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【最新パーツ性能チェック(Vol.19) 】ついに登場した第4の8パイプラインビデオチップ“DeltaChrome”速攻レビュー!


2004年1月4日

コンシューマ向け3DチップがnVidiaとATIの2社寡占になって久しいが、この年末は最先端の「Direct X9対応」「8パイプライン」のビデオチップのマーケットに、続々と新規参入が見込まれている。すでに本日、SiSからスピンアウトしたXGI社の「Volari」チップを乗せたカードが登場しているが、年末から来年にかけてもう1社、伝説のメーカーのチップが姿を現わしそうなのだ。その名はDeltaChrome、設計はS3社である。

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DeltaChrome S8のリファレンスボード。ビデオメモリはDDR700
DeltaChrome S8のリファレンスボード。ビデオメモリはDDR700
DeltaChromeチップ。S8の文字が刻印されている
DeltaChromeチップ。S8の文字が刻印されている

 Windows 3.1時代には「Windowsアクセラレータ」の代名詞としてこの世の春を謳歌したS3社だが、その後本格化した3Dの開発競争では出遅れた。ライバルに追いつくべく、1998年にはSavage 3D、1999年にSavage 4、2000年にSavage 2000と製品を投入してきたが、デスクトップ市場でシェアを奪い返すことはできなかった。2000年6月には、S3社は自社によるビデオチップの開発継続を断念し、ビデオチップ部門をVIAとの合弁会社「S3 Graphics」社に移管し、元のS3社はSonicBlue社と改名、MP3プレーヤー「RIO」などを扱うメディアプロダクト会社に衣替えした(が、今年3月に事実上倒産した)。
 S3 Graphicsとなった後は、クロック向上などのマイナーバージョンアップでノートPC向けの販売を主力としていたが、2001年のVIA Technology Forumを機会に、復活の狼煙を上げた。2002年に2パイプライン/4テクスチャパイプラインでDirect X8.1対応のコードネーム“Zoetrope”を、2003年には4パイプ/8テクスチャパイプでDirect X9対応の“Columbia”を投入するとアナウンス。実際、2002年6月にはZoetropeが「Savage XP」として、さらに2003年1月に早くもColumbiaが「DeltaChrome」として発表された。
 ただ、DeltaChromeの実物はなかなか世に現われなかった。9月のIntel Developer Forum、Computex Taipeiでデモが行なわれたものの、現時点ではまだ市場では流通していない。ただ、秋葉原でデモは行なわれ始め、製品登場は間近のようだ。今回は、S3 Graphics社の評価用ボードを元に、注目の機能と性能に迫る。



DeltaChromeの特徴とターゲット

 DeltaChromeには3モデル、6バリエーションがある。上から順に

F1 Pole
F1
S8 Nitro
S8
S4 Nitro
S4

となり、S4が4パイプライン、他は8パイプラインとなっている。PoleやNitroの有無はクロックの違いのようでF1とS8の違いは、クロックと、ボードデザイン(F1は6層基板が必要という)と言われているが、正確なところはわからない。今回借用したボードはS8ベースだが、コアやメモリの周波数は不明で、また、Nitroなのかどうかもわからない。
 DeltaChromeでは最大256MBのメモリを搭載でき、メモリインターフェイスは128bitである。コアクロックはF1で350〜400MHz、S8で250〜300MHz前後と推定されている。メモリはこのボードの場合、Samsungの350MHz動作品(DDR700)だったので、 フルスピードで動いていれば11.2GB/秒、Radeon 9600ProやGeForce 5600Ultraと張り合える水準になる。
 ターゲットとしては、F1がGeForce 5900やRadeon 9800クラス、S8がGeForce 5600やRadeon 9600クラス、S4がGeForce 5200やRadeon 9200クラスと見ているようなので、今回は5600・9600ラインを仮想競合カードとして性能を比較していくことにする。

 もっとも、DeltaChromeはDirect X9対応の最新ゲームが快適にプレイできるというだけが売りではない。DeltaChromeには他のボードにない特徴的な機能がいくつもある。具体的には、

●ビデオ再生にリアルタイムでエフェクトをかけられる「ChroMotion」エンジンを内蔵。インターレース映像を最適にノンインターレース画面に出力できる「Per pixel de-interlacing」(画面の中で、動きが激しい部分についてはBob=走査線をコピーし、1フィールド単位で更新する=を用い、そうでもない部分についてはWeave=2つのフィールドを合成して表示=を用いることで、画質と動き表現の最適な組み合わせを計る)、ジャギーを取る「ノンブロッキングフィルタ」などを実現

●D4までのアナログコンポーネント信号を単体で(外部エンコーダチップ等なしに)出力可能(内部的にはD5にも対応しているが、現時点で表示可能なデバイスがないので、とりあえずサポート外となっている)

●性能ダウンのない画面の回転機能をサポート

●フォントのスムージングをハードウェアでサポート

などがある。

 D4対応でビデオ表示に強いというのは、HD-DVDの規格承認、地上波デジタル開始と、加速の度を高めているテレビのハイビジョン化に真剣に向き合ったものとして注目される。まだまだテレビ出力はオマケ程度の扱いの3Dチップが多いなか、いち早く家庭での大画面テレビを意識したものといえる。Edenプラットフォームなど、家電的なPCへの傾斜を強めるVIA社の方針も関係しているのかもしれない。



5600/9600水準の性能を実証

 まずはやはり気になる3Dパフォーマンスからチェックしよう。比較対象には、GeForce 5600、RADEON 9600XTのほか、上位、下位のモデルも並べてみた。
 結果を一言でまとめると、今回のDeltaChrome S8サンプルのパフォーマンスは、GeForce FX5600やRADEON 9600と互角以上といえる。FX5600との比較では、3DMark 03では僅差で及ばないものの、今回テストしたそのほかのベンチマークでは10〜20%ほどリードしている。RADEONは、テスト機材の関係で比較対象が9600XTであり、これには50%ほどの性能差を付けられているが、9600XTはノーマル9600に比べ、コア、メモリのクロックがそれぞれ1.5倍ほどにも強化されているため、ノーマル版について言えば、DeltaChromeと同程度になりそうだ。もちろん、5200/9200には大きな差をつけてリードしている。ターゲットとした5600/9600クラスの性能は実現できていると言えよう。
 ただ、現在のビデオカードマーケットは、5900/9800系がハイエンド、その下は5700/9600XTであり、ノーマルの5600/9600はその下の、バリューゾーンの上のほうという存在だ。3Dパフォーマンスが最優先というユーザーには、S8の現在の性能ではちょっと物足りないかもしれない。このクラスの性能を求めるユーザー向けにはF1が必要だろう。

回転させても性能が落ちない

プロパティ設定画面でセカンドディスプレイだけを回転させる設定をしたところ

 次に、DeltaChromeの特徴機能をいくつか見てみることにしよう。
 DeltaChromeは、画面を回転させても性能が落ちず、機能的にも制約が生じない点を特徴に上げている。縦画面にした状態でより快適に使えるというわけだ。
 では他のチップはどうか。まずRADEONは、現在のドライバでは、画面の回転機能は標準ではサポートされない。レジストリをいじることで、コントロールパネルに回転メニューを出させることはできるが、この場合、ビデオオーバーレイができなくなるという制約がある。GeForceは回転機能を標準で持っており、ビデオオーバーレイも可能だ。

 各カードで90度回転させた状態で3DMark 03を計測してみたところ、RADEON、GeForceともに10%ほど数値が落ちたのに対し、DeltaChromeでは逆に数値が上がっている。これは、縦にしたほうが性能が高いというのではなく、画面が縦になったことで描画内容が変わり、3DMarkの場合縦長のほうが描画の負荷が少ないということなのだろう。逆に言うと、この数値が当たり前だとすると、RADEONやGeForceは縦画面にすると20%ほど性能が落ちたことになる。
 触れ込みどおり、性能ダウンのない縦表示機能を持っていることが確認できた。ただ、縦長の3D画面が必要なケースというのがあまり思いつかないのも事実だ。  縦長にしたい用途としてはやはり、Webの画面やDTPといった、オフィス的な用途のほうが普通だろう。DeltaChromeは、2台つないだディスプレイのうち、片方だけ縦表示、といった設定も可能なのは便利だ。GeForceでは、縦、または横に同じ解像度の画面を並べることしかできない。RADEONでは解像度は独立に設定できるが、回転機能はレジストリをいじらないと出てこない隠し機能である。DeltaChromeが最もフレキシブルなのは確かだろう。
 しかし、最近では回転可能な液晶ディスプレイがめっきり減ってしまった。VESAのフリーマウントを使えば回せなくもないが、追加の出費になるし面倒だ。ただ、液晶の低価格化にともない、便利なデュアル液晶環境がさほど無理をせずにも導入できるようになってきている。縦と横を併用できるDeltaChromeは、2画面 時代に本格的に対応した仕様ともいえる。低価格な15インチクラスの液晶に回転機能が再装備されることを期待したくなる。



今後の応用が楽しみなビデオエンジン

動画にリアルタイムでエフェクトをかけられる
動画にリアルタイムでエフェクトをかけられる。DVD再生ソフトでキャプチャを試みたが、常にノンエフェクトの状態で取り込まれてしまうため、結果をお見せできないのが残念(ビデオメモリからDACに渡す段階でエフェクトをかけていると思われる)

 DeltaChromeの目玉の一つに、リアルタイムに動画にエフェクトをかけられる「Chromotion」がある。Intervideo社のWinDVDは、DeltaChromeの機能を使い、プレーヤー画面から直接これらのエフェクトを利用可能になるという。今回の時点ではまだWinDVDにはこの機能は組み入れられていなかったが、画面のプロパティ上でこの機能をONにすることができた。
 現在プロパティで用意されているのは、エンボス、ネオン、ソフト、シャープの4種類。エンボスとネオンは、エンジンのパワーを見せつけるにはいいが、実際にどのようなメリットがあるかはむずかしいところだ。しかし、ソフトとシャープは、表示デバイスや好みによって映像をリアルタイムに調整できる便利な機能である。この機能は、オーバーレイ表示されるあらゆる画像──つまり、AVIやWMVをメディアプレーヤで再生する場合にも、WinDVDなどのDVD再生ソフトでDVDを鑑賞する場合にも機能する。この機能はプログラマブルだというので、将来的に有用な新機能の追加が期待できる。



片方だけ回転させた状態での利用例
片方だけ回転させた状態での利用例。Web画面などは縦表示だと見渡せる範囲が広くて便利だ

 なお、フォントのスムージングに関しては、今回2D系のベンチマークを取ってみたのだが、有効に機能している様子はなかった(スムージングをONにするとそれなりに性能が落ち、割合はRADEONやGeForceと同等)。同社によれば、RADEONやGeForceよりはるかに落ち方が少ないというベンチマークが出ているので、今回のサンプルのドライバにまだ組み込まれていないのだろう。



ビデオ&オフィス派に魅力

 3Dゲームの性能が最優先という方の場合には、この上の性能のカードがnVIDIAやATIから何種類も出ており、DeltaChrome S8では筆頭候補にはなりにくそうだ。S8ベースのボードは2万円台前半になると言われており、この価格帯だと性能の高いFX5700Ultraや9600XTが買えてしまう。ただ、DeltaChromeの性能はちょっと前のミドルレンジであり、DirectX9対応もあって、よほどヘビーな3Dゲームをヘビーな設定で楽しみたいというのでなければ、十分快適に遊べるものだ。
 それに加え、DeltaChromeは、フレキシブルな回転機能つき2画面サポートと、機能豊富で美しいDVD再生エンジン、D端子への出力という魅力がある。前者はWebページを参照しながらWordやExcelを操作、といったオフィスワークに重宝するし、後者はDVD鑑賞を強力にバックアップしてくれる。多画面表示でDVD再生が便利といえばMatrox製品もあるが、Matroxは3Dゲームをするには性能・機能面で難がある。その点DeltaChromeはオールマイティだ。
 ビデオカードのランクが、搭載されているビデオチップの3D性能で決まるようになって久しい。しかし、PCは事実上ゲームマシンというヘビーゲーマーを除き、多くのユーザーにとってビデオカードは、Webやオフィスツールなど2D画面の表示用であり、DVDやDivXなどのビデオの再生用デバイスではあるまいか。そんな、いわばメインストリームのPCユーザーには、DeltaChromeのようなカードこそが実はベストフィットするのではないだろうか。

【グラフ1】3DMark03の結果
【グラフ2】Comanche4の結果
【グラフ3】Final Fantasy XI Ver.2の結果
【グラフ4】Unreal Tournament 2003の結果
【グラフ5】x2の結果
【グラフ6】3DMark 2001の結果
【グラフ7】画面回転時の性能変化
※お詫びと訂正:文中G4、G5とありましたのはD4、D5の誤りでしたので記事を訂正しております。ここにお詫びいたします。

(アスキープラス編集部 野口岳郎)




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