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オーバークロックに適したCPUクーラーはどれか?


2001年5月1日

3種類のCPUクーラーを用意

 今回は「Athlon-1.2GHzのオーバークロック性能を試す」の冒頭でお約束したCPUクーラーの性能比較レポートをお伝えしよう。まず、ひと言で“CPUクーラー”と言っても多種多様な製品が販売されており、正直なところ「どれがいいの?」と聞かれても返答に困るほどである。例えば「静かなファンが…」と、ある程度のニーズが決まっていれば選択肢も限られてくるわけで、このレポートでは、入手性のいい市販のCPUクーラーのなかから「オーバークロックを使用目的に」としてフィルターを通し、製品を選抜しよう考えた(時期によっては、入手困難なものもあるかもしれないが…)。

店頭

 ところが、それでも絞りきれない候補が各ショップの店内に並んでおり、筆者一人の力量ではとてもこなせそうにないとすぐに察した。そこで「ヒートシンクの材質や構造が異なる製品」と更に2次フィルターを追加して絞り込んだのが、前回のお話で紹介した次の3製品である。改めて紹介しておくとヒートシンクの素材が全てアルミでできたカノープス製「Firebird R7」、そして銅とアルミのハイブリッド構造を採用したSNE(Tai Sol Electronics)製「CGK761CU-BIG」、最後に素材全てが銅でつくられたカニエ製「Hedgehog-238M」である。それでは、テストを始める前にそれぞれの製品の特徴を私感的ではあるが述べておこう。なお、主な製品仕様は【表1】に書き出した。



【表1】CPUクーラー仕様一覧表

メーカー名 カノープス SNE(Tai Sol Electronics) カニエ製
製品名 Firebird R7 CGK761CU-BIG Hedgehog-238M
実売価格 約5000円 約7000円 約4000円
ヒートシンクサイズ(実測値) 60×77×33mm 60×80×46mm 60×57×40mm
ヒートシンク材質 アルミ 銅&アルミ
ファンサイズ 60×60×15mm 60×60×20mm 60×60×25mm
ファン回転数 4500rpm 4400rpm 5000rpm
回転数検出パルス数 3Pulse/Revolutions 2Pulse/Revolutions 2Pulse/Revolutions
付属品 熱伝導グリス、脱着工具 熱伝導シート

●カノープス製「Firebird R7」

 第1回のお話で実施したテストから本製品を使用しているわけだが、選考理由は前話の中で述べた通りCPUクーラーの脱着作業に際して最も安全だと判断したからである。

FirbirdR7

 これまでに写真撮影など、何度かその着脱作業を余儀なくされたが、CPUソケットのツメにはめ込んだヒートシンクを固定する金具(CanopusはIron Clawと呼ぶ)は、写真1のように製品同梱の専用工具を固定金具に挿入し、少し押さえ込みながら工具を若干斜めに倒すことでスムーズに外せた。また、固定時も同様に工具を使用することで比較的安心して装着できる親切な設計となっている。とかくオーバークロックにCPUの脱着は付きものなのでこういう機能はありがたい。一方、ヒートシンク形状は、従来のものと異なり、これならファンが吹き付ける気流が底面で反射して渦を発生するというロスも比較的最小限におさえられて、スムーズにフィンの間を通過していくように思われるデザインとなっている。これで期待する冷却性能を有するなら脱着作業性の良さとあわせてオーバークロック向けスタンダードCPUクーラーとして推奨できるだろう。




●SNE(Tai Sol Electronics)製「CGK761CU-BIG」

 この製品は、用意した製品の中で実売価格が最も高価である。だが、ヒートシンクのつくりを観察し、素人考えであってもその製造プロセスを想像すれば、高価な理由も自ずと理解できるだろう。

CGK761CU

 説明するまでもないと思うが写真は、CPUに接する面を撮影しており、コアに接する部分には、熱伝導率がアルミより優れている銅を採用している。また、伝わってきた熱を放散するフィンは、銅より軽量なアルミをその材質にしているわけだ。そして、双方の利点を巧みに融合させた構造となっている。なお、ファンの風向は、ヒートシンクに吹き付ける方向に取りつけられている。さらにヒートシンクを固定する金具に注目するとCPUソケットのツメ(AMDでは、Lugと呼ぶ。直訳すると「取っ手」)6カ所すべてに引っかける仕様であり、ヒートシンクをCPU方向に3点で押さえ込んでいる。そのホールド性は、優れていると思われるが、いざCPUクーラーを取り外すとなると苦労しそうに思えた。




●カニエ製「Hedgehog-238M」

 特筆できる点は、その価格である。従来、素材が「銅」=「高価」と言う公式が当たり前だったが、プライスカードをみて「え?!」と驚いたのは、筆者だけではないと思う。「7,000円いや8,000円ほどの価格が付けられていても、おかしくはないハズだ」と疑問を抱いたのだが商品を拝見してその理由がすぐに推察できた。

Fedgehog

 早い話が銅の塊から切り出すのではなく「ツーピース構造」とでも言えばいいのだろうか? 写真を見ればご理解いただけると思うが、CPUのコアと接するベース部分はプレート状であり、片面にフィンが立ち並ぶ複数の溝が引いてある。一方、フィンは、銅板をくし状に打ち抜いた一つのパーツで、先のプレートの溝に一枚づつはめ込んで圧着固定する技法から成り立っているようだ。なお、ファンは、ヒートシンクにスカートを装着しておいて空気を吸い出す方向に固定する。また、ヒートシンクを固定する金具のテンションは十分に強力だ。したがってCPUクーラー脱着時のコア欠け事故には十分注意が必要だろう。それにしても良心的な価格設定だと思うのだが、果たしてその性能は如何に...





●CPU温度の測定方法

 さて、今回のCPUクーラー性能比較におけるテストは、ズバリ、CPUの温度を直接測定する。測定に際しては、以下の機材と方法によって実施したので説明しておこう。まず、CPUの温度は、CPU本体のピン側に温度センサー(サーミスター)を密着させて測定する。【写真1】を見てほしい。ほぼ、ゴマ粒大に等しいサイズのサーミスタを用意した。これを【写真2】の温度計に接続してCPU温度を測定するわけだが、双方を接続する信号線とサーミスタは、【写真3】のように、あらかじめCPUソケットとマザーボードの間に耐熱電線(0.26mm)を通しておいてサーミスタをハンダづけした(信号線の反対側には、温度計に接続するコネクタが既に圧着されていたので)。そして【写真4】に示すように、CPUソケットの内側に発泡シートを詰め込んで断熱し、サーミスタをほぼ中心にセットしつつCPUをソケットに装着した。

温度センサー
【写真1】ゴマ粒程度に小さい温度センサー
デジタル温度計で測定
【写真2】市販のデジタル温度計で1秒おきに温度を測定できる
センサーのハンダづけ
【写真3】ソケットとマザーの間に耐熱電線を通してセンサーをハンダづけ
発砲シート
【写真4】CPUソケットの中央は発泡シートを詰め込む

 さて、温度計が反応するだろうか? 【写真5】は、先にセットしたサーミスタを温度計に接続したところであり、室温を示している。この状態からCPUのコアに指からハンドパワー、いや、体温でコアを温めてみると【写真6】のように温度が上昇したので「良し」とした。

センサーと温度計の接続
【写真5】CPUソケットに仕組んだセンサーと温度計を接続してみる
CPUコアを温める
【写真6】体温でCPUコアをあたためてみる

 次に発熱側及び測定方法の詳細を述べておこう。CPUやマザーボード、メモリなどは、前回のテストで使用した【表2】の組み合わせを利用している。ただし、CPUには定格電圧より高い1.80VをBIOSセットアップから操作してヒートアップした。そして測定方法に関しては、CPUクーラーごとに、これまた前回のベストパフォーマンスと思われる設定(FSB設定クロック:150MHz、CPU倍率:9倍、内部クロック:1350MHz)において、電源投入からWindows 98 SEがスタンバイするまでに示した瞬間最高温度とSuperπ(1677万桁を指定)を使って約30分間連続計算させながら温度計の表示値を記録し集計した。ただし、最初の2分間は30秒間隔で、以降10分までは60秒間隔、それ以降は、5分間隔で調べている。

 測定結果は、次のページに折れ線グラフで掲載した。測定時の室温は、20.8℃から20.4℃へ時間と共に低下していったが、性能結果に影響はないものと判断している。なお、CPUコアとCPUクーラーの間に塗布するサーマルコンパウンドは、条件を統一するためにサンハヤト製シリコンコンパウンド「SCH-20」(【写真7】)を使用した。これは、電子パーツショップで販売されており、800円〜1,000円程度で入手可能。また、ケースは、標準的なタワー型を用いたが、サイドパネルは取り外して開放としている。

シリコンコンパウンド
【写真7】シリコンコンパウンドSCH-20

【表2】テスト環境

- メーカー 動作設定
マザーボード MSI K7T266 Pro FSB:150MHz 倍率:9倍
CPU AMD Athlon1.2GMHz(266MHz) コア電圧:1.80V 内部クロック:1350MHz
メモリ Crucial Technology PC2100 CL2.5 128MB SDRAM CLK:HCLK CL:2.5


●総合的な観点から評価してみる

 次ページに示したグラフをみていただいた場合、本テストの主旨である「冷却性能」だけの評価では一目瞭然なのだが、もう少し課題を増やしてやや総合的な観点から考えてみることにした。
 まず、追加する課題としては、「冷却性能」に加えて「静寂性」、「脱着作業性」、「温度変動度合」の4項目を調べる。

騒音計
騒音計

 このうち、静寂性に関しては、写真の騒音計を使って具体的な数値を測定した。なお、測定条件としては、冷却性能の調査中、ファンから垂直方向に10cmの距離をおいて騒音計を配置した。次に脱着作業性だが、筆者の個人的な印象で評価させていただいた。温度変動度合は、冷却性能を調べる過程で温度計が示した瞬間最高温度と計測開始から5分を経過したあとに測定したCPU温度の平均値との差を求めている。これは、冷却性能のテスト中、ほぼ飽和温度と思われる時点からCPU使用率の変化に伴ってCPUの温度は若干ながら上昇して、しばらくすると元の飽和温度に戻る現象がみとめられた。この飽和温度と瞬間最高温度との差が小さいほどCPUクーラーのキャパが大きいと考えられたので項目に加えた。なお、これらの測定結果を数値で表せる項目は、【表3】に書き表したので参考にして欲しい。



【表3】総合評価数値表

- Firebird R7 CGK761CU-BIG Hedgehog-238M
静寂性 58dB 61dB 62dB
瞬間最高温度(℃) 50.5 48.1 46.1
5分〜30分までの平均値(℃) 49.83 47.5 45.84
温度差(℃) 0.67 0.60 0.26
温度変動度合(%) 1.345 1.263 0.567
※脱着作業性:CPUクーラー脱着作業性の優劣

 それでは、上記の課題を評価するうえで【表3】の数値も加味し、筆者の印象で恐縮だが【表4】に★印で得点を入れてみた。やはり冷却性能を含めて総合的にみても「Hedgehog-238M」かと思われる結果だが、静寂性、脱着作業性に重きを置く場合は、「Firebird R7」を推薦したい。これは、入門者やCPUのテストなど頻繁にCPUクーラーを脱着しなければならない必要性が生じた時に重宝するだろう。一方、「CGK761CU-BIG」は、正に銅とアルミの中間的性能が正直「絵に描いたように」現れたと思う。ただ、頑強な固定金具のおかげで脱着作業性に劣るもののCPUコアとの密着性は群を抜いている。

【表4】筆者の印象で採点した評価表

- Firebird R7 CGK761CU-BIG Hedgehog-238M
冷却性能 ★★★ ★★★★ ★★★★★
静寂性 ★★★★ ★★★ ★★★
脱着作業性 ★★★★★ ★★
温度変動度合 ★★★ ★★★ ★★★★★


冷却性能測定結果グラフ


CPUクーラー3種類にFirebird R7のファンを交換したFirebird P7改を加えて比較した。具体的な数値は、下記の表を参照のこと

【表5】冷却性能測定結果表

- Firebird R7 CGK761CU-BIG Hedgehog-238M Firebird R7改
室温(電源投入前) 20.8 20.6 20.7 20.4
Windows起動時最高 45.6 44.8 44.5 45.6
Superπ開始前 43.0 42.6 42.1 43.0
30秒 46.0 45.0 44.2 45.1
1分 47.2 45.7 45.0 46.5
1分30秒 47.7 46.1 45.2 46.9
2分 48.1 46.5 45.2 47.2
3分 48.7 46.9 45.7 47.7
4分 49.1 47.2 45.7 47.9
5分 49.4 47.3 45.7 48.2
6分 49.5 47.3 45.9 48.2
7分 49.6 47.4 45.9 48.2
8分 49.8 47.6 45.9 48.2
9分 49.9 47.4 45.9 48.2
10分 49.9 47.6 45.9 48.1
15分 50.0 47.6 45.7 48.1
20分 50.0 47.7 45.9 48.2
25分 50.2 47.7 45.7 47.7
30分 50.0 47.4 45.9 47.8
瞬間最高温度 50.5 48.1 46.1 48.2

●「Firebird R7」の潜在性能を試す。

 【表5】およびグラフを見て気がつかれたと思うが、4製品分のデータが示してある。このうち凡例にある「Firebird R7改」としたデーターは、一時的に「Firebird R7」のオリジナルファンを60×60×25mm、5000rpm(Hedgehog-238Mに採用されているファンと同等)のファン(風向は吹き付け)に交換して調べた結果である。筆者の所感では、ヒートシンクのキャパとファンの能力を比較した場合、【表5】の結果からヒートシンクにはもう少し余裕があるのではないかと思われる。当然、メーカーの設計意図は、前ページでも調べてみた通り、静寂性やサイズだけでなく筆者の計り知れない多岐に渡る要素も含めて決定されたものと推察できるわけだが、筆者個人の意見として、オプション設定で更に強力なファンを用意していただき、ユーザーニーズによってパワーアップをも可能にする製品に育てて欲しいと思う。とにかく、あの脱着性の良さは捨てがたい魅力があり、ユーザーにはとても助かる機能であることを最後に加筆しておこう。


◎注意

メーカーが定めた周波数以上の動作は、CPUやメモリーを含めてその他の関連機器を破損したり、寿命を縮める可能性があります。また、オリジナル製品のパーツを改変した結果、十分な性能を発揮しない場合など、その結果によるいかなる損害についても、筆者およびデジタルバイヤー編集部、製造メーカー、販売店はその責を負いません。オーバークロック設定・改造・BIOSの書き替え等は自己の責任において行って下さい。なお、この記事中の内容は筆者の環境でテストした結果であり、記事中の結果を筆者およびデジタルバイヤー編集部が保証するものではありません。この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできませんので、あらかじめご了承ください。

【筆者プロフィール】鈴池 和久氏。ASCII DOS/V ISSUEではレスキュー日記でマザーボードの修復記事などを執筆。他PC改造に関する著書もある。マザーボードの回路解析やハンダごてを使ってオーバークロック改造を施すのが得意。オーバークロック歴は1995年登場のTritonチップセットの頃から。ハンドル名は「KAZ’」大阪府在住1957年生まれ。




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