのである。一方、MicronチップのCrucial Technology製PC2100は、A7A266を少々苦手とするが、AD11とK7T266 Proにおいては高い耐性を示している。逆に同PC1600は、その苦手なA7A266で上位規格のチップ性能を超えてしまうのだから話しがややこしい。残りのSamsungチップを実装したTranscend製PC2100もA7A266で他のメモリに比較して高い耐性を示すもののAD11やK7T266 Proでは、元気がない。ところがApacer製PC2100は、飛び抜けた耐性を示さないが手堅く平均的な数値を出した唯一のメモリだと見てとれる。何というか、サーキット(マザーボード)を転戦するカーレースの3戦リザルトをみているようだ。

 この結果から言えるのは、マザーボードとのマッチングによってメモリのオーバークロック耐性は変化するとううことだ。つまり、一方のマザーボードで高クロック動作するメモリだとしても、他方のマザーボードでは同じクロックで動作するとは限らないし、そのまた逆も考えられる。したがって使用環境が変わる直前のオーバークロック耐性データーは、参考程度にしか過ぎないということを改めて実感した。

 では、(本稿の主旨ではないが)「どれが買いなのか?」という問いがあったとするならば、それに対する答えは、もしかすると「今のところどれでもない」のかも知れない。今後の動向にも左右されるが、規格としてはPC2100の上位となるPC2400(PC300) 150MHz 2.4GB/sec やPC2700(PC333) 166MHz 2.7GB/secといたクラスが定められており、順次リリースされることだろう。最近の情報では、このようなメモリも発売されて(歩留まりは良くないと思われるが)選別できる“アタリ”のメモリチップが存在することを臭わせている。したがってマザーボード(チップセット)が悲鳴を上げるほどのオーバークロックで動作するメモリは、PC2100やPC1600ではないように思うからである。ただ、現状の実売価格をみるとSDRAMより上のパフォーマンスをみせるDDR SDRAMの価格は決して高くはない。オーバークロックを別にすれば、ある意味(SDRAMに投資するより)で今が買い時と考えてもいいだろう。



DDR SDRAMとマザーボードの組み合わせによるテスト

 今度は、視点をマザーボードに移してオーバークロックテストを実施してみた。ところでマザーボード(チップセット)のオーバークロック耐性を明確に調べるならば、テストするチップセットの限界より、明らかに高いクロックで動作保証されたメモリ(例えばPC2700スペックのモジュール等)を用いてテストすれば客観的な結果が得られる。ところが、当オーバークロック研究室にそのようなメモリは、はっきり言って「ない」。現実的にオーバークロックシステムを構築する場合、やはり市販のメモリを使用するわけであり、先のDDRメモリテストで使用した5枚のメモリにもう一度登場してもらった。そして、今度は、メモリのアクセススピードを極力緩和させておき、マザーボードがどこまで高いクロックで動作するのかを調べてみたのだ(多少の無理があるかと思われるが、その結果をもとにマザーボードのオーバークロック耐性の優劣を判断した)。なお、テスト環境とベンチマークテストも、先のDDRメモリテストで使用したデバイス等をそのまま流用している。ただ、それぞれのマザーボードに設定したパラメータは、【表5】のように変更して設定した。

 では、テスト結果だが、数値的には【表6】を参照していただくとしてテスト中の印象を述べておこう。
 まず、A7A266については、最高150MHzのFSB設定クロックで動作した。しかし、不思議なことにメモリテストで最もマッチングが良かろうと思われたCrucial Technology製のPC1600メモリでは、高くなるどころか動作する限界クロックが逆に下がってしまった。これについては筆者の知識で明確な説明ができない。それとVIA製PC2100の組み合わせでもFSB設定クロックを高くできなかった。とかくオーバークロックに「謎」は、つきものだが、また新たな経験を重ねる結果となった。次ぎにAD11だが、全てのメモリでFSB設定クロック150MHzが動作した。明らかに本来のスペックを上回る耐性が存在していると確信できたのだが、せっかく持ち合わせたオーバークロック耐性も、クロックジェネレータの仕様から、限界を調査できず誠に心残りな結果となっている。もしも、機会があるならクロックジェネレーター回路を改造して、どれだけ高い周波数で動作するのか調査したいところだ。最後にテストしたK7T266 Proでは、先のメモリテストで全くふるわなかったSamsung製のメモリを実装したモジュールが明らかに高いクロックで動作した。この時、改めてメモリのアクセス設定を厳しくし再度調査したのだが、やはり先のテスト結果と同じ耐性を示したので間違いはなさそうだ。それと、Crucial Technology製のPC2100は、K7T266 ProのBIOSリビジョンをアップデートしているため、第1回のお話で冒険的セッティングにチャレンジした時(BIOSはV1.0)のように159MHzまで届かなかった。ともかく、FSB設定クロック160MHzで動作した事実から、K7T266 Proのオーバークロック耐性は暫定的にトップとなった。

【表5】マザーボードセッテングリスト

マザーボード製品名 A7A266 AD11 K7T266 Pro
コア電圧 1.80V
DDR電圧 2.60V 2.65V 2.7V
CPU倍率 8.0倍
BIOSリビジョン 1005B3 ABA42 V1.0B12
CAS Latency 2.5
RAS to CAS Delay 3
RAS Precharge Time 3
Cycle Time(Tras、Trc) 7
Super Bypass Mode Enabled
SDRAM 1T Command Disabled
System Performance Fast
SDRAM MA/CMD Lead off timing Normal


【表6】テスト結果

表中の★印は動作した最高クロックを示す

 それでは、これまでのテスト結果を総合して最終的に「オーバークロックに適したマザーボードはどれか?」を【表7】に★印で得点を入れてみた。まず、“オーバークロック機能の充実度”は、非改造でCPU倍率、コア電圧、DDR電圧、FSB設定クロックの設定が可能であり、その機能の全てをBIOSセットアップから操作できるK7T266 Proが最も充実していると評価した(FSB設定クロックについては、ベーターBIOSであるが、最高164MHzまで拡張されている)。次の“処理速度の速さ”は、テストデーターが示した通り、客観的にAD11が群を抜いて最も速いマザーボードである。最後の“オーバークロック耐性”については、テストデータを元に評価したが、ユーザースキルに応じてAD11がK7T266 Proと同等あるいは逆転する可能性を否定しない。つまり、もしもAD11のクロックジェネレータ回路を改造できるユーザーならば、K7T266 Proがマークした160MHzに到達、または超越するかも知れないからだ。しかし、現状だとPLL-ICの仕様がリミッターとなって本来のオーバークロック耐性が出せない格好になっている事がある意味でマイナス評価とした。したがって手間を省いてオーバークロックを楽しむなら、K7T266 Proがお手軽であり、とことんスピードを追求するハードなオーバークロックを目的とする場合は、AD11がその素材に適していると思う。ただし、そのために必要な手間やスキルは、入門者にとって少々荷が重いかも知れない。また、今回は、3枚のマザーボードに限った話しであり、続々とアナウンスされる新製品のスペックにこれらを上回る製品が登場する可能性は高い訳である。結局、その時折りで「オーバークロックに適したマザーボードはどれか?」の答えは更新されて当然と考えており、オーバークロック研究室の課題は尽きることがないだろう...と、締めくくる間もなく編集部から「新発売のマザーボードを送る」と連絡が入ってきたのである。どうやら、本当に尽きることがなさそうだ。

【表7】総合評価

- オーバークロック機能の充実度 処理速度の速さ オーバークロック耐性
A7A266 ★★ ★★★ ★★★★
AD11 ★★★ ★★★★★ ★★★★
K7T266 Pro ★★★★★ ★★★★ ★★★★★

◎注意

メーカーが定めた周波数以上の動作は、CPUやメモリを含めてその他の関連機器を破損したり、寿命を縮める可能性があります。また、ベータ版BIOSの使用を含めてBIOSの更新に失敗した場合など、その結果によるいかなる損害についても、筆者およびデジタルバイヤー編集部、製造メーカー、販売店はその責を負いません。オーバークロック設定・改造・BIOSの書き替え等は自己の責任において行って下さい。なお、この記事中の内容は筆者の環境でテストした結果であり、記事中の結果を筆者およびデジタルバイヤー編集部が保証するものではありません。この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできませんので、あらかじめご了承ください。

【筆者プロフィール】鈴池 和久氏。ASCII DOS/V ISSUEではレスキュー日記でマザーボードの修復記事などを執筆。他PC改造に関する著書もある。マザーボードの回路解析やハンダごてを使ってオーバークロック改造を施すのが得意。オーバークロック歴は1995年登場のTritonチップセットの頃から。ハンドル名は「KAZ’」。大阪府在住1957年生まれ。




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