■超静音設計をうたうSeasonic製ATX電源ユニット「SS-300FS」(後編)
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2001年11月30日
●ここが違う(その1)
前編では「SS-300F」のファンコントロールの特徴について、温度センサーは他社の電源と違いスイッチング素子の放熱用ヒートシンクに板バネで押さえつけて取り付けられている点、そして(ケースに組み込まず単独で動作させてみると)センサー温度がそこそこの温度に上昇するまでファンは低い回転数をできる限り持続させている点などを主に解説した。本編では、もう一歩踏みこんでパソコンにSS-300Fを組み付けて動作させての調査を行った。
「静かな電源」の条件を改めて考えるとファンレスが一番静かなのは言うまでもない。あるいは低い回転数を一定に保つファンを取り付けていれば騒音レベルも一定でさほど気にならない。しかし、パソコンを駆動させると電源内部のスイッチング素子は発熱し温度はどんどん上昇する。もし排熱が追いつかない状態が続けば制御素子の破壊を招く危険性もあり、安全な温度に下げる工夫が必要だ。つまり、電源内部に温度センサーを取り付けて、センサーの感知温度が制御素子にとって安全領域であればファンの回転数を制御し騒音を抑える方向に働かせる。逆に好ましくない温度に上昇するならば、静寂性を犠牲にしてでもファンの回転スピードを増して冷却を促進する機能が有効だ。この一連のコンセプトは前編で調べた通り各社各様に実現されているもののそれぞれに特性が異なっている。こと静寂性についてはSS-300Fのファンコントロール特性を見ると、最も高い温度までファンの回転数を抑えており、この特性で上述の排熱機能が間に合うのか?といった懸念を抱くかもしれない。しかしSeasonic独自のファンコントロール回路(S2FC回路)はユニークな特徴を備えており、前編のグラフで示した「センサー対ファン回転数」の特性が定まっているのではなく、ユーザーが構築したパソコンの消費電力とその使用環境温度に応じて自在にファンの回転数をコントロールする機能が盛り込まれているのだ。
【表1】負荷として用意したパソコンのスペック
| パーツ名 |
モデル1(省力PC) |
モデル2(ハイパワーPC) |
| CPU |
Dulon600 |
Athlon1.3GHz |
| CPUクーラー |
Firebird R7 |
Hedgehog-238M |
| マザーボード |
EP-8K7A |
同様 |
| メモリー |
DDR SDRAM256MB ×1 |
同様 |
| ビデオ |
ELSA GLADIAC ULTRA(GeForce2Ultra DDR64MB) |
同様 |
| OS |
Windows2000 |
同様 |
| HDD(U-ATA) |
5400rpm40GB×1 |
7200rpm20GB×2(RAID-0) |
| RAIDコントローラ |
無し |
有り |
| CD-ROM |
52倍速×1(ATAPI) |
同様 |
| FDD |
2Mode×1 |
同様 |
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では、S2FCがどのような機能なのか具体的に解説しておこう。まず、テストに際しては表1に示したパーツ構成でタイプの異なるモデルマシンを用意した。
モデル1はどちらかというとパソコンとしての性能よりはコスト重視で入門機あるいはクライアントマシンと言った省力パソコンを想定。一方、モデル2は、モデル1を元にして主要パーツ(CPUやハードディスクドライブなど)のアップグレードを施したシステムとしている。
ここでのキーポイントは、「パソコンの消費電力に応じたファンコントロール特性の変化」を探るテストを行うということだ。まず各モデルマシンの消費電力を知っておく必要がある。そこで電力計(横河電機製デジタルパワーメータWT200)を使って測定したところ省力パソコンとしたモデル1は93W(平均有効電力)を示し、モデル2はモデル1を約50Wほど上回る145Wであった。なお、この数値にモニタの消費電力は含まれおらずパソコン本体の消費電力を示している。
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モデル1の平均有効電力(93W) |
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モデル2の平均有効電力(145W) |
センサー温度対ファン回転数グラフ(負荷の有無による変化)
| 温度(℃) |
30 |
35 |
40 |
45 |
46 |
47 |
48 |
49 |
50 |
51 |
52 |
53 |
55 |
58 |
| 無負荷状態 |
1395 |
1395 |
1395 |
1395 |
|
|
|
|
1500 |
|
|
1620 |
2000 |
2400 |
| モデル2(145W)実動状態 |
1463 |
1538 |
1538 |
1538 |
1538 |
1538 |
1579 |
1875 |
2230 |
2500 |
2727 |
2791 |
2857 |
3000 |
| モデル1(93W)実動時 |
1460 |
1500 |
1500 |
1500 |
1500 |
1500 |
1540 |
1820 |
2020 |
2290 |
2500 |
2615 |
2800 |
2980 |
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センサー温度対ファン回転数グラフ |
それでは、表2を見てほしい。両モデルにおけるSS-300F実動時のファン回転数変移データをグラフに表してみた。比較対照としてSS-300Fの無負荷状態のデータを重ねてある(一部データがプロットできていないので仮想線としている)。これらの状況から例えば変速を始めた1600回転時の温度は無負荷状態の温度と比較すると両方のモデルで明らかに5℃ほど低い48℃で既に動きがあらわれている。この温度の開きは、その後も保たれて無負荷状態では58℃の場合にようやく2400rpmとなったファンの回転数はモデル1では52℃、モデル2では51℃に到達する以前にその回転数を上回っている。言うまでもなく負荷がかかっている両モデルで温度センサーが58℃を感知したとするなら、ファンは3000回転に達しており同じセンサー温度であっても負荷の状況が異なればファンの回転数が変化する特性を持っていることになる。ちなみに50℃〜52℃付近でモデル1とモデル2のファン回転数を比較すると同じセンサー温度でありながら200rpmほどの開きがある点にも注目してほしい。この特性の変化は、ファンコントロール特性を固定している電源ユニットでは見られない特徴であり、SS-300Fが持つS2FC回路の特徴のひとつ言っていいだろう。
ただし、単にグラフをみているとセンサー温度は最高58℃にまで達しているが、実際の運用では45℃に達するまでにモデル2であっても30分ほどの時間を要している。さらに60分を経過した時点でも48℃ほどでファンが変速を始めてしまうとそれ以降は飽和し温度の上昇はほとんど見られなかった。これはテスト時の室温(20℃)に依るところが大きいがグラフは夏場の使用を想定し室温を上昇させてテストを続行した結果である。
●ここが違う(その2)
【表3】
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ファン回転数に対する騒音値特性表 |
【表4】
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SS-300Fと電源Dの静寂性を比較 |
静音をうたう電源にとってファンそのものの騒音が静かでなければファンコントロールを駆使したとしても意味をなさない。ファンのサイズとしてはほとんどの電源が80mmファンを採用しているが「同じ回転数ならどれでも同じ静かさなのだろうか?」という疑問を抱いた。そこでSS-300Fに加えて前編で登場した製品群のファン回転数に対する騒音値を比較してみると、結果としてSS-300Fは同じ回転数なら電源Cの静寂性能に一歩及ばないものの4製品のうちで平均値を若干上回る性能を示した。なお、測定に際しては、リオン製騒音計NL-06を使用しA特性FASTの設定で電源との距離を0.5mとしている。ちなみに測定環境の暗騒音は26dBで深夜の静かな室内に相当する。
ただし、ここで前編のグラフを思い出してほしい。ファンの回転数を低く制御している1500rpm〜1800rpmの領域では同じセンサー温度なら負荷がかかっているSS-300Fより電源Cのファンの回転数は高い。両者の回転数から騒音値を割り出してグラフ化してみるとSS-300Fは、電源Cの騒音値と同等と言うよりむしろ低い結果となっている。
さて、Seasonicの製品にはSS-300Fに続いて容量をアップしたSS-350FとSS-400Fが用意されているが前出の「超静音設計」を継承しているだけでなく他の電源と違う点として隠れた特徴(あまり表面化しないかも知れないが)を持っている。そもそもパソコンで一般に使用する電源は全てスイッチング方式と言っても良いだろう(ノートパソコンを除いてPC8001やFM-8に代表される8ビットパソコンの時代から、いやもっと以前からかも知れないが電源はスイッチング方式だったし、大きなトランスを使ったシリーズ方式のATX電源はあまりお目にかからない)。さらにパソコンへ供給しなければならない電圧は複数である(ATX電源なら+12V +5V +3.3V -12V -5V +5VSBが必須)ことから少なくとも2セット以上のスイッチング電源回路が一つの電源ケースに収められて独特の形態を構成している。ところでこの電源ユニットへ供給する元はと言えばACコンセントである。このACコンセントには100Vの電圧が電力会社より供給されているのはご存じの通りで疑う余地もないのだが、知らないうちにこの100Vより低い電圧環境からパソコンを動作させているユーザはいないだろうか?例えばタコ足配線よろしく細いコードのテーブルタップにトリプルタップを駆使してコンセント数を増設し全ての差込口にありとあらゆる機器のACコードを接続しているようなケース(電圧降下以前にキケンだと思うが)やオフィスのACコンセントが意外に低い電圧だったりする。電源にとってこの入力電圧は非常に重要でもしも規定電圧より下がってしまうといくら効率の良いスイッチング方式の電源であっても出力電圧に悪影響を与えてしまうのが常識だ。パソコンがどうも不安定で時にはフリーズしてしまうと悩むユーザーは案外とAC電圧が低いのかも知れない。一度ACコンセントの電圧を測定してみると良いだろう。実は、Seasonicの製品はこういう環境に強い電源なのである。他社製品との比較テストでも飛び抜けた性能を示した。オウルテックの実験ではあるが、AC30Vの入力電圧でパソコンが起動するのだから驚きである。ただし、この状態はマシンが安定動作する数値ではなく、保証外となってしまうので注意されたい。
【表5】
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電源D |
電源E |
Seasonic350W |
Seasonic400W |
| システムが停止したAC電圧 |
73.5V |
58.5V |
30V |
30V |
| 最低起動AC電圧 |
75V |
80V |
30V |
30V |
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●まとめ
ファンの回転数をコントロールする特性はセンサー温度に対して固定されておらず、パソコンが消費する電力量に応じても変化する。つまりハイパワーマシンであっても最小構成スタイルの省力パソコンでもSS-300Fがその消費電力に応じて適切なファン回転数を自動的に最適化し「静音」と「冷却性能」をバランスよく両立してくれるわけだ。
電源ユニットの存在感はある意味で地味ではあるがパソコンには必要不可欠で単に動力を供給するだけでなく温度管理にも重要な役目を担っている。迷った時には、しっかりした製品を選びたいものだ。Seasonicの「SS-300FS」「SS-350F」「SS-400F」は、オウルテックが国内の販売元となっており全国のPC販売店で購入可能だ。電源ユニットの購入時にはぜひともチェックしてみよう(350Wモデル・400Wモデルは12月上旬の発売を予定)。なお、350W、400WモデルはアクティブPFC(PowerFactorCorrection=力率改善回路)を搭載している。
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