2000年11月24日
12月1日に本放送が始まるBSデジタル放送。チューナ自体は夏ごろからすでに店頭で販売されており、沖縄サミットやシドニーオリンピックでは試験放送が行われていた。また、ここにきてテレビや新聞での告知も始まるなど、スタートに向けて放送局サイドの盛り上がりはこれまでにないほどだ。しかし一方で、「BSデジタルチューナを買った」「BSデジタルチューナ内蔵テレビを買った」という声があまり聞かれないのも事実。はたして実際のところ、BSデジタルは“熱い”のかどうか。ショップとメーカーに聞いてみた。
「モノがない」と口を揃えるショップ
“BSデジタルフェア”と題して、目立つところにBSデジタル関連商品を並べていたのはラオックス ザ・デジタル館とヤマギワ東京本店。両店ともに、BSデジタル関連商品は、シドニーオリンピックが終わってしばらくは販売がやや落ち込んだものの、11月に入ってからはコンスタントに売れているという。
チューナの売れ筋は、ラオックスが東芝(株)の「TTD2000」(10万8000円)で、ヤマギワではDXアンテナ(株)の「DIR200」(9万9800円)。DIR200はTTD2000のOEM商品のため、両店ともに東芝製チューナがナンバーワンの売れ筋商品ということになる。
両店の話を総合すると、すでにBSデジタル対応テレビを持ち、BSアナログ放送を楽しんでいて、チューナだけを買い求める消費者と、D3端子(※1)付きテレビ(10万円台後半〜20万円台前半)とチューナのセットを購入する消費者、新規にBSデジタルチューナ内蔵のテレビ(30〜40万円)を購入する消費者の割合はほぼ1/3ずつ。「BSデジタル」という言葉は知っているものの、内容や機能まで詳しく知っている客は少ないとする両店では、ともに、BSデジタルとは何なのかを、わかりやすく説明するフリップが立てかけられていた。
※1 D3端子:デジタルハイビジョン用の映像を受信できる端子。ひと世代前のテレビに付いているD1端子でもBSデジタル放送の受信は可能だが、その場合、画質はこれまでのテレビ放送と同じになる
また、両店に共通しているのはモノがないこと。ラオックスではTTD2000のほかにもマスプロ電工(株)の「BDT500」(10万4000円。東芝OEM)やシャープ(株)の「TUHD1」(9万9800円)などの在庫があったが、ヤマギワでは21日現在、DIR200以外は売り切れ。両店ともに日本ビクター(株)や松下電器産業(株)製のチューナに在庫はなく、「いまは入荷日未定」(ヤマギワ)だという。両店とも、需要に対して供給が追いついていない点を指摘していた。コンスタントに売れていて、需要もあり、にもかかわらず「買った」という声があまり聞かれないのは、買いたくても買えないからである模様。品不足が、盛り上がりに水を差してしまい、結果、あまり盛り上がっていないように見せてしまっているようである。
なお、新宿の大手量販店数店で尋ねてみたところ、こちらも深刻な品不足。あっても1機種、ほかの機種の入荷日は未定といった案配で、本放送直前の今、ゆっくり選んで好みのチューナを買うのは難しそうだ。
出したくても出せないメーカー
一方、メーカーはというと、こちらも困り顔。「LSIの供給不足」(東芝広報)、「業界全体として、半導体が、爆発的に普及している携帯電話のほうに回されてしまい、チューナ用に回ってこない」(日本ビクター広報)と、作るにも作れないといったようす。「最悪だった9月から時間が経過し、事態は良くなりつつある」(東芝)という言葉に期待したいところだ。普及すれば「アナログBS放送のときのように、廉価なチューナ内蔵テレビが登場してくる」(日本ビクター)だろうが、モノ不足でユーザーが待ちを決め込むと、せっかくの盛り上がりもしぼんでしまう。
なお、他社が夏に商品を用意していたなか、今週にようやくBSデジタルチューナ内蔵テレビと単体のチューナを用意してきたソニー(株)は「急いでも仕方がない。始まるのは12月1日」と余裕の構えを見せていた。新しいものだけに、検証に時間をかけていたという。25日発売予定だ。
結論として「盛り上がっているのか」と問われると、実に断言しづらい。品不足を好意的に捉えるかどうかで、解釈は変わってくるだろう。そもそも、最終的に盛り上がるのかどうかを決定するのは、機器ではなく、BSデジタルのコンテンツである。12月1日から始まる本放送が十分におもしろければ、半導体メーカーの認識が変わって必要な部品がメーカーに回るようになり、商品が潤沢に出まわって値段が下がり、普及するわけで、あとはコンテンツを提供するBSデジタル放送局しだいになるだろう。
【取材協力】
(小磯)
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