【最新パーツ性能チェック Vol.39】ついにVIA CPUが90nmに! 2次キャッシュ倍増でSSE3装備の「C7」は理想の家庭内サーバになれるか?
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2006年4月15日
VIAが2005年6月のComputexで発表したコードネーム“Esther(イスター)”、またの名を“C5J”としていた新CPU“C7”が、ようやく自作PCで利用可能になった。4月5日から、VIAのmini-ITXマザーボードがクロック別に3種類、秋葉原で発売されている。元祖「小型静音低消費電力」マザーである“EPIA”シリーズは、VIA初の90nm・SOIの“C7”投入でどう変わったかをチェックしていこう。
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左が「EPIA EN15000」、右が「EPIA EN12000E」 |
キャッシュ倍増、SSE2/3&NX装備
VIAのCPUは当初、今はなきCyrix社の開発陣による「Cyrix III」を「VIA Cyrix III」として発売しようとした経緯からか、“C3”という商品名が冠せられてきた。それが今回、一気に“C7”となったことから、VIAの今回の新CPUに対する意気込みが伺える。
CPU内部での主な変更点は、
・2次キャッシュが従来の2倍の128KBになった
・セキュリティや暗号化処理を高速化するSHA-1、SHA-256、RSAのアルゴリズムのアクセラレーション機能を装備した
・NXビットに対応し、バッファオーバーランタイプのウイルスをブロックできる
・SSE2/3に対応
――などとなっている。
以上のことからわかるように、“C7”は“C3”の改善バージョンであり、たとえばPentium 4が“Conroe”になるときのような、抜本的な再設計がなされたわけではない。“C3”シリーズは、内部コードネームでは“C5A/C5B”(Samuelコア)→“C5C”(Ezraコア)→“C5N”(Ezra-Tコア)→“C5XL/C5P”(Nehemiahコア)と進化してきたが、その次の“C5J”(Estherコア)が、今回の“C7”であることを見てもそれは分かる。
CPUの内部的な素性を示す「CPUID」の値も、前世代の“C3”(C5P)が「698」に対し、“C7”は「6A9」で、基本的なアーキテクチャの世代を示す一桁目のファミリーナンバーは“6”のまま変わっていない。これが変わるのは、次世代の2命令同時実行型コア“CN”が出てきたときになるのだろう。
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左が“C3”最上位の“C5P”タイプ、1.33GHzのスペック、右がC7-1.5GHz。CPUの“モデル”番号が“9”から“A”に1つ上がっている。Revision欄にコアの内部コードが表示されている。表示によれば、「C7-1.5GHz」は、100MHzの基準信号を4倍にして動かしているようだ(当初のPentium 4と同じ)。2次キャッシュが128KBに増えている点に注目 |
にもかかわらず今回、まるで別CPUのような名前が付けられている最大の理由は、インテル互換の“P6”バスからついに決別し、VIA独自の“V4”バスに移行したことをアピールするためだろう。Pentium IIIで用いられたソケット370の“P6”バス――最高FSB 133MHzというスペックは、今の時代のメモリや外部機器と組み合わせるには確かに非力だ。“V4”バスによって、FSBは400または533MHzに引き上げられ、帯域は1.06GB/秒から3.2〜4.2GB/秒に広がる。
なお、“C5J”の開発アナウンス時には、“V4”バスとともにPentium M互換のバスをサポートすると表明されていたが、これは結局キャンセルされ、“V4”バスのみのサポートとなった。また、パッケージも現状ではマザーボードに直づけするnanoBGA2版しかないため、当初は可能性があった「Pentium Mマザーへの“C7”装着」は、信号レベルでも、パッケージレベルでも不可能となった。実際、高価なPentium MやCore Duoマザーに、わざわざ“C7”を差す理由も見あたらないし、“C7”が通常オールインワンのmini-ITXマザーに載せて供給されていることを考えれば、マザーの製造コストを引き下げられる小型BGAパッケージを重視するのは当然ではある。
このほか重要なポイントとして、今回から製造がIBMの90nmのSOIプロセスに移ったことが挙げられる(従来はTSMCの130nm)。“C7”は、キャッシュ倍増などのため、トランジスタ数が従来の2000万から2600万に増えているにもかかわらず、ダイサイズは従来の47mm2から32mm2へと、約3分の2に縮小している。Pentium M(Dothan)の3分の1というサイズはコスト競争力を高め、5分の1のトランジスタ数が低消費電力に貢献することになる。
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IDE互換のシリアルATA端子も装備
今回評価したのは、現状最速の1.5GHz版が搭載された「EPIA-EN15000」。コネクタ類などは写真を見てほしい。メモリはDDR2の対応となる。オンボードのピンヘッダはUSBとIEEE1394が1つずつあるため、ドングルを入手すれば、背面端子を含めUSBは6ポートを用意できる。
2つのIDEポートに加え、シリアルATAポートが1つ用意されている。BIOS設定でIDE互換モードにすれば、FDDからドライバを読み込まなくてもWindows XPなどを、普通のIDEドライブに対するようにインストールできる。ネットワークはギガビットに対応している。
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背面パネル。USB×4、CRT、ビデオ、ギガビットLAN、6chオーディオなど標準的な内容 |
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“C7”のパッケージ。nmITXマザーに乗っている超小型「nanoBGA」の15mm四方よりはちょっと大きい、21mm四方。ダイの小ささに唖然とさせられる |
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“V4”バスをサポートする新チップセット「CN700」。DDR2のメモリコントローラとUniChrome Proのビデオエンジンを内蔵する |
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サウスブリッジは正体不明の「VT8237R Plus」 |
今回は比較対象として、従来入手可能だった最速のC3-1.33GHzを搭載した「EPIA-SP13000」と、Pentium M(Dothan)-1.5GHz(915GM)を用意して、性能と消費電力を比較してみた。機材と、クロックを“C7”に合わせる都合上、Pentium Mは2.13GHz版のクロック倍率等を変更し、FSB 400MHz、内部周波数1.5GHzで動かしている。そのため、Pentium Mシステムの消費電力については、本物の1.5GHz版(Pentium M 715、将来的にはCore Solo)を用いた場合、グラフの数値よりも低くなると考えられる。また、シングルチャネルの“C3”/“C7”に合わせ、Pentium Mもシングルチャネルで計測しているが、デュアルチャネル化すれば、特に3D性能は大きく引き上げることもできる。
まずは、キャッシュの効果を見るため、読み出しサイズを変更してのメモリアクセス速度を計測したのがグラフ1だ。“C3”、“C7”ともに1次キャッシュに入らなくなる64KBを前に性能が落ちるが、“C3”では128KBを超えるとメインメモリと同等の速度になるのに対して、“C7”では181KBまでは粘りが見られる。
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グラフ1 “C3”と“C7”のメモリアクセス速度。2次キャッシュが増えたため、より大きなブロックサイズまで“C7”は高速にアクセスできている |
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グラフ2 「Sandra」によるメインメモリのスループット。DDR2-533になった点は確認できるが、FSB性能を考えると値が低すぎる |
“C3”の2次キャッシュは64KB、“C7”は128KBだが、ともに排他式というアーキテクチャで、「1次キャッシュから追い出されたものだけを2次キャッシュが拾う」というシステムなので、“C3”の場合は1次+2次合計128KB、“C7”では192KBを保持できる。測定結果は予想通りであるが、“C7”の性能は、1次キャッシュ領域で27%、2次キャッシュ領域ではさらに大きな差になっており、クロック差(12.5%)を大きく上回る改善を見せており、なんらかの改善がなされた可能性がある。
メインメモリ性能は、「Sandra」で見ると20%、“C7”が速くなっている。これは、“C3”のメモリがDDR400(PC3200)であるのに対し、“C7”ではDDR2-533(PC4200)になっていることを考えるとまあまあ計算どおりだ。ただ、DDR2-533を使っているのに851MB/秒という性能は、メモリの性能(4233MB/秒)とずいぶん乖離がある。“C3”ではFSBの帯域が1066MB/秒しかないため、3200MB/秒のDDR 400の性能が出ないのはわかるが、“C7”では“V4”バスにより、FSB帯域は3200MB/秒に改善されているので、もっと出なくてはおかしい。実際、同じ400MHz/64bit FSBのPentium M+915環境では2.2GB/秒の性能が出ている。チップセットのメモリコントローラか、CPUのバスインターフェイスがまだ“P6”バスの速度を前提に作られているのだろうが、これはもったいない。逆に言うと、この部分を改善するだけで、“C7”の性能は大きく伸びる可能性が高い。(次ページへ続く)
性能はクロック比以上の大幅向上!
グラフ3は、CPUの基本性能を見る「Sandra」の“Arithmetic”、“Multimedia”の結果。“C3”との比較では、整数演算能力は18%アップと、クロック比+α程度だが、浮動小数点演算(FPU)は実に3倍のアップとなった。SSE2の実装により、SIMD FPU演算が可能になったためだろう。マルチメディアも整数系で33%、浮動小数点で49%のアップとなっているが、これもSSE2対応のたまものだろう。
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グラフ3 「Sandra」によるCPU性能計測。SSE2装備により、FPU性能が劇的に向上している |
グラフ4〜8は、おなじみのベンチマークたち。“C3”比では、一番伸びが少ない「Cinebench」でも18%アップ、他のテストは軒並み30%弱の高速化を果たしている。キャッシュ倍増に加え、エンコード系ではSSE2の実装が効いているものと思われる。
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グラフ4 CPU性能のほかメモリ性能が大きく影響する「Superπ」。“C7”はキャッシュ増量が効いてか、34%の性能アップ |
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グラフ5 チップセット内蔵グラフィックによる「3DMark 2001」の計測結果。これは45%の大幅アップを記録 |
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グラフ6 レンダリングを行なう「Cinebench 2003」のスコア。これは18%アップと意外に伸びなかった |
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グラフ7 マルチタスクを含む、やや重めのオフィスワークのシミュレーション、「PCMark 04」の結果。“C3”比で約30%の向上を見せた |
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グラフ8 「Windows Media Encoder」でのビデオデータの圧縮時間。“C3”比で27%高速化した |
ただ、同クロックのPentium Mと比べると、性能の差は依然として大きい。Pentium Mの2MBの2次キャッシュが“効き過ぎる”「Superπ」での6倍差は措くにしても、他のテストでも軒並み“C7”の2倍以上の性能である。さすがに5倍のトランジスタ数を集積しただけのことはある。(次ページへ続く)
システムレベルで31Wの低消費電力
おおざっぱに言えば、C7-1.5GHzはPentium M-600〜700MHzの性能ということになりそうだが、これはたいした問題ではない。そもそも“C3”にしろ“C7”にしろ、撮り溜めた映像をえんえんとエンコードするとか、CGのレンダリングをする、といった用途は想定していない。“C3”/“C7”の真骨頂は、小さなminiITXのマザーにCPUはじめPCとして必要なパーツが盛り込まれていて、手軽に安価に小型静音低消費電力PCを作れることだ。用途としては、家庭内サーバ、Webブラウザ、一般的なオフィスツールの利用、DVDの再生、といった日常的な作業を想定している。
グラフ9、10は、マクロで作成したWordとExcelのベンチマーク結果だ。Pentium M-1.5GHzにおける所要時間を1として比較しているが、見てのとおり、“C7”とPentium Mの差は30%もない。こうした業務では、処理のボトルネックは2Dグラフィック描画能力なので、CPUの差はたいして出ないためだ。さらに、こうした作業では処理時間の真のボトルネックは人間の操作待ち時間であり、実際の作業時間の差はもっと小さくなるだろう。エンコードをするなら“C7”はやめたほうがいいが、オフィスワークなら十分と言えそうだ。しかも、1.3GHz版以下ならファンレスにできるというメリットもある。
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グラフ9、10 WordとExcelのベンチマーク結果。Pentium Mと“C7”の差は30%ほどしかない。“C3”に比べ、“C7”がここで大きく性能アップしている点も見逃せない |
小さくて静かなPCは、家庭内でメディアサーバにしたり、あるいはサーバ兼ブラウザ兼オフィスツール、という使い方が便利そうだ。その際に気になるのは、消費電力だ。地球環境への配慮もあるし、むやみに電気代を払うのも避けたい。そこで消費電力を比較してみたのがグラフ11だ。
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グラフ11 アイドル時、およびSuperπ実行時の消費電力。Pentium Mは、2.13GHz品をクロックダウンして計測しているほか、“Enhanced SpeedStep”も有効になっていないため、実際の1.5GHz品ではこの数値より低くなるのは確実だ |
この数値は、マザーボードにHDD、CD-ROM、LANカードを装着した状態で、ワットチェッカーで測定した値だ。PCとして使う場合には、モニタの消費電力も加わる。
驚くべきことに、“C7”の周波数はC3-1.33GHzより高いにもかかわらず、消費電力はシステムレベルで20%以上も低い、わずか31Wにとどまっている。CPUがフル回転する「Superπ」を実行させても36Wにしか増えず、他のCPUとの差はさらに広がる。消費電力が少ないSOIの90nmプロセスを使ったかいは、確かにあったと言えよう。“C7”マザーは、“C3”マザーとの比較で言えば、性能でも消費電力でも、明らかに優秀な選択肢だ。31Wなら24時間つけっぱなしでも電気代は月500円以下となり、財布にも地球環境にもまあまあ優しい。
もっともPentium Mも、性能を考えれば消費電力はきわめて低い。しかも今回の計測条件はリーク電流が多いと思われる2.13GHz版をクロックダウンしているし、“Enhanced SppedStep”もオンになっていないため、悪条件の参考値であることを念頭においてご覧いただきたい。Pentium M 715をSpeedStepありで動かせば差はもう少し縮まるだろう。
Pentium Mと比べた場合、VIA CPU搭載マザーのメリットは従来、
・miniITXの超小型筐体
・物によってはファンレス
・2〜3万円そこそこでCPU込み
・低い消費電力
といった点があった。Celeron Mでもマザー+CPUでは3万5000円以上、Pentium Mで組めば5万円になるのを考えると、3万円そこそこの“C7”は“C3”より5000円ほど高いとはいえ依然魅力的な価格帯だ。
今回“C7”が登場したことで、ファンレスの限界クロックは1.2GHzに引き上げられ、消費電力はさらに2割減り、しかも、パフォーマンスは大きく向上した。“C3”に対して、「うーんやっぱり性能がもう少し」と悩んでいた方に、“C7”搭載ボードは最後の一押しをしてくれるだろう。
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(月刊アスキー 野口岳郎)
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