Akiba2GO!

フットコントローラ自作編


2001年4月29日

 普段何気なく使っているキーボードやマウスだが、これらの機器が世に登場して以来、操作方法は何の変化もない。新化し続ける電子機器に取り残されたようなこの機器をもっと人にやさしく、便利に改造できないものだろうか? 今回は入力デバイスの基本、キーボードとマウスの改造を試みる。

■フットコントローラとは!?

フットコントローラ

 仕事柄PCにかじりつきの不健康な生活をしている筆者は、コンビニ弁当を食べながらブラウジングしているときひらめいた!「マウスが足で操作できれば弁当を食いながらでも仕事ができる…」と。寝転んでテレビを見ている時、リモコンが手元になくて足でチャンネル操作をした経験をお持ちの方はどのくらいおられるだろうか? ちなみに筆者はしょっちゅうである。元来、複雑な操作を要求する機械は足も使って操作するものが多いが、複雑怪奇なPCの操作中に足は全く使わない。これはもったいない。キーボードは手で操作するとして、マウスやシフトキーは足で操作した方が作業効率もアップするような気がする。全身を使ってこその優れたマンマシンインターフェースではないだろうか? というわけで前置きが長くなりましたが、今回はフットコントローラの製作。フットコントローラは「多機能足マウス」のことだったのです!!



■まずは事前調査

 思いたったはいいが、既に市販品があったのでは自作の意味がない。よく考えてみると何でもアリアリのDOS/Vパーツに足マウスのような(お馬鹿な)グッズがない方が不思議である。さっそくネットで検索してみると一点だけ準市販品を確認できた。これは工業用に製作されているもののようで、価格は2万9800円。店頭で市販される製品というものではないようで、筆者の欲しいような怠け者…もとい便利グッズではないようだ。この製品は足を乗せる台が前後左右にスライドして、その移動量に比例してポインタが動く構造のようである。筆者も最初このような方式を考えて実際にマウスを足で動かしてイメージトレーニングをしてみた(ホントです!)。しかし、いざやってみると足で座標入力するというのは精密な動作が非常に難しいことがわかる。二番煎じでは面白味がないので、当研究所ではこの点を考慮して、レバーを倒している間だけポインタが動作する方式のものを製作することにした。また、お気楽ネットサーフィンが主な用途であるため、スクロールボタンも必要と決定。仕様が決まったところで材料捜しにAkiba2GO!



■電子部品は市販品でゴー

パッド
マウスモード搭載のアスキー製ゲームパッド。スイッチで切り替えてパッドからマウスに早代わり

 材料探しで問題になるのがマウスの制御回路だが、これを自作するには生半可な知識では不可能だ。市販品から取り出して改造するしかあるまい。まずは市販されているマウスを片っ端から物色する。
 スイッチのON、OFFでポインタが動く構造のマウスにはプレゼンテーション用のもので、ちょうどカーナビのリモコンのような形状のものが数種類市販されていた。ラオックス ザ・コンピュータ館にてこれを見つけて購入しようとレジへ向かう途中、ゲームパッドのコーナーで“チラッ”とマウスというキーワードが目に飛び込んできた。良く見るとマウス機能付きと書かれたゲームパッドを発見!! 「こっこれはピッタリじゃないすかっ」と思わず叫んでしまったほど感激のパッドは何とアスキー製。灯台下暗しでした。足でゲームもできればDDR(メモリじゃなくてゲームのダンスダンスレボリューション)チックで尚良し。USB接続で通常のマウスと同時使用も可能。当然こちらを購入した。




アーケードゲーム機用のコントローラとボタンスイッチ。滑らかな動きで普通に手で操作しても気持ちの良い動きをしてくれる。スティックは底面のパネルを回すと4方向と8方向の切り替えが可能

 次はスイッチ類だ。足で操作するので踏んづけたくらいでは壊れない丈夫なものが欲しい。千石電商にて業務用ゲーム機のスティック型とボタン型のスイッチを購入。さすがにアーケード機用だけあって耐久性は折り紙付きだ。

ケース
以前静音コンパクトマシン製作で使用したものと同じシリーズのケース。値段が安いのでついこれを選んでしまうのは貧乏人のさがだろうか。アルミ製で柔らかいので加工は容易

 そして筐体。以前静音マシン製作でお世話になったラジオデパートのケース専門店で、以前使用したものと同系統で少し小さいアルミケースを2つ購入。予定では斜形ケースを購入するつもりであったが、1つ4980円と高い。前回ガス冷マシンで散財して担当編集者よりお叱りを頂いているところなので、今回は節約路線で行かなくてはならない。そんな事情でまた懲りずに蓋無し格安ケースをチョイスしてしまった。





■ゲームパッド分解

分解したパッド
分解したパッド。内部の回路は超シンプル。導電性ゴムがボタン裏に貼りつけてあり、直に基盤に接触する方式のスイッチを使用している

 購入したゲームパットを分解して内部構造を確認する。ネジを3本外すと簡単に蓋が開いて内部の基盤が丸見えになる。電子回路は数個のチップ抵抗とコンデンサにカスタムICが1チップのみで超シンプル構造だ(こんなもの100万円貰っても作れないです)。基盤のほとんどの部分がスイッチ用のパターンで、予想以上に改造は簡単そうに見える。底面のメカニカルスイッチによる切替でマウスにもパットにもなる一台二役。これなら回路部分は楽勝だ。



■スイッチレイアウト

購入した材料
ホームセンターで購入した材料。ゴムシート各種とネジ類、ホールソー、スイッチ。足を乗せる板はスチール棚等の連結用ステーでアルミ製。スイッチは呼び鈴についているようなプッシュ式のもの

 購入したスイッチ類をケースの上に並べてレイアウトを考える。ケースを足で踏んでベストな配置を捜すが、これが意外に悩ましい。人間工学というものはこういうものかと考えつつおぼろげに配置が決まってくる。当研究所がマイク○ソフトのような巨大企業であればモックを100パターンくらい製作して老若男女にアンケートを取ったりして配置を決めたいところだが、あいにくの貧乏世帯なので筆者の独断と貧弱なイメージで(適当に)レイアウトを決めてしまった。これが災いして後々困ることになるのだが…。
 とりあえずレイアウトの決まったフットコントローラだが、スイッチがムキ出しでは雰囲気が出ない。ゴミが入ったりして耐久性にも問題がありそうなので、足で踏む部分にはゴムでカバーをつけることにする。もうすっかり“いきつけの店”になってしまった近所のホームセンターでネジ類とゴム製品を一式分購入。



■ケース加工

加工中のケース
加工中のケース。ホールソーは中心に小さなドリルがついていてこれを中心に鋸状の歯が外周を回転する。簡単に綺麗な穴が明けられる。プロ用には油圧式のものもある

 ケースにマジックで印をつけてドリルで穴を明ける。スイッチ用の穴は直径30mm。ホールソーという穴あけ用の刃物を購入した。ドリルで下穴を明けてひたすらヤスリで広げるという手もあるが、さすがに計9個の穴をヤスリ加工するのは重労働すぎるので今回はちょっとだけ楽をさせて貰うことにする。ホールソーは2mm飛びに各種サイズがあり30mmは2000円(税別)。穴が全部仕上ったらボタンスイッチをはめ込み、スティックをネジ止めして機構部は完成。ケース裏面にはゴムシートを切って四隅に両面テープで貼りつけ足にする。





■スクロールスイッチで誤算

 当初の予定ではスティックに足を乗せたままスクロール機能が使えるのが望ましいということで、ステックの上にさらにスイッチを重ねて配置した。しかし実際に操作してみたところ、スクロールスイッチを押そうと踏み込むとステックまで倒れてしまい上手く操作できないことが判明してしまった。この構造だとステックのバネとスイッチのバネの固さの絶妙なチューニングが必要なのだ。仕方がないのでスクロールスイッチは脇に別置きにレイアウト変更することにした。しかし行き当たりばったりに場所を決めてしまったのでちょうど良い場所がスペース的に少し厳しい。人間工学は奥が深い(言い訳です)。ゴムシートでスイッチをカバーしON・OFFの圧力を調整してスイッチ部はなんとか形になった。パットから流用した回路をケース裏に貼りつけ配線を半田付けしてフットマウスの完成だ。

配線
写真はケースの蓋側を見たところで、フットマウスの配線。パットの基盤は一見してボタンの種類がわかるので配線が簡単。基盤から各スイッチまで配線を延長して半田付け。
作り直したスクロール用機器
発想は良かったと信じたいが実用にならなかったため作り直しになったスクロール用機構

■キーボードの改造

 普段キーボードを打つときカットアンドペーストやショートカット、大文字の入力等で多用するCtrl、Alt、Shiftキーは(個人的意見だが)タッチタイピングが難しい。実際よく使うので2つずつあるのがその証拠。これは前々から何とかしたいポイントだった。その昔、根強い人気のあった親指シフトくらいまでいくとかえって使いやすいかもしれないが、現在の日本語入力環境においてはこの3つのキーは是非とも改善したい。そこでこれを“フットシフト”可能なようマウスとセットでキーボードを改造することにした。

キーボード内部
キーボード内部。フイルム状のスイッチに複雑なパターンが印刷されている。手前に見えるのがコントロール回路の基板。

 まずはキーボードを分解して構造を調べる。はじめは「キーボードなんて所詮スイッチの塊さ」とたかをくくっていたのだが、蓋を開けてみると非常にデリケートな構造であることがわかる。数年前の古いキーボードは本当にスイッチの塊のようなものもあるようだが、今時の安価なものはスイッチがフイルム状になっており、埃が入っただけでも接触不良を起こしかねない。これを半田付けするのは絶望的。しかもちょっと揺らすとキーテンションを発生しているゴム製のカップが“わらわら”とこぼれ落ちてくる。仕方がないので二層になったフイルム上のパターンをミリペンでなぞりながらコントロール用のICまで回路を辿って、ICに直接コントローラの配線を半田付けするという方法を取った。配線に使用したのはカテゴリー5のLANケーブル。2本づつペアになって8本が束になっているので、これが大変使いやすい。フットコントローラとキーボードはLANのRJ45コネクタをそのまま使い脱着可能な構造にした。



完成したフットスイッチ
完成したフットスイッチ
ボタンの割りつけ
ボタンの割りつけ説明


■動作確認

 今回の自作コントローラは単純な回路なうえ、大電流が流れるわけでもないので壊れる心配はまず要らない。動作確認もお気楽なのだ。
 まずは改造キーボードをPCのPS/2ポートに接続し電源投入。Windowsが起動したらメモ帳でテキスト入力。足シフトはバッチリ機能する。続いてご機嫌でCtrlキーとAltのテストに移る。…とっ、ところが反応しない。どうも配線が間違っているようだ。慌ててまたキーボードを分解して配線を確認する。フイルム状のパターンは非常に長くグルグル回り道をしているので、辿っているうちに自分の目もグルグル回ってくる。冷や汗をたらしながら配線のチェックをしているところで知人が遊びに来たのだが、その知人が一言。「テスターでチェックすれば」…そうです。初めからそうすれば良かったです。結果的にやはり配線が間違ってました。今までの苦労はいったいなんだったのだろう。

 キーボードが見事機能したので、続いてマウスのテスト。こちらはバッチリ。USBなのでホットプラグ対応でPCの動作中の抜き差しもOK。非常に快適な操作性だ。これならカップラーメンを食べながらでもインターネットできる。これは便利。
 使い込んでいくと足の操作にも慣れ、特に足シフトは手放せなくなりそうだ。実はこの原稿も足シフトを活用して書いていたりする。これぞ究極のマンマシンインターフェースだ。これを超えるには視線入力くらいのハイテク装備でなくては太刀打ちできないと、筆者のテンションも上がる一方。安くて簡単その上便利、所有する喜びも最高。一家に一台フットコントローラ。しかもパットモードにすればゲームまでできる…。まあ強いて足でゲームをする必要があればだが…。えっ要らない。そうですか……。

完成したフットマウス
完成したフットマウス
ボタンの割りつけ
ボタンの割り付け説明
完成したフットコントローラ遠景
完成したフットコントローラ

最後の最後で大きな誤算が発覚。机の下に納まりきらない。デスクを移動して意地でも使おう。



■購入したパーツリスト

購入パーツ 価格 ショップ
ASCII PAD USB mini 3860円 ラオックス ザ・コンピュータ館
アルミケースO-6※1 1140円 奥澤(ラジオデパート地下1階のケース専門店)
アルミケースO-17※2 850円 奥澤(ラジオデパート地下1階のケース専門店)
LANケーブル(C5 10m) 350円 千石電商
USB延長ケーブル(1.8m) 300円 千石電商
ボタンスイッチ(アーケードゲーム機用) 160円(1個) 千石電商
ボタンスイッチ(プッシュロック式) 100円(1個) 千石電商
ゲームスティック(アーケードゲーム機用) 1480円 千石電商
112日本語キーボード(PS/2) 680円 サトー無線PC isLand
ホールソー(30mm) 2000円 ホームセンター日興
防振用ゴム 280円(1個) ホームセンター日興
ゴムブロック 350円 ホームセンター日興
スポンジゴムブロック 150円 ホームセンター日興
スポンジゴムシート 230円 ホームセンター日興
ゴムシート 340円 ホームセンター日興
防振ゴムシート 180円 ホームセンター日興
ステンレスボルトM5 200円 ホームセンター日興
ステンレスボルトM6 200円 ホームセンター日興
M6用スプリングワッシャ 70円 ホームセンター日興
アルミステー 280円(1個) ホームセンター日興
ボタンスイッチ 160円(1個) ホームセンター日興
合計 1万6238円
※1:400×200×40(mm)
※2:300×200×40(mm)

※価格は税別、カッコ内は型番など

 そんなわけでフットコントローラ自作編、如何でしたでしょうか? 実は次回の企画はまだはっきり決まっていなかったりします。液晶マルチモニタ製作という噂もありますが、そんなもの自作できるのだろうか…。では次回、液晶マルチモニター自作編(仮)でお会い致しましょう。サヨナラ、サヨナラ。

【筆者プロフィール】森本琢司氏。本来はペルチェなどを使ったオーバークロック系、冷却系に一番関心があるのだが、趣味でPC改造も数多く手がけている。ハンドニプラーやその他工具を使っての改造は得意中の得意




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