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【最新パーツ性能チェック Vol.38】Core Duoマザーまもなく登場! その性能はPen D/Athlon X2にどこまで迫るか? そして注目の消費電力は? 


2006年3月3日

 コードネーム“Yonah”で知られるインテルのモバイル向けデュアルコアCPU「Core Duo」搭載ノートPCが1月から入手可能になった。高い性能と低消費電力は各所でレポートされているが、チップセット内蔵グラフィックを使った性能測定では、デスクトップ機と同条件の比較がしにくい。ビデオカードの性能は測れないし、内蔵ビデオエンジンによってメインメモリ帯域が消費されるため、描画以外の処理においても性能へのマイナスインパクトがあるからだ。ここでは、MSIが3月16日に発売予定のCore Duo対応マザーボード「945GT Speedster」を用い、自作デスクトップ機としてのCore Duoマシンの性能を明らかにする。

今年後半のConroe/Meromにつながるイスラエルのコア

 Core Duoはさまざまな大きな改善が加えられてはいるものの、基本的にはPentium Mをデュアルコア化したCPUだ。Pentium Mはご存じのとおり、インテルのイスラエル研究所で開発されたP6系コア(Pentium Pro/II/III)に、かなりドラスティックな改変をほどこして、極めて低い消費電力と高い性能を両立させたノートPC向けのコアだ。
 ハイエンドのPentium Mは、3Dゲーム系テストではPentium 4-3GHzオーバーともいい勝負をする。ただ、シングルコアでハイパースレッディング機能も持たないため、マルチスレッド化されたエンコードソフトや、マルチタスク系のベンチマークでは、デュアルコアCPUにはもちろん、シングルコアのPentium 4にも水をあけられている。消費電力も少なく、シングルのタスクでは十分に速いPentium Mの泣き所がマルチタスクだった。
 したがって、デュアルコア化してマルチスレッド性能を大きく引き上げられるCore Duoは、ゲームもエンコードも速くて、消費電力は最小という、理想のCPUになることが期待される。
 すでに流通しているCPU単体に加え、秋葉原では複数のメーカーのマザーボードがサンプル展示されており、まもなくCore Duoマシンの自作も可能になりそうだ。
 以下では、MSIのCore Duoマザー「945GT Speedster」に、Core Duoの最速版T2600(2.16GHz)を載せ、Pentium MのみならずPentium 4、Pentium D/XE、Athlon 64・X2といったデスクトップのハイエンドモデルともガチンコの性能比較を行なっていく。
 なお、今回のテストでMSIから拝借した「945GT Speedster」は発売前のβモデルであるため、今後登場する製品版に比べてテスト結果に差が生じる可能性があるので注意してほしい。

Core Duoの最高峰、T2600。Pentium M同様、ヒートスプレッダーはなくダイが剥き出しになっている。ダイサイズがPentium Mとほとんど同じでコアが1個増えているのが65nmプロセスの威力だ
MSIのCore Duoマザー「945GT Speedster」。名前の通り、チップセットには“Intel 945GT”を採用。基本はマイクロATXだが、付属の拡張ボードをマザーの端に差すことで、スロット数を2つ増やせるのが珍しい
今回のテストでバッファローから提供されたDDR2-667メモリ


Core DuoはPentium M×2に比べどこが優れているのか

 画面1は「CPUZ」で見たCore Duoの仕様だ。“CPUID”は「6E8」となっている。これは、Pentium M 770(Dothan)の「6D8」に比べ、中位のモデル番号が1つ増えた形で、Core DuoがPentium M系の正常進化系であることを示している。
 製造プロセスは65nmに微細化と、FSBが166MHz(実効666MHz)に引き上げられ、SSE3がサポートされていることも見て取れる。
 「Sandra」でCPUの詳細スペックを見たのが画面2。Pentium 4/D系と比べて特徴的なのは、64bit対応していない(「拡張した特長」に“EM64T”が表示されていない)、36ビットアドレス空間の非サポート(“PSE36”が×)、それに、VTで知られる仮想化機構“VMX”がサポートとなっている点だ。

画面1 左がCore Duo、右がPentium M(Dothan)。“CPUID”のModel欄が“D”から“E”になり、“Instructions”にSSE3が追加、FSBが133.3MHzから166.2MHzになっているところが主な変更点。Core Duoは確かに2つのコアが認識されている

画面2 「Sandra」で見たCore Duo CPUの細かな機能。“VT”をサポートしていると表示されている一方、デスクトップCPUでは通常サポートしている“PSE36”(アドレス空間を36bitに拡張する機能)や64bit拡張“EM64T”がハズされている。当然“Enhanced SpeedStep”には対応

 Core DuoはPentium Mのデュアルコア相当と書いたが、Pentium Dのような、シングルコアのCPUを2つくっつけただけのものに比べ、はるかに手の込んだ設計になっている。性能面で特に重要なポイントは、コア同士がダイ上でダイレクトに接続されていることと、2次キャッシュを2つのダイが共用していることだ。
 前者のメリットは、1次キャッシュ内データの整合性維持のためのスヌープなどの処理をFSBを経由せず、コアのフルスピードで処理できることだ。速度面でも、また低速で逼迫しているFSBに負担をかけない点で、Pentium Dに比べ有利だ。ちなみにAthlon 64 X2は、同様にコアはオンダイで接続されている。
 後者は、キャッシュメモリの有効利用と、オーバーヘッド削減をもたらす。Pentium DやAthlon 64 X2のように、コアごとに個別にキャッシュを持つ方法であると、片方のコアが1MBに入りきらないような大容量のデータを扱う処理の場合、データを低速なメインメモリに待避・復帰させる必要が生じ、スピードの足を引っ張ることになる。しかしCore Duoのように、両コアが2MBを共用する方式では、もう片方のコアがあまり動いていない、あるいは大きなキャッシュ容量を必要としてない場合には、ヘビーな作業を行なうコアが最大2MBまでキャッシュを使うことができる。また、コア1による処理結果をコア2が参照するケースでは、分離型2次キャッシュの場合、一度コア1内キャッシュの内容をメインメモリに書き戻してそれをコア2が参照するか、うまく作ってもコア1のキャッシュ内容を一度コア2のキャッシュに転送してからのアクセスになる。しかし、Core Duoの場合にはコア1の処理結果をコア2がダイレクトに参照できる。

 このほかにも、

・SSE3の装備
・μops fusionを強化してSSE系命令の性能を向上
・浮動小数点演算の強化
・整数割り算命令の高速化

 なども行なわれている。

 こう聞くと、Core DuoはPentium M×2+α、という印象を受けるが、1つ留意しておかなくてはならないことがある。それは、Pentium Mにはもともと2MBのキャッシュが搭載されている点だ。したがって、共有キャッシュが4MBになっているのであれば、あらゆる意味でPentium M×2をしのぐと言えるが、Core Duoはそうとは言えない。具体的に言えば、2つのコアに、それなりのメモリを必要とする重い処理が入った場合、各コアは2MBのキャッシュを全部は使えない。仮に両コアが1MBづつを使うとすると、これはDothanデュアルというよりは、キャッシュ1MBのBaniasのデュアル相当ということになる。
 なお、シングルスレッドのアプリについては、Core Duoは片方のコアだけが動き、2MBのキャッシュをフルに使うことになるので、Pentium Mとキャッシュ条件はほぼ同じになる。
 まとめると、シングルスレッドのテストでは同クロックのPentium M以上(FSBがアップしている点、SSE3などのコアの強化)、マルチスレッドのテストではデュアルコア化による性能向上があるが、1コア当たりのキャッシュ量がPentium Mより少し減るため、Pentium 4→Pentium D、あるいはAthlon 64→Athlon 64 X2に比べると性能上昇幅が少し落ちることが予想される。さて実際はどうだろうか。



「Superπ」では敵なし! ビデオまわりがチューン不足か?

 まずメモリ性能を「Sandra 2005」で計測した結果がグラフ1だ。今回はCore Duo機にはPC2-5300(DDR2-666)とPC2-4200(DDR2-533)の2通りを装着して、速度差も計測しているが、Pentium M(PC2-4200)に比べ、同じPC2-4200でも大きくスコアが伸びているのがわかる。これはPentium MのFSBが533MHz=理論帯域4233MB/秒であったのに対し、Core Duoでは666MHz=5333MB/秒になっている点が効いている。PC2-5300を使えば実効性能で4GB/秒を超えた。5〜6GB/秒という高いメモリスループットを持つデスクトップCPUに迫ったが、まだ差は少なくない。
 PC-2 4200と5300の差は、「Sandra」で見る限り4%程度しかない。そもそもCPUのFSBが5333MB/秒と、PC2-4200のシングルチャネル分しかないので、すでに十分オーバースペックなPC2-4200のデュアルとPC2-5300のデュアルでろくに差が出ないのは予想どおりと言える。ただ、チップセット内蔵ビデオを使う場合には、メモリ帯域の一部がビデオエンジンに取られるので、PC2-4200シングルでは十分とは言えず、4200と5300でパフォーマンスに差が出る可能性は高い。今回のように、外付けビデオカードを装着する場合については、このあとのテストを見てもわかるとおり、インパクトは軽微だ。


グラフ1 「Sandra 2005」によるメモリ性能

 さて、シングルスレッド時のCPU性能を見たのがグラフ2、3だ。大注目はグラフ2の「Superπ」。なんとなんと、Athlon 64 FX-57、Pentium 4 670といったシングルコア&最高クロックのデスクトップCPUを上回る、104万桁で30秒を切る快挙をなしとげた。
 不思議なのは、ほぼ同じコアのPentium M 770が、クロックは33MHz低いだけなのに、「Superπ」では大きく遅れを取っていることだ。「Superπ」のメインループは(SSEではない)x87の浮動小数点演算が中心のようなので、FPU性能の強化ポイントがたまたまジャストフィットしたのだろう。
 これは極端な例としても、圧縮ソフト「DGCAβ9」によるテスト(グラフ3)でも、Core DuoはPentium Mをクロック比(1.5%)よりは明らかに大きい、6%近く高速となっている。Pentium 4に換算すれば3.5GHzくらい、Athlon 64で2.2GHzくらいの性能で、「Superπ」のように全機種中トップではないものの、デュアルコアCPUとしてはPentium D/XE系より速いし、シングルコアCPUの中堅どころにも匹敵する好成績だ。基本的な演算性能は高いと言えよう。

グラフ2 「Superπ」による104万桁のπの計算時間。短いほど高速
グラフ3 「DGCAβ9」によるWAVファイルの可逆圧縮時間。短いほど高速

 グラフ4〜6は、3D描画系のテストだ。ヘビーな描画テストはCPU性能の差が反映されにくいので、やや軽めのテストを選んでいる。Core Duoのスコアが、ほぼ同クロックのPentium Mよりいくぶん低めなことが気になる。今回、チップセットドライバは945Gのものを暫定的に使用しているほか、マザーボード自体が開発中のもので、「3DMark 05」など、いくつかのテストが動作しなかった。そのためPCI Express周りなどの設定が完全でない可能性はあるだろう。
 これら3種ではAMD勢がリードし、次を3.8GHzのPentium 4-670が追う構図だが、Core Duoはこの次に入り、Pentium D/XEに対してはリードを維持している。つまり、これらのテストに関して言えば、ハイエンドのシングルコアPentium4にはかなわないが、デュアルコアCPUとしてはデスクトップのPentiumよりも優秀という結果だ。
 もっともここまでの傾向はPentium Mでも同じだった。次は注目の、マルチスレッド、マルチタスクの性能である。


グラフ4 「3DMark 2001 SE」の結果

グラフ5 「Final Fantasy XI ver.2」の結果

グラフ6 「Unreal Tournament 2003」の結果


テストによってはPen Mの2倍オーバーも!

 グラフ7、8は、ともに同時に2スレッドが起動するテストだ。「PCMark 04」でのCPUスコアは、テストの一部で2アプリを同時に起動するものがあり、HTやデュアルコアのCPUのスコアが上がる。Core DuoはPentium M比で1.5倍近い伸びを見せ、Pentium 4-670やAthlon 64 FX-57といった最高速シングルコアCPUを上回った。デュアルコアCPUとしては、Pentium D 840弱、Athlon 64 X2-4200程度の中堅クラス。一方「Windows Media Encoder 9」においては、Pentium M比実に90%アップ。SSE性能の強化も寄与したものと思われる。スコア的にはPentium D、XEを上回り、Athlon 64-4800+をうかがう好成績だ。
 グラフ9、10、11は、4CPUもサポートするテスト群。Pentium XEの論理4CPUというスペックもフルに生きてくる。グラフ9の、CGレンダリングテスト「Cinebench」では惜しくも600に届かなかったものの、Pentium Dを振り切りPentium XE 840に高いスコアを記録。Pentium M比では実に2.1倍近い伸びになる。Pentium XEやAthlon 64-4800+といったハイエンドデュアルコアCPUの背中が見えた。グラフ10の「Windows Media Encoder 9 Advanced Profile」でも87%の高速化を果たし、Pentium D 820には大差をつけた。これもハイエンドデュアルコアに肉薄している。グラフ11の「DivX 6.1」での圧縮ではPentium D 840に勝てるかどうか怪しいが、数値的にはハイエンド陣にぴたりと付いている。


グラフ7 「PCMark 04」のCPUスコア。一部に2タスク同時実行を含む

グラフ8 「Windows Media Encoder 9」によるaviファイルの圧縮テスト。2スレッドだけ起動するため、Pentium XEではスコアが伸びにくい。短いほど高速

グラフ9 「Cinebench 2003」の結果

グラフ10 「Windows Media Encoder 9 Advanced Profile」でのaviファイル圧縮テスト。短いほど高速

グラフ11 「DivX 6.1」によるDV形式aviファイルの変換テスト。短いほど高速

今後の注目は64bit化とAMDの対応

 Core Duo T2600の性能は、シングルスレッドもマルチスレッドも、最高ではないものの中位以上をコンスタントにキープする、非常にバランスの取れたものだ。しかもCore Duoの消費電力は圧倒的に低い。グラフ12は「Superπ」実行時のシステム全体の消費電力だが、Athlon 64 FX-60以外の他のCPUの半分以下、ハイエンドのPentium 4と比べれば3分の1近い。サーバとして24時間駆動させる場合、100W消費電力を減らせば年間1万8000円ほどの節約になる。家庭ではサーバにしても「Superπ」のような負荷が24時間かかることは想定しずらいが、それでも年数千円くらいのインパクトはあるだろう。
 グラフ13は、「Superπ」において1秒間につき1Wで何ケタのπの値を計算できるかを示したものだ。いわば「ワット当たり性能」であり、数字が大きいほど効率がいいことになるわけだが、Core Duoの優秀さは突出している。FPUの強化によって「Superπ」性能が大きく伸びていることが反映されているため、多少は割り引いて考えたほうがいいが、それにしても現行のデスクトップ用CPUとは一線を画する。

グラフ12 「Superπ」実行中のシステムの消費電力。マザーが違うため厳密な比較にはならない
グラフ13 消費電力1Wにつき1秒で計算できるπのケタ数。実質上ワット当たり性能

 ゲームや大量のエンコードが主目的なら、高くても熱くても、少しでも速いCPUが必要かもしれない。しかし多くの人には低消費電力で高性能、快適で電気代もかからず、小型化・静音化もしやすいCore Duoのほうが、性能が最高ではなくてもトータルの魅力はずっと大きいように思える。弱点としては64bit対応でない点が挙げられよう。年内に登場予定のWindows Vistaはほぼすべてのラインナップに64bit版と32bit版が用意される。Vistaへの対応・準備が、デバイスドライバやアプリケーションの64bit化のトリガーになるかもしれず、予想外に早く世界が64bit化してしまうと、32bitマシンでは少しさみしくなるかもしれない。ただ、64bitじゃないと使い物にならないというようなアプリが個人向けに出てきそうな気配はないし、Vistaの登場も半年から1年も先だ。また、Core Duoは次世代デュアルコアCPU“Merom”とピン互換とされており、グレードアップで対処もできそうなので、深刻な問題とまでは言えないだろう。

 Pentium M時代は、自作用マザーボードはメジャーどころではAOpenくらいしか販売していなかった。ところがCore Duoでは、今回テストに使用したMSIやおなじみのAOpenのほか、GigabyteやASUSTeKも製品をアナウンスしている。一気にデスクトップの世界にモバイルCPUのCore Duoが流れ込みそうな勢いだ。「ワット当たり性能」がキーワードになった場合、デスクトップCPUに勝ち目はなくなる。AMDは今年前半に、デュアルDDR2インターフェイスを持つモバイルCPU“Taylor”を投入するとしている。現在AMDのモバイルCPUはバルクでしか入手できず、正式対応のマザーボードもごく少ない状況だが、Core Duoの人気次第では対応せざるを得ないだろう。自作デスクトップにおいても、今年一番ホットなバトルは、Pentium vs. Athlonではなく、Core Duo vs. Turionになるかもしれない。

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(月刊アスキー編集部 野口岳郎)




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